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第35話 この二人の結婚式だから、混沌としないはずがない。


今後もよろしくどうぞ‼︎







静まり返る聖堂内。

…………まぁ、そうよね。



いきなり新郎が、新郎に似た招待客(招待してないけど)を殴ったら驚くわよね。

精霊王はゴロゴロと地面を転がった後、ガバッと起き上がった。


『酷いぞ、ルイン‼︎お父さん、そんな子に育てた覚えはないぞ‼︎』

「育ててねぇだろーが。というか、なんでお前がここにいる。仕事はどうした。おいっ、大精霊っ‼︎とっとと回収しろっ‼︎」

『ははははっ‼︎甘いな‼︎わたしがここにいると言うことは、大精霊達はわたしの仕事の代役でアップアップしてるから、回収には来ないぞ‼︎』

「よし。なら今すぐに潰す。殴って気絶させて、俺が送り返してやる」


バキバキと関節を鳴らすルイン。

あー……かなり苛立ってるわね。

それもそうよね。

いきなり来られたら困るわ。


「ルイン……殴るよりも精神攻撃はできないの?流石に聖堂ここが血塗れになるのはアウトだわ」

『息子の嫁も酷いっ⁉︎』

「黙れよ」

「黙って」


私とルインは精霊王の元へ行き、にっこりと微笑む。


「ねぇ、なんで来たの?私達の折角の結婚式を邪魔しに来たの?怒るわよ?」

『もう怒ってるよな⁉︎』

「人間の世界に過干渉禁止じゃなかったのかよ。なんでいんだよ」

『いや、あの、ちゃんと理由があるからな?だから、ルイン?殴ろうとしてるその右拳を納めてくれないか?お父さん、泣くぞ?』

「いい歳こいたジジィが何言ってやがる」


ルインが再び殴ろうとするが、それをトイズ様が羽交い締めにして止める。

どうやら、結婚式に流血沙汰はマズイと思ったらしい。


「どうしたんですか、エクリュ中佐‼︎いきなりその人を殴ってっ……というか、その人、お父さんなんですかっ⁉︎」


トイズ様は、精霊王を見て驚く。

あぁ……そういえば、ルインの両親はいないことになってたのよね。

というか、説明が面倒だからいないことにしてただけだけど。


「止めるな、トイズ‼︎このクソ親父だけは、何故だか、殴らなきゃいけない気がするんだ‼︎」

「どういう理屈ですかっ⁉︎」


取り敢えず……暴れるルインを私が抑えて、精霊王に向き直る。

ただし、極寒零度の視線だけどね。


「で?何の用かしら?」

『その……ほら……息子の結婚式だからな?父親としては参加しないとって……』

「親父らしいこと一切してねぇだろ。っていうか、不干渉を守れよ」


ルインの冷たい声に、精霊王はイジイジと拗ね始める。

そんな中……勇気あるアダム様が聞いてきた。


「エクリュ中佐。その人、人間でもエルフでもなさそうなんだが、誰なんだ?」

『…………え?』

「匂いが違うぞ?」


ピシリッ、とその場にいた人々が固まる。

まぁ、ルインの親らしき人物が人間でもエルフでもないってなったら怖いわよね。

ルインは面倒そうに精霊王に視線を向けた。


「おい、話していいのか?」

『ん?構わないぞ。前に止めたのは、ルインがまだそれなりの権力を持ってなかったから、わたしの正体がバレたら面倒ごとになると思ってだからな。今はそれなりに権力があるし、ルインに関わるのは危険だとかなり広まっているから、大丈夫だろう』

「…………はぁ……」


ルインはとても、とーっても面倒そうに溜息を吐く。

そして、親指で彼を指差した。




「俺の実の親父。精霊王だ」




『…………………』


静まること数秒。

その後、大きな絶叫が響いた。



『えぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ⁉︎』



思わず耳を塞いでしまったけど、私は悪くないはず。

だって、それぐらい大きな声だったんだもの。


「ちょっと待って‼︎どういうこと⁉︎」


リチャード様が慌てて聞いてくる。

ルインは、自分がエルフと精霊(王)の子供ハーフだと言うことを大まかに説明した。


「精霊は、精霊力っていう報酬がないと人の世界に干渉しちゃいけないんだってさ。だから、俺も実の親がこいつだって五年くらい前までは知らなかったんだ」

「いや、干渉しちゃ駄目ならなんでエクリュ中佐が……」

「俺が産まれたから過干渉禁止のルールができたんだと」


トイズ様の質問にルインは溜息を吐きながら答える。

人々は未だに驚いているみたいだった。


「シエラ様はご存知でしたの?」

「えぇ。あ、でも。精霊王の息子だからって結婚する訳じゃないわ」

「それは分かっているわ。シエラ様とエクリュ侯爵は甘々ですもの」


ネッサ様は頬を赤くしながら、言う。

取り敢えず、この混沌とした会場をなんとかしなくちゃね。


「取り敢えず、もう結婚式は終わりだから帰りなさいよ」

『いやいやいや、まだルインとシエラ嬢に伝えることがあるんだ』

「おい。まだ何かあるのか」


嫌そうな顔をするルイン。

ちょっと私も嫌な予感がするわ。


『まず、ルインに妹か弟ができます』

「……………………」


ルインの顔が凄まじく険しくなる。

まさか……土の大精霊の言葉が真実になるなんて。

まぁ、それはうん……おめでたいことだとは思うけど。

なんでかしら……まだ嫌な予感が……。




『加えて、ルインとシエラ嬢には後で闇と光の大精霊になってもらうからよろしく頼むぞ』




「「…………………は?」」


私達はその言葉に目を見開いて固まる。

今、なんて?


