第22話 強かな味方
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風邪ひきました。明後日の更新はないかもしれないデス。
結婚の準備っていうのは、基本的に本人達がやるものだと思うけど……この世界では…というか貴族としては変なのかしら?
少なくとも、両親の協力も必要なものらしい。
ルインの方はまぁ……精霊王と投獄中(という表現でいいのかしら?)だから、初めから論外で。
私の方も……お父様は私を目の敵にしていらっしゃるみたいだから、ここ最近は私を家においているだけの放置状態(元々、お母様に対する罪悪感からくる仕事人間だったから、余り状況は変わらないのだけどね)だし、お母様はもうお母様の人生を歩いているから関係ないし。
だから、自分達でどうにかするしかないけれど……前世含めて結婚が初めての私もどうすればいいか分からなかった。
仕方ないから、式を行う教会の予約とドレスとタキシードだけを準備して二人だけの結婚式にしてしまおうかとルインと話していたの。
だから、まさかこうなるとは思わなかったのよ。
*****
「さて。シエラ嬢はどのドレスがいいかな?あ、エクリュ侯爵も意見があったらお申し付け下さい」
ふかふかのソファに座った私とルインはチラリと視線を合わせる。
そして……私は意を決して質問した。
「………えっと…一つ聞いていいでしょうか?」
「なんでしょう?」
「どうして、私とルインをお呼びになったんでしょうか?」
「え?結婚式のお手伝いをするためですよ?」
目の前で優しそうに笑う男性。
そう……そこには、お母様の幼馴染兼、お母様の新しい夫となるリチャード様がいた。
ことの始まりは数時間前ー。
街で噂のカフェで、ルインとデートしていた時。
唐突にマクフォーレ商会の人がやって来て、一緒に来て欲しいと懇願してきた。
重要な話があるからと言われたら思いつくのはお母様関連。
何かあったのかもしれないと思ったけれど、私が行っていいものかと逡巡していたら……ルインも一緒に来て欲しいと言われたの。
その時はお母様関連かと動揺してたんだけど、精霊に頼んで誰がどうして呼んでるかを把握すればよかったのよね。
まぁ、そんなこんなで一緒に来たら、この部屋に案内された。
この部屋は言ってしまえばVIPルームというヤツで。
後からやって来たリチャード様が言った言葉がさっきのものってことね。
「ラティはまだ、心の整理がついてないからシエラ嬢には会えないらしいんだけどね。でも、せめて母親として結婚式の準備ぐらい手伝いたいと思ったらしいんだ。だから、僭越ながら義理父となる僕がラティの代役でお手伝いしようと思ってね」
「………お母様…」
そう言われて私は目を見開く。
だって、もう関わることはないと思っていたの。
お母様は弱い人だから。
お父様の血を引く私のことは、もう二度と見たくないだろうし関わりたくないだろうと思っていたのに。
…………ちょっとだけ、予想が外れたみたい。
「でも、よろしいんですか?一応、まだリチャード殿はシエラと他人でしょう?」
ルインも少し困惑したような様子で彼に聞く。
リチャード様は頬を掻きながら苦笑した。
「あはは、それを言われると耳が痛いんですが……愛しい人の願いは叶えてあげたいと思うんです。それに、シエラ嬢にはラティを奪うお膳立てをしてもらったんです。なら、僕はその恩に報いなければならない」
「………あぁ…それなら仕方ないですね」
「ご安心を。マクフォーレ商会が全面的にお手伝いさせて頂きますから、盛大なものにしましょう」
「いや、そんな大きなものにするつもりはないんで……」
「いやぁ……流石にそうは言えないと思いますよ、エクリュ侯爵」
私とルインは「え?」と首を傾げるが、リチャード様は真剣な顔で言う。
「ご友人と仕事仲間……せめて同じ部隊の方、直属の上司は招待した方がいいかと。今後の人間関係のためにもね」
「………今は単独部隊扱いになってるんだけど……上司となると総帥……いや、第五部隊の人達を招待すればいいのかな……?」
………友人のこと、忘れてたわ。
ごめんなさいね、オリビエ。
というか、ルインは今、単独部隊扱いなのね……。
戦力過剰だから下手に部隊に組み込めなかったのかしら?
