第21話 決闘が終わったら終わったで色々あります
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決闘から早くも一週間。
予め陛下が用意していたみたいで、王女様は逃げるように他国へ留学して行ったわ。
……まぁ、婚約者がいる男性に擦り寄っていたことが分かったし、何よりあのルインが相手ですもの。
下手にこの国にいさせたら殺されると思ったのかしら?
国王陛下から〝以後、このようなことがないようにする〟って正式にお詫びされたら……まぁ、ひとまずは許すしかないわよね。
まぁ、あの一件で私とルインに手を出そうとする人はいなくなったから良しとしましょう。
だから、後は何も気にせずに結婚式の準備をするだけだと思ってたんだけど……ここで問題が一つ。
……私が精霊術戦において、相手の精霊術をほぼ無効化すると分かったら、まぁ……こうなるわよね。
「………えっと…本日はお日柄もよく……」
「いきなり見合いの挨拶みたいなこと言わないで下さる?腹立つわ」
「………………」
昼休みの学園ーー校長室。
校長先生が見守る中、目の前のソファにはあの女男が座っていた。
なんでかって?
簡単に言えば精霊術師団へのスカウトよ。
「言っておくけど、精霊術師団に入る気はないわ」
「ですがっ……」
私がルインの婚約者で大好きだって分かってるのに……ルインを迫害してた奴らがいるのに、入ると思うのかしら?
というか、よく顔を出せたわね?
「ねぇ、国王陛下が私達に関わらないと宣言したの、忘れたのかしら?」
「………強い、精霊術師がいたら……スカウトするのが我が精霊術師団の任務です……」
「ふぅん?じゃあ、返事はノーよ。お帰り下さる?」
私はにっこりと笑って出口に手を向ける。
校長先生が後ろでアワアワしてるけど、私は引く気がないのよ。
「シエラ嬢?その……精霊術師団に入ることができたら、とても名誉なことだと思うのだが……」
校長先生がそんな風に言ってくる。
けど、それは普通の人の場合よ。
「名誉なんていりませんわ。そんなものがなくても、私はルインの愛さえあれば生きていけますもの」
堂々と、私は言う。
というかね?
「そもそもの話、精霊術師団に所属するエルフ達はルインのことが嫌いですの。つまり、ルインの婚約者である私にだって害をなさないとは限りませんわよね?」
「………そんなことっ…‼︎」
「ないとは言わせませんわ。ご存知ないかもしれませんが……私とルインが出会ったのは、ルインが大火傷を負って死にかけてる時ですのよ。そんなことをした精霊術師がいる……そんなエルフ達でほぼ構成されている組織に入りたいと思います?」
「………っ‼︎」
女男が複雑そうに顔を歪める。
仲間がすることを黙認してたからこそ、そう言われたら何も言い返せないんでしょうね。
………というか、それを聞いた校長先生も絶句してるし。
「……シ、シエラ嬢……?それは本当か……?」
「えぇ……ルインはハーフエルフです。ですが、エルフの皆さんは無駄に自尊心がお高いので、ハーフエルフという存在が許せず、殺そうとしておりましたの。ただ存在することさえ許さないという感じでしたのよ?普通に考えて、婚約者である私も害されそうでしょう?」
「……確かに…」
「それに……エルフ以外の精霊術師が入団したら……と考えると不安になりませんこと?」
「っっ‼︎」
校長先生はそれを聞いて思案顔になる。
まぁ、それはそうよね。
今までは普通に精霊術師団に卒業した生徒を入団させてたけど……そういう振る舞いをするエルフがいるとなると、卒業生も不当な扱いや虐め紛いのことをされているかもしれない。
卒業しても生徒は生徒。
教師としては、不安なんでしょうね。
私は精霊術師団の実態は知らないけれど。
「…………シエラ嬢。貴重な情報をありがとう。今後のいい判断材料になる」
「どう致しまして」
どうやら校長先生は真面目な人みたい。
これで今後、学園の卒業生を簡単に精霊術師団に入れないでしょう。
悪い噂ってのは簡単に広がりやすいもの。
肩身の狭い思いをするでしょうねぇ……。
………どうもルインが関わることになると私も心が狭いみたい。
エルフ達の精霊術行使に制限かけているから、一年間は他の人達も安全に過ごせるだろうけれど……。
