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第23話 結婚式の準備〜ウェディングドレス〜


無事に「悪役令嬢、五度目の人生を邪竜と生きる。–破滅の邪竜は花嫁を甘やかしたい–」が終わりましたので、暫くはこの作品を集中して更新していきます‼︎

ついでに短編も同時刻に投稿します‼︎

よろしくどうぞ‼︎






一言言いましょう。


リチャード様、凄い。




「では、現時点の参加者リストはこれで。招待状はシエラ嬢にお願いしますね。エクリュ侯爵には教会の予約をお願いします」


ルインの新しいお屋敷。

本当は執事とかメイドとか雇った方がいい(というか、雇ってくれませんか?って連日人が来るみたい)のだろうけど、彼はこの大きな屋敷で一人暮らしをしている。

そんな屋敷の応接室で、私とルインは目の前にいるリチャード様から結婚式の準備の指示を受けていた。

余りにもテキパキと指示を出してくれるから、どうしてそんなに結婚式の準備に慣れているの?って感じなんだけど……。


「リチャードさんはどうしてそんなに結婚式の準備に慣れてるんですか?」


と思ったらルインがサラッとブチ込んで聞いたわ⁉︎

リチャード様もそう言われて「うぐっ」と挙動不審になる。


「その、ですね?」


徐々に赤くなる顔。

もしかして……。


「……その…ラティと結婚式を挙げる時の……予行練習をしてたというか……」

「「………………」」

「あぁぁぁっ、そのなんとも言えない生温い目は止めて下さい‼︎ラティがジキタリス伯爵の妻の時からしてましたけど、別にその時から彼女を略奪しようとしてたとかじゃなくてっ……ちょっと妄想で自分を慰めてたというかっ……分かってます‼︎そんな行動気持ち悪いし、女々しいということぐらいっっ……」

「えっと……俺達、そこまで言ってないよ?」


顔を真っ赤にして乙女のように身体をクネらせるリチャード様。

初めて、目の前にいる人が残念な人だって知ったわ。


「………ごほんっ…失礼しました。取り敢えず……エクリュ侯爵。二週間後に僕の知り合いの貴族の交流会のようなモノがあります。エクリュ侯爵のお話をしたら是非参加してくれとのことでした。これは招待状です」

「あ、はい」


ルインはリチャード様から招待状を受け取る。

主催者はレーフ侯爵家。

ルインと同格の貴族だ。


「エクリュ侯爵は軍部所属の貴族なので、服は軍服でいいかと。後、レーフ侯爵家の奥方のご要望で、まだデビュタントを迎えていない子が参加できるように日中のガーデンパーティーになっています。なので、式典用だと場違いになりますからご注意を」

