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第33話 《精霊と乙女と愛のワルツ》と現実(2)


次は結婚式‼︎

よろしくどうぞ







ゲームの大体のシナリオを知った私達は、今の現実とゲームを比較してみることにした。



「まず、殿下とひよこは余り気にしなくていいわね」

「………ひよこ?」

「ジェなんちゃらよ」


二人は私とルインと関わると痛い目に遭うって身をもって理解しているでしょうし……興味ないからどうでもいいわ。


「ギルバート様は退場済みだし、他も取り敢えず関わり合いがないから放置かしら」

「問題はその夜想曲ノクターンの方じゃない?」


ルインの言葉に私は頷く。

現在の私達に関わりが多いのは、そっちのひとばかりだもの。


「次に、トイズ様はネッサ様といい雰囲気になっているわね」

「えっ⁉︎そうなんですぅ⁉︎」

「あら?〝ハイエナがロータル侯爵令嬢を気に入っている〟って噂になっているじゃない」

「…………冗談かと思ってたんですぅ……」


あの様子だとトイズ様が異母妹に靡く可能性はかなり低いと思うのだけど……未来は分からないものね。

警戒は大事だわ。


「アダム様はもう獣人としての力を隠してないし、軍部に異動しているから……かなり前提も変わってきているわ」

「…………そうですねぇ……なんか、わたしにもすっごくベタベタしてきますしぃ……ゲームじゃ、こんなにベタベタしてなかったはずなんですけどぉ……」


イヴリン様は頬を赤らめて目を逸らす。

…………もしかして……私がルインに会うために軍部に来てる時の真似をしてるんじゃないわよね……?

あの、お膝の上に座ってイチャイチャしてるのを……。

ちょっと自分達がするのはいいけど、他人に真似をされるのは恥ずかしいから深く考えないようにしましょう。


「総帥と女男は放置でいいわ。あの二人も私達に関わろうとしないだろうし。異母妹に関わったら、私に関わることと同じだもの。で、ルインは……」

「シエラに会ったから、ゲームの設定通りにならなかったんだと思うよ。多分、あのままだったら……俺は精霊術を使えないままだっただろうし」


ルインは私の手を撫でながら、言う。

確かに……エルフ達に攻撃されていたし、貞操も狙われていたわね。

でも、それは精霊術を使えるようになったことで、全てひっくり返った。

そして、早々に精霊王の息子だと判明したから……国王はルインに不干渉を告げた。

多分……それが理由で、王女と接触する機会もズレて、私と婚約した後になったのね。

あぁ、そういえば。

ルインが《穢れの王》になったのも、ドラゴンの生贄にされたのが原因だったわ。

でも、ドラゴンも既に討伐済みだから……ゲーム通りにはならない。

ここまでの行動が全て、シナリオ回避に繋がってたなんて思うと……ルインと出会えてよかったと思うわ。

………さて、残る問題は……。



「……問題は精霊王だよな……」



ルインの呟きに私は考える。

長い永い刻を生きる孤独の中、ヒロインに癒されていく……的なシナリオだって言ってたわよね?

でも、ちょっと待って?


「精霊王ルートは、彼が孤独だったから……ヒロインに惹かれたんでしょう?」

「そうですぅ」

「その前提、最初っから成り立ってないわよね?」

「あ。」


ルインはそれを聞いてハッと悟る。

そうよ。

だって、ずっと孤独だったのなら……ルインが産まれるはずないじゃない。


『そうじゃのう……今も精霊王は、我々に隠れてルーナ殿と逢瀬を楽しんでおったりするからのぅ。孤独ではないと思うぞ』

「…………え?そうなの?」

『あぁ。バレてないつもりじゃろうが、色気たっぷりで帰ってくるからの。もしかしたら、妹か弟が産まれるやもしれんぞ、ルイン』

「うわぁぁぁぁ……親のそんな生々しい性事情なんて聞きたくなかったぁぁぁぁあっ‼︎」


ルインが私を、むぎゅっと抱き締めて呻く。

………まぁ、そうよね。

流石に私もそういうの聞きたくないわ。


「人間の世界に干渉しちゃいけないんじゃないの?」

『…………ルーナ殿に会わぬ期間が長いとな。あやつは仕事をせんのじゃよ。というか、儂らが仕事をフォローすると言っても限度があるからの……世界とルーナ殿への干渉不可を天秤にかけたら、前者を選ぶしかないのじゃ』


