第37話 乙女ゲームの始まり
一気に時間が進みます‼︎脇CP達の話は後ほど載せますが、取り敢えず本編‼︎
やっと、物語の本番が始まります‼︎
よろしくどうぞ‼︎
あれから至って普通な日々を過ごして、早二年。
今日、私達の学園にヒロインが来る。
「あー……行きたくないわ……」
「あはは、本当に嫌そうだねぇ」
目が覚めたけど、私は未だにベッドの中から出たくなくて。
ルインに甘えて、抱きついていた。
………だって、仕方ないでしょう?
あのヒロインが来るのよ?
R指定が入るシーンを見なくちゃいけないかもしれないのよ?
憂鬱だわ……。
「ほら、もうそろそろ準備しないと」
「むぅ……」
「起きよう?愛しい人」
ルインは駄々をこねる私にキスをして、優しく起き上がらせる。
私はむすっとしながら、のろのろとベッドから這い出た。
今日から高等科二年生になる。
つまり、ヒロイン……異母妹が療養を終えて、同じ学園に通うのよ。
昨日、王都に来たみたいだけど、私は会っていないわ。
まぁ、結婚して二年も経つし……ルインのお屋敷で暮らしてるから当たり前よね。
ゲームの私はジキタリス家にいたし……現実と比較すると、環境はだいぶ変わっているわ。
アイラはどう行動するかしら?
転生者であってもなくても、彼女の行動には注視しておかないとね。
着替え終えた私は、同じく着替え終えたルインに両手を向ける。
そして、甘えるように告げた。
「ルイン、抱っこ」
「うん?今日は甘えん坊なのかな?」
「先にルインを充電しておくの」
「いいよ、おいで」
ルインは私をお姫様抱っこして、寝室を後にする。
この屋敷には、リチャード様に紹介して頂いた使用人達が働いている。
と言っても、家令と執事、コック、侍女三名だけだけどね。
人が多くても困るだけだもの。
それに、やろうと思えば精霊達にしてもらえるしね。
あ、余談なんだけど……前に精霊力の消費の違いを精霊王に聞いたら、人間の営み(生活)の代わりをする時は精霊力の消費を多くしているらしい。
そうじゃないと、自分達の代わりを全て精霊にさせてしまって、人間が堕落してしまうかもしれないから……まぁ、精霊力が多い&ルインの伴侶である私にはサービスしてくれているらしいけどね。
「おはようございます、旦那様。奥様」
「おはよう、セバティン」
「おはよう」
食堂に入ると、家令のセバティンが挨拶してきた。
初老の紳士だけど、とっても有能な人なの。
名前がちょっと惜しい感じがするけど。
「相変わらずイチャついてますね〜」
「まぁね」
二十代前半の若い青年は、執事のギーク。
三つ子の侍女ミリー、アリー、セリー、コックのハンスがクスクス笑いながら席につく。
「ラブラブなのはいいこと」
「早く御子が生まれて欲しいです」
「お世話した〜い‼︎」
「独身にゃぁ、ちぃっと見てて厳しいですけどね」
この屋敷では食事は皆、同じ席について同じ物を食べることになっている。
普通はあり得ないそうだけど、ルインが差別する気はないって言ったからこうなったのよね。
私としても家族とご飯食べるのは楽しいから、受け入れてしまえるし。
「じゃあ、頂きます」
『頂きます』
皆で今日の予定を話しながら、朝食を取る。
私は一応、この屋敷の女主人だからね。
この時間に何か足りないモノとか必要なモノを聞くようにしているわ。
「何か足りないモノとかある?」
「特にないですね。逆にこんなにも働きやすい職場はないですよ」
「そうかしら?」
「はい」
セバティンは苦笑しながら頷く。
公爵家でも働いたことがある彼は、どうやらエクリュ侯爵家の仕事のしやすさに驚いているみたい。
と言っても、特にこれといってしている訳じゃないのだけどね?