「分かりました」

「シエラ嬢も余り派手ではないアフタヌーンドレスがいいかな」

「えぇ、分かったわ」


ルインは招待状に参加を記して、精霊達に手紙を運ばせる。

それを見たリチャード様は、クスクスと笑った。


「やっぱり……精霊に手紙を運ばせるのはお二人ぐらいですね」

「そうかな?便利だから誰でもすると思うけど」

「どちらかといえば、精霊術は戦闘で使ったり……火や水を出すのに使ったりするものだと思ってたので」

「多分、精霊術をそこまで繊細に扱えないからね。皆、私達ほど精霊にどうして欲しいかを詳細に伝えられないし、それに伴う精霊力が少ないから」

「あぁ、成る程。それなら納得かなぁ……皆、難しく伝え過ぎなんだよねぇ」


精霊術を行使するために使う呪文。

はっきり言って、あんな長文を使う必要は余りない。

それこそ会話をするように言ったって伝わるんだもの。

でも、そうね……。

持っていかれる精霊力の量ってどういう基準になってるか分からないわ。

小さなことを頼んだだけでもかなり持っていかれたりするのよね……。


「今度、聞いてみよっか?」

「えぇ」


そういうのはあの精霊王ざんねんに聞くのが一番ね。


「あ、忘れるところだった。これ、シエラ嬢のウェディングドレスのデザイン画です」


リチャード様が思い出したように手元の鞄から一枚の紙を取り出す。

そこに描いてあるデザインは、マーメイドドレスだった。


「まぁ……素敵ね‼︎」


あの取引をした日、私は事前にどういうドレスが着たいか彼にリクエストしてしていたの。

そのアイデアを元にデザイナーさんがデザイン画を起こしてくれたみたい。

どうやらこの世界ってプリンセスラインのウェディングドレスしかないみたいだったのよね。

私、前世まえからマーメイドドレスにマリアベールを合わせる組み合わせがしてみたかったの。

だからこの際、叶えてしまおうかと思って。


「へぇ……シエラはとっても綺麗だから、可愛い系よりもこういうヤツの方が似合いそうだね」

「うふふっ、ありがとう。ルイン」

「デザイナーもとても興奮していましたよ。このデザインは画期的だってね」


………前世では普通にあったんだけどね。


「そうだ。今度、カラミティ工房のデザイナーがシエラ嬢に会いたいと言っていましたよ。採寸もありますし、ご都合がいい日に会ってやってくれませんか?」


リチャード様がサラッと言った言葉に私は固まる。

そして、思わず叫んでしまった。


「そんないいところにドレスを頼んでいたのっ⁉︎」

「……えっと…カラミティ工房って?」


ルインが首を傾げて聞いてくるけれど、私は驚きの余り何も言えなくて……代わりにリチャード様が答えてくれた。


「カラミティ工房っていうのは、王族の衣装を手掛けたりしている大手ですよ。オーダーメイドしか作りませんけど、一つ一つ丁寧に作り上げるその洗練されたドレスは超人気商品なんです。数年先まで予約で埋まっていると言われる程ですね」

「え?それって……服に詳しくない俺でも分かるくらい、凄いってことだよね?」

「あ、言い忘れてましたけど、実は今回の結婚式は王族がバックについています」

「「はぁっ⁉︎」」


今度はルインも一緒に叫んでいた。

いや、だって……一介の貴族の結婚式、王族が出てくるなんて異例だもの。


「取引成立した日からマクフォーレ商会がエクリュ侯爵の結婚式をお手伝いすると情報を流したら、お二人に迷惑をかけたからとできることはないかと国王陛下からお声がけ頂きまして。なのでカラミティ工房に紹介状を書いて頂き、事前にシエラ嬢から聞いていたアイデアをお話ししたところ、即了承ってヤツですね」

「あぁ……そういうことね」

「ちなみに、衣装代は陛下が負担して下さいます」

「「………………」」


てっきりあの公式ことばの謝罪だと思っていたけど、結婚式の準備の手伝いが正式な謝罪だったってことね。

………驚くから一言ぐらい言っておいて欲しかったわ……。


「取り敢えず、都合がいい日を見つけてお会いしに行くわ」

「えぇ、よろしくお願いします」



その後ー。

カラミティ工房にお伺いの手紙を出したら、速攻で了承の返事が返ってきたわ。





*****





「お会いしとうございましたわ‼︎シエラ嬢‼︎」



濃紫色のウェーブヘアーのナイスバディセクシー眼鏡美女が、カラミティ工房の応接室に入るなり勢いよく私に抱きついてきた。

深いスリットが入った真紅のドレスなんて派手な服なのに無駄に似合ってるわ……。


「あの、俺のシエラに抱きつかないでくれる?」

「あら」


一瞬の間に転移させられて、ルインの腕の中に囚われる。

驚いて後ろを見れば、むすっと拗ねた顔をした愛しい人がいた。


「女性に嫉妬したの?」

「女だからってシエラを抱き締めるのはアウトだよ。シエラは俺にだけ抱かれてればいいの」

「うふふっ……じゃあ、他の人に抱かれないようにして?」

「うん」


甘えるように彼に寄りかかれば、ルインは更に強く抱き締めてくれる。

爽やかなミントのような香りに、頬が緩んだ。


「おぉう……噂に違わぬイチャイチャっぷりですわね‼︎ご安心を、エクリュ侯爵‼︎わたくしには愛しのダーリンがいますから、シエラ嬢を奪ったりはしませんことよ‼︎」

「それでも嫌だ」

「あらあら〜♡失礼致しましたわ‼︎」


………というか、噂って何かしら。

凄く気になるのだけど……。


「ミラ。君が話してると話が進まないから座れ」

「は〜い、ダーリン‼︎」


彼女の後ろから声がかけられ、彼女は応接室のソファに座る。

そんな彼女の隣には、濃紺色の眼鏡をかけたインテリ風の男性がいた。


「失礼致しました。エクリュ侯爵、ジキタリス嬢。どうぞお席へ」


インテリ男性が向かいのソファを手で示す。

私達はそれに従って席に着いた。


「では遅ればせながらもご挨拶を。わたしはカディロフ。このカラミティ工房の筆頭お針子をしています」

「わたくしはミラですわ‼︎デザイナーですの‼︎ち・な・み・に〜ダーリンは筆頭お針子とか言ってますけど、わたくし達のボスですわ‼︎」

「お前が喋ると話が拗れるからヤメろ‼︎」


カディロフさんはミラさんの頭に拳骨を落とす。

ゴヅン‼︎とか危険な音がしたのだけど……大丈夫?