土の大精霊はどこか遠い目をしながら呟く。

………あぁ…うん……お疲れ様ね。


「………えっと…?」


話が読めていないらしいイヴリン様は首を傾げる。

同じ転生者だし、教えておいた方がいいわよね。


「ルインはハーフエルフだって知ってるでしょう?」

「そういうキャラ説明が取り扱い説明書に載ってたから知ってますぅ」

「その半分って、精霊だっていうのは?」

「……………え?」


イヴリン様はそれを聞いて固まる。

どうやら、ゲームの設定にはそんなこと、書いてなかったみたいね。



「俺の親父は、精霊王なんだよ」



「…………………」


イヴリン様は、真顔で固まる。

そして……。


「……え?じゃあ、下手したら親子丼になっちゃいます?」

「「『…………』」」


ちょっと待って。

どうして、いきなりそんな単語が出てきたの。


「イヴリン様……親子丼って……」

「えっと……だって、夜想曲ノクターンは逆ハーレムエンドがあるんですよ?そう思っちゃったって仕方ないじゃないですかぁ‼︎」

「そういう大事なことは先に言ってくれるかしら⁉︎」


私は思わず頭を抱えてしまう。

そんな面倒なシナリオ、追加しないで欲しかったわ‼︎


「とにかく……トイズ様はネッサ様。アダム様には貴女。精霊王にはルーナ様。ルインには私がいるから、逆ハーレムルートにはならないと思うけど……なんか言いようのない不安が残るわね……」


なんなのかしら……この感じ………。

なんか、とっても面倒なことが起こりそうな予感が……。


「………取り敢えず……シナリオの前提はかなり変わってきているから、ゲーム通りには進まないはずよ。でも、あの子がどんな行動を取るかは分からないから注意するって感じでいいかしら?」


一応、現時点でルインと結婚することになっているから当て馬シナリオは回避できてると言っても過言ではないと思うの。

でも、さっきも言ったけど未来はどうなるか分からない。

だから、ゲーム通りにならないよう……頑張らないと。


『ふむ。こちらとしては、ドンドン動いてくれてもよいぞ。取り敢えず、世界さえ滅ぼさないでくれれば何しても構わんよ』

「………それは……ルイン次第じゃない?」

『いや、ストッパーのシエラ嬢次第じゃなぁ。頑張っておくれ』


土の大精霊は『ではの』と声をかけて光と共に消え去る。

それを見ながら、ルインはちょっと拗ねた顔をした。


「そう簡単に世界を滅ぼしたりしないのに」

「………そうねぇ…」


私が関わることになると、ちょっと暴走しかけるだけだものね。


「取り敢えず、これで話は終わり?」


ルインは私の顔を覗き込みながら、フニャッと微笑む。

私はドキッとしながら、頷いた。


「………そうだけど……どうしたの?」

「俺、折角の休みなんだよ?シエラと二人っきりでイチャイチャしたいと思っちゃ駄目?」

「……………もぅ、ルインったら。もしかして、それも含めて拗ねてたの?」

「…………ぅ……」


ルインは頬を赤くして私の肩に顔を埋める。

うふふっ……ルインがこうやって離れなかったり、悪戯してきたのは……イヴリン様が抱きつこうとしたってだけじゃなくて。

ルインのお休みの日に、イヴリン様ほかのひとと話してたのが原因だったのね。

もう、可愛い人なんだから。


「じゃあ、今日はルインのしたいことをしましょう?」

「………ふふっ……言ったね?」


私とルインは互いに熱を帯びた瞳で見つめ合う。

二人の唇がゆっくりと近づいて……。



「わっ……わたしっ、お暇しますぅっ‼︎」



その声で私達の動きが止まる。

………あぁ……イヴリン様のこと、忘れてたわ。

彼女は顔を真っ赤にして泣きそうになりながら、部屋を出て行こうとしていて。

ルインは小さく舌打ちをして、更に機嫌が悪くなってしまった。


「…………玄関まで送ってくるわね」

「…………俺も行く……」


ルインが拗ねたけど、まぁゲームの情報が手に入ったから良しとしましょう。






イヴリン様が帰った後、ルインは一日中離れてくれなかったわ。









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