仕事も適度に手抜きをしてもいいと言ったのと、昼休憩の一時間以外に午前と午後にお茶休憩を入れてねと言っただけだし。
「普通じゃない?」
「普通じゃない」
「普通は手抜きしていいなんて言わないんですよ」
「そーです‼︎それにお給料もいいし、お昼以外のお茶休憩が二回もあるのも好待遇です‼︎」
侍女達が楽しそうに言う。
それにギークも頷いた。
「そーですよねぇ〜……オレの口調だって執事としちゃアウトなのに、気にしてませんし」
「それを言ったらおれもだかんなぁ」
「まぁ、俺も侯爵らしからぬ口調らしいからね。気にする必要はないかなぁって……」
ハンスも苦笑しながら同意する。
そんな使用人達を見て、セバティンは微笑んだ。
「本心から、とっても仕事がしやすいと思っておりますので。お気になさらずに」
「「………そう?」」
私とルインはちょっと気の抜けた声で返事をしてしまったわ。
こうして朝食を終えた私達は、それぞれ学園と軍部に向かうため、ギークが御者を務める馬車に乗り込む。
あぁ、そういえば。
ゲームとかなり違うって話したけど、その違いを整理しておこうかしら?
一、ルインが精霊王の息子だと公表されているし、爵位持ちの中佐、ドラゴンスレイヤーと呼ばれている。
二、私がルインと結婚している。
三、ネッサ様とトイズ様が婚約関係(ネッサ様の卒業と共に結婚予定)になっている。
四、トイズ様はルインの補佐官、アダム様は軍部に異動になり、ルインの直属の部下になっている。
五、イヴリン様がアダム様の子供を妊娠、出産なさったため、学園を辞められた。
六、留学から帰ってきた王女様が……その……うん。
………トイズ様、なんか凄く色々と頑張られたみたいで。
主に外堀を埋めるのとか、ロータル侯爵への自分を婿にすることに関するプレゼンとか。
色々と実を結んで、無事にネッサ様と婚約者になったわ。
一応、トイズ様が婿入りする予定らしい。
で……驚いたのはイヴリン様。
なんか、色々とアダム様の忠犬っぷりに絆されてしまったらしく……言うなれば、できちゃった結婚ってヤツよ。
普通、未婚で妊娠なんて……イヴリン様のご両親が怒りそうなものなんだけど……。
イヴリン様のご両親もできちゃった結婚だったらしく、普通に受け入れられたらしいわ。
ちなみに、半年前に可愛らしい双子の兄妹を産んでいて。
とっても、ぷにぷにしてて可愛かったわ……。
最後はあの……私達に突っかかっていたクリスタ王女様。
あの人、一ヶ月前ほどに留学から帰って来たんだけど……早々に挨拶に来て、驚いたわ。
関わるなって言ったのに、どういうつもりなのかしら……?と思ったら、謝罪のために来たんですもの。
私もルインも驚いちゃったわ。
『わたくしが暴走したことでお二人に多大なご迷惑をおかけしたことを、深くお詫び致しますわ。謝って許されるとは思いませんが、せめて一言。ご挨拶にとお伺い致しましたの』
…………一体、何が起きたの?って思ったわよね。
どうやら、留学に行ったのは隣国のギィトン帝国のようで。
シュラ皇子に徹底的に再教育されたんだとか。
『ご主じ……ごほんっ‼︎シュラ様はわたくしの価値観を壊して、正しいモノにして下さいましたの』
今、完全にご主人様って言いかけてたわよね?
『これからはシュラ様のご教育の元、王族として相応しい振る舞いをしていきますわ』
…………後日、イヴリン様にシュラ皇子のことを聞いてみたら……フェロモン系のドSキャラっていう……新事実が明らかになったわ。
クリスタ王女、絶対、調教されてるわよね?
教育じゃなくて、調教よね?
…………なんか、関わるのが怖くてそれ以上考えるのを止めた私は悪くないと思うわ。
まぁ、詳しい話は後にしましょう。
とにかく……色々と変わった環境の中、ヒロインがどう動くかが重要。
「シエラ?大丈夫?」
「………大丈夫だと思いたいわ」
ルインの膝の上に座って、私達は馬車に揺られる。
本当は凄く行きたくない。
どうでもいい男女の濡れ場なんて見たくない。
ルインとずぅっとイチャイチャしていたい。
でも、侯爵夫人としては学歴があった方がいいから、我慢しないと。
「帰ったら、頑張ったねって。いっぱい褒めて欲しいわ」
「うん。君が望むならいくらでも褒めるよ。だから、頑張って」
それから、学園に着くまでルインはずっとキスをしてくれた。
うん、これで頑張れる気がしてきたわ。
ガタンッと馬車が止まると、外から『学園に着きました』と声がかかる。
学園には先に着くため、ここでルインとお別れ。
私は彼の頬にキスをして、微笑んだ。
「行ってきます」
「うん、行ってらっしゃい」
ギークにも軽く挨拶をして、私は校舎に向かう。
……………乙女ゲームの始まりね。