「………ごほんっ…失礼致しました。こいつの頭は拳骨を落とそうが一切のダメージがないので、ご心配なく」

「少しぐらいはありますわよ〜」

「だ・ま・れ・よ?」


…………どうしよう…キャラが中々に強いわ……。

私達、自己紹介すらしてないんだけど……。


「申し訳ありません。どうやらミラはあのマーメイドドレスというアイデアを下さった方と対面し、興奮状態にあるようで……」

「あぁ、いえ。ご心配なく……」

「えぇ、そうですわ‼︎とても素晴らしいアイデアでしたの‼︎わたくし、感動しましたわ‼︎それに、本日ご対面してお二人の美しさに制作意欲がとーっても湧いてきましたの‼︎ありがとうございます‼︎じゃあ、わたくし、デザインを描いてきますわ‼︎実際にお会いしたら、あのウェディングドレスのデザインを少し直したくなりましたの‼︎失礼しますわ‼︎」

「ミラ、お前っ‼︎お前がお会いしたいとか言ったのにっ……」


カディロフさんの訴えも虚しく、ミラさんは猪突猛進で走り去って行く。

そんな後ろ姿を見つめながら……彼は疲れたように溜息を吐いた。


「………誠に申し訳ございません……あいつ、腕は確かなんですけど頭が残念で……」

「えっと……お気になさらずに」


カディロフさんの乾いた笑みはなんかそれだけで哀愁漂ってたわ。

ルインも思わず「大丈夫ですか?」と声をかけるレベルで。


「はぁ……取り敢えず。本題に入らせて頂きます」

「採寸ですよね?」

「勿論それもありますが、商売の話です」

「「え?」」


キョトンとする私達……というか、私を見てカディロフさんは懐から紙を取り出した。


「ジキタリス嬢にはアイデア提供料としてそこに書かれている金額を。使用料として、マーメイドドレスが売れた場合、その金額の二割をお渡ししますね」

「…………え?」

「またよろしければ定期的にミラに会って頂けないでしょうか?ジキタリス嬢とお会いすると制作意欲が湧くらしいので、出張相談費ということで……」

「いや、ちょっと待って下さる?」

「はい?」


カディロフさんが首を傾げるけど、私はそれでもストップをかけるしかなかった。

いや、だってね?


「えっと……私はただ、マーメイドドレスが着たいからリクエストしただけで……お金が欲しいからじゃ……」

「いいえ、それは駄目です」

「……だ…駄目?」

「確かにデザインに起こしたのはミラですが、アイデアはジキタリス嬢のモノです。それを我らがカラミティ工房のモノとして販売するのは盗作になります」


そんな大袈裟なと思ったけれど……彼の顔は真剣だった。


「職人の誇りを自ら貶めたくないのです。ですから、このマーメイドドレスというアイデアは、双方が納得するカタチで扱いたいのです」


どうやら私が善意でアイデアを提供したとしても、職人として、他人のアイデアをなんの見返りもなく使ってしまうのが許せないらしい。

あくまでもこのデザインのアイデアは私。

それを使わせてもらっているのがカラミティ工房というカタチにしたいみたい。

………私も前世の知識を使ったから盗作みたいなものなのだけど。


「お金はいりませんと言ったら?」

「最初に数十枚ほどドレスを無料提供させて頂きます。その後は年ごとに流行を取り入れたドレスを……」

「………それはそれでかなりの値段になるわね……」


オーダーメイド品だから、元々カラミティ工房のドレスはかなり高い。

そんなのが毎年送られて来たら……。


「分かったわ。でも頂くのはアイデア提供料だけでいいわ」

「………一方の料金しかもらって下さらないなら、使用料の方にして下さいませんか?流石に、アイデア提供料のみしかお渡ししないとなると、こちらの利益が大き過ぎて……」


困ったように言うカディロフさん。

お金目的じゃないのだけど……余りにも悲痛なオーラを放つから彼の提案を了承しちゃったわ。


「でも、これだけは譲れない」

「はい、何か?」

「ミラさんに会いに来るのにお金はいらないわ。友人・・に会いに来るつもりなので」

「えっ⁉︎」

「………どうしてそんなに驚くの?」


お金をもらいたくないからそう言えば、カディロフさんは目を見開いて……苦笑した。




その後、私達は採寸を終えて少しばかりお茶をしてカラミティ工房を後にした。








ちなみに、マーメイドドレスがすっごく売れて……それはそれで後々困ったことになるなんて、その時の私は思わなかったわ。






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