でもそれは、あくまでも一年間のみ。
一年後には精霊術師団の戦力は元に戻ってしまうけれど……新団員での強化は僅かばかりになるでしょうね。
結果的に精霊術師団の戦力……国家戦力も低くなるけど、それは王女暴走の件の代償だと思ってもらいましょう。
「では、私は失礼致しますわ」
校長室から出ると、そこには無数の生徒達。
彼らは急に出てきた私に驚いて、驚愕の表情を見せたり、困惑したり、慌てたりしていた。
「あら、皆さん。ご機嫌よう」
にっこりと笑顔で挨拶するが、彼らの反応は引き攣ったような鈍いもの。
まぁ……普段は防音の精霊術が発動してる校長室の、中の会話が丸聞こえになってたらそうなるわよね。
うふふっ……大人よりも子供の方が口が軽いものね。
さっきの話は簡単に広まってしまうと思うわ。
あぁ……私ったら。
陰湿なやり返しが得意になっちゃって……少し困るわ。
まぁ、腹黒なところも彼は受け入れてくれるから治す気はないのだけど。
「何をしてるんだ、早く教室に戻りなさい」
「あの、さっきの話は本当ですか?」
「………ん?」
「話し声が聞こえたんです‼︎ですが、精霊術師団はエルフの方が多いと聞きます‼︎将来、精霊術師団に入ろうと思っていたのですが……そんな風に攻撃されるかもしれないなんて……」
「なっ⁉︎」
校長先生は校長室に防音の精霊術を張っているのを知っているから、そう言われて驚いたみたい。
そして、ハッとした顔でこちらを見る。
それは勿論……女男も。
「あら?私の親切心ですわ。だって、皆さんも聞いておいた方がいい話なんですもの。将来のためにも、ねぇ?」
「貴様っ‼︎たかが人間の分際でっっ‼︎」
女男は私の胸倉を掴もうとして、こちらに手を伸ばしたカタチで身体が動かなくなる。
そして、その顔が驚愕に……恐怖に染まる。
えぇ、基本的に精霊と相性が良くて強力な精霊術を行使できる貴方だものね。
私が無詠唱で精霊術を行使したことに、驚いているんでしょう?
それができるほどの力量に、驚いているんでしょう?
貴方達が警戒すべきなのは……ルインだけじゃなくて私もなのよ。
「き……貴女、は……」
「どうして精霊に頭の中を見せて無事でいられるのか、かしら?」
「っっ‼︎」
私の無詠唱は、精霊達に直接頭の中を……思考を見せているからできるもの。
言ってしまえば、脳内に精霊が侵入して盗み見してるの。
でも、それってかなーり危険なことなのよね。
精霊は上位存在であり、高エネルギー体でもある。
……あぁ、神の端末でもあるんだったかしら。
もっと分かりやすく言ってしまえば、レントゲン撮影を強い放射線で行っているようなものなの。
だから、普通の人間……エルフだってやろうとしない。
そんなことをしたら、肉体が壊れるかもしれないから。
だから、それを平然とやる私が大分規格外だって……精霊術に優れてる女男はよく理解したんでしょうね。
私は嘲るようにクスクスと笑う。
「………殊勝な態度を取ったって簡単に化けの皮は剥がれるのよ」
「………っ‼︎」
「ルインにだって……あの力を自分に向けられたらと思うから、大人しくしてるに過ぎないんでしょう?本心では相変わらずハーフエルフ風情がと罵ってる癖に。あぁ、ついでに?エルフ達を弱体化させた人間にも怒りを覚えているみたいね?心の中で人間を下等種と罵るエ・ル・フ・さん?」
女男が大人しくしていたのは、ルインの力に怯えていたから。
あの力を向けられたら自身が簡単に死ぬことを理解しているから。
でも、心の中で悪態つくくらいなら問題ないと思ってたんでしょうけど……私は心の中でもルインを馬鹿にするのを許さないわ。
「ルインもそうだけど、私もかなーり……化物なのよ?だから、私を怒らせないで?」
簡単に相手の心だって読むことができる。
簡単に相手の精霊術を崩壊させることだってできる。
私に、できないことはほぼないと思うわ。
でも、そんなの必要ない。
私は……ルインの隣にいられればいいの。
「私とルインはイチャイチャして過ごしたいだけなんだから。それを邪魔するなら容赦なく潰してあげるわ」
そう、私にとって大事なのはそれだけなんだからね?
ルインだけじゃなくて、シエラも彼が大好きだから……余計な奴らは始末(搦め手(?))するよって話でした☆