「後、もう少ししたら社交シーズンになります。そしたら家の繋がり……というか、エクリュ侯爵と仲良くしたいって人達が出てくると思いますよ?寄生するような愚か者もいますが、ちゃんとしている家もあります。それに、繋がりを作っておくことで情報収集にも役立ちますし……ほら、貴族界ってのは腹の探り合いの場でしょう?少しでもマトモな繋がりを作って、協力者を増やしておいた方がいいですよ」
確かに、公爵様とかひよこ父みたいに強かで腹に一物抱えてる人が多そうだし……貴族界ってのはドロドロした感じだものね。
「ジキタリス伯爵が仲介役として、ジキタリス家と繋がりのある家を紹介してくると思うので、そちらの方達の招待も……」
「それはないと思うわ。お父様、私を憎んでるみたいだから」
「え?」
リチャード様は目を見開いて固まる。
これから話すことを察してか、ルインが優しく私の手を握ってくれて……心が少し落ち着いた。
「第二夫人を作ってラティナ様を裏切ったのに離縁しなかったのは……お父様がラティナ様を愛してたからなのよ。だから、離縁した今もあの方を好きで。離れさせられた原因である私のこと、とても憎んでいるみたいなの」
「…………」
「だから、結婚式にも参加しないだろうし……そういう仲介もしてこないと思うわ」
まぁ、人命の方が優先順位が高いから憎まれるぐらい仕方ないわよね。
「だから、今の私は嫌々ジキタリス家におかれている状態なのよ」
そう……お父様は私にお母様の血が流れているから、その理由だけでジキタリス家にまだ置いているだけ。
お父様は異常なくらいにお母様を愛してたみたい。
それはまるで粘着質な愛執で。
………お父様も病的な愛の素質があるんじゃないかって思うぐらい。
だからね?
そんな理由で私に関わってこようとしないし、もう二度と話すこともないんじゃないかしら?
殺されてないだけマシかもしれないわね。
「………そんな家にいて、大丈夫なのかい?」
「えぇ。精霊達が守ってくれるし、ルインがいるもの。それに……もう殆ど、ルインの家にいるのよ?」
「え?」
いくら図太い性格をしている私でも、いることを望まれていない場所にいるのは疲れちゃうもの。
だから、ここ最近はルインの新しいお屋敷にお泊まりすることが多くなった。
もう半同棲状態なのよね。
「………えぇ……貴族女性としてそれ、大丈夫かい?」
リチャード様は言ってる意味を理解したのか、困ったような顔をする。
私はルインに寄り添いながらニッコリと微笑んだ。
「うふふっ、大丈夫よ。だってルインは私を捨てたりしないもの」
「……捨てたりする訳ないでしょ。そんなことするぐらいだったら死んだ方がマシだよ」
ルインが頬を膨らませながら、ジト目で睨んでくる。
あら?ご機嫌損ねちゃったみたい。
「怒ったの?」
「………別にぃ…」
「可愛い人ね」
「……………うぐっ……」
頬を少し赤くして目を逸らすルイン。
私達の間に流れる甘々空気に負けたのか、リチャード様が「ごほんっ‼︎」とワザとらしく咳をした。
リチャード様、顔、真っ赤よ?
「えっと……まぁ、二人がいいならいいと思うよ。うん。えっと……どこまで話したっけ……」
「家の繋がり?」
「あぁ、そうです。うん。えっと……まぁ、とにかく。ドラゴン単独討伐という偉業を成し遂げた侯爵であり中佐であるエクリュ侯爵の結婚式ですからね。小さいものはできないと思った方がいいですよ」
ちょっと結婚を甘く考えてたらしいわ。
これからすべきことを考えると……頭が痛くなりそう。
「まぁ、商家でありますが僕の家もそれなりに貴族と繋がりがあるから……よかったら僕がご紹介しましょうか?」
「え?」
「商家ですからね。商売するにも為人を見て判断してますから、一応そこそこ真面目な人を紹介できますよ」
「………えっと…流石にリチャード殿にそこまでお世話になる訳には……」
ルインは私に視線を向けて、SOSを発する。
いや、私もどうしてここまでしてくれるのか分からないのよ?
「いいんですよ。ラティの娘さんのためだから」
「でも……」
「…………素直に好意を受け取れないって言うなら、こうしましょう。僕は商人としてお二人をお手伝いします」
「「え?」」
きょとんとする私とルインに、リチャード様はニヤリと笑う。
「既に有名人であるドラゴンスレイヤーの結婚式をサポートすることで、僕の商会は更に有名になることでしょう。ネームバリューってヤツですね。いやぁ、お手伝いするだけで顧客が増えるなんて嬉しいなぁ‼︎」
「「…………」」
「で、お二人を僕の知り合いに紹介するのは、僕が紹介することで僕自身の株を上げることになります。ついでにお二人もマトモな繋がりができて両方得しますね。いかがでしょうか?我が商会と取引致しませんか?」
…………あぁ…うん。
どうやらリチャード様もそこそこ強かな人だったのね。
主要の理由はお母様の希望なんでしょうけど、ただ私達のお手伝いするだけで、リチャード様も得をするなら申し訳なさもないわ。
ルインもクスクスと笑いながら、頷いた。
「じゃあ、マクフォーレ商会にお手伝いを願おう」
「承りました、エクリュ侯爵」
こうして、私達の結婚式の準備は進んでいく……。