『大丈夫だ。ちゃんと数百年くらい生きた後にやってもらうから』

「いや……その前に‼︎人間が精霊とか、何を言ってるの⁉︎」

『問題ないぞ。精霊が人間になるのは無理だが、人間が精霊になることはできる。それにルインも半分は精霊だし、シエラ嬢もこっち側に傾き始めてるからな。何も問題ない』

「「……………は?」」


今、なんて言ったの?

私が、精霊側に傾き始めてる?


「おい、精霊王‼︎どういうことだっ‼︎」

『どうもこうも……ルイン。お前は精霊王わたしの息子なんだ。そして、世界さえも滅ぼせる力を有している。そんな力を持つ者が寵愛している存在が……人間でいれるかわらないはずないだろう?』

「………っ…‼︎つまり、俺の所為ってことなのか……?」


ルインは愕然としながら私を見る。

私が、人間じゃなくなっていることに驚いているのかしら?

でも、ごめんね?ルイン。



………当の本人である私はあんまり気になってないのよねぇ……。



言ってしまえば、人間であろうと精霊であろうとルインの隣にいられればどうでもいいことだし。

気にすることでもないもの。

貴方は、自身が私を精霊に近しい存在にしていることを後悔しているかもしれないけれど……私としては、ルインと同じに近づけたってことだから、嬉しいぐらいなんだけどね。



「ルイン。ルインは私が精霊寄りになるのが嫌なの?精霊に近しくなれば、ルインと長い時間を一緒にいられるかもしれないのに?」



私は彼の手を取って上目遣いで見つめる。

ルインは目を大きく見開いて、首を振る。


「………違う……違うんだよ、シエラ」


彼の目を見て、私も大きく目を見開いてしまう。

……………あぁ、もう。

その目を見て分かっちゃったわ。

ルインが後悔してるなんて、私の思い込みだったのね……。


「…………違うよ……その逆・・・

「………嬉しかった・・・・・?」

「うん、嬉しい・・・んだよ」


ルインは恍惚とした、仄暗い瞳で私を見つめる。

こんな彼を見るのも、久しぶりね。



「だって、だって……こんな嬉しいことがあるなんて思いもしなかったんだ。俺が、シエラの身も心も占領してるって分かってるよ?でも、君の人間としての存在ありかたまで犯せるなんて……シエラのこと、全部全部俺のモノにできたみたいで嬉しくなる」



ルインは後悔なんてしていない。

自分が、私の人間性さえも奪えたことに喜んでる。

それほどに、私を独占したがってる。

………普通の人ならその独占欲は異常だと思うんでしょうけど、私はなんだか胸が熱くなってしまって。

甘えるように、彼に抱きついた。


「うふふっ、私はルインのモノなのに?」

「分かってるよ?でも、たまにはシエラを部屋に閉じ込めて、動けないように縛りあげて、俺がお世話してあげて、俺だけのことを見て、俺だけのことを考えて、俺だけを愛して、永遠に二人っきりになって、俺がいなくちゃいけなくなるぐらいに依存させてしまいたくなるぐらいに、シエラの周りには人がいるから……だから、シエラを他の人間から奪えるのが……俺に近しい存在にしてしまえるのが。嬉しくなっちゃうのも仕方ないと思わない?」


ルインはとても仄暗い光を宿す、熱っぽい瞳で私を見つめて……頬をするりと撫でる。


「シエラ……シエラ、シエラシエラシエラ……」


蕩けるような甘い声。

でも、その声はどこか不気味な雰囲気が絡まっていて。

…………あぁ……久しぶりのヤンデレモード。

背筋がゾクッとしてしまう。

………ヤンデレで感じるのが恐怖じゃないんだから……私も相当、おかしいわよね。

こんな仄暗くて、独占欲に満ちた言葉を紡がれたら……恍惚としてしまうわ。


「じゃあ……蜜月はルインがしたいことをしましょうね?」

「……………シエラ……?」

「ルインはいつも私への愛情でソレを抑えてくれてるけど、ヤンデレルインも私は大好きなの。だから……」


彼の耳元で囁く。

蕩けるような、背徳的な提案を。



「いつも我慢してくれているルインにご褒美をあげなくちゃ。貴方が、私にしたいこと……しましょう?閉じ込めて、私がルインでいっぱいになるぐらい……ぐちゃぐちゃに甘やかして?」



『はい、ストーップ‼︎R指定が入りそうな空気になるなー‼︎一応、神聖な結婚式だぞー‼︎』

「「………………」」


……………色々とスイッチが入り始めていた私達は、精霊王の言葉で我に返る。

そうだわ、まだ結婚式だった。


『ヤンデレ夫婦が早々に露見したのは逆に良かったかもしれないが、何も知らないこの場の者達はかなり驚いてるからな‼︎わたしもルーナに会いたくなるから、ルインはヤンデレモードに入るな‼︎』

「…………いや、会いに行ってんだろ」

『ルーナのヤンデレが恋しい‼︎』

「話、聞いてないし」


周りを見ると、状況についていけてないのか……頭を抱える人が多数いたわ。

特にゲームの知識持ちイヴリン様が、凄い顔してるわね。



「ヤンデレ……?あれ……ルインルートにヤンデレなんてありましたっけぇ……?」



ヤンデレこれルーナ様ははおや譲りらしいから、ゲームでは出てきてないと思うわ。



「取り敢えず……ちゃんと説明する前に、休憩しましょうか?状況がかなり混沌としているから」




若干、お前が言うのか?的な顔をされたけど、皆、私の提案に頷いてくれた。






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