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第19話 地雷を踏み抜くとヤンデレます。


いつも沢山の方に読んで頂きありがとうございます‼︎

今後も、よろしくどうぞ‼︎







「お父様。シエラ・ジキタリスと決闘することになりましたわ」

「………は?」



それを聞いた瞬間、我は冷や汗が溢れ出た。

この馬鹿娘は関わるなと告げたのに、彼女に決闘を申し込まれるような馬鹿をしたらしい。

最近、クリスタにつけている影からエクリュ侯爵に媚びを売っていることは聞いていたが……まさか……。


『あー……もしもし?聞こえますか?』

「っ⁉︎」

『声は出さないで下さい。返事は脳内で思うだけで大丈夫なので』


その声はエクリュ侯爵のモノで。

どうやら精霊術を使って連絡しているのだと判断した。


『精霊経由で王女がご報告したと聞きましたので、補足説明をしようかと』

(………頼む)


エクリュ侯爵から聞いた説明はそれはもう阿呆らしかった。

要するに、この馬鹿娘はシエラ嬢への劣等感コンプレックスを拗らせているらしい。

ゆえに、エクリュ侯爵を奪うことで彼女への当てつけにしたいとか。

で、家まで突撃したクリスタに激怒したシエラ嬢は決闘で解決することにしたとか。

つまり、スレイサー公爵家の子息のように高いプライドを公的な場で木っ端微塵にするつもりらしい。


(…………はぁ…どうしてこんなに馬鹿に育ってしまったのか。困りものだな)

『それはこちらの台詞ですけどね。おかげで俺とシエラの時間が減って、殺したい気分です』

(……………)


我は思わず頭を抱える。

しかし、頭を抱えたって解決はしない。


(シエラ嬢にはお手柔らかにと伝えてくれ)

『それはシエラ次第じゃないですか?まぁ、言っときます』

(あぁ、ついでに。屋敷の準備が終わったから都合がいい時に引っ越すといい)

『分かりました。失礼します』

「…………お父様?」


エクリュ侯爵との念話で黙っていたからか、クリスタが怪訝な顔をする。

我は溜息を吐きながら、告げた。


「決闘ということは死すらあり得るということだ。それは分かっているな」

「わたくしが負けるとでも?」

「あぁ」

「なっ⁉︎」


実の親に肯定されたからか、クリスタは顔を真っ赤にして激昂する。

しかし、世界は残酷なのだ。

クリスタとシエラ嬢が戦った場合、勝つのは後者だとしか言えない。

親の欲目を使っても無理だ。


「失礼しますわっ‼︎」


激昂した馬鹿娘は、淑女らしからぬドタドタとした足取りで出て行く。

残された我は大きく溜息を吐いた。



「………せめて…世界が滅ばないように、願うしかないな」



後で謝罪の気持ちを持って行った方がいいかもしれないと、切実に思った。





*****





天気は快晴。

今日は絶好の決闘日和だわ。

私は、学園の控え室の窓際に立って雲一つない空を見上げていた。


「………はぁ…シエラとの時間が……」


後ろには、ソファに座りながら国王陛下から届いたお詫びのお菓子クッキーを食べるルイン。

私は苦笑して、拗ねたような顔をした彼の元へと歩み寄った。


「でも、早々に決着をつければしつこくされないでしょう?」

「………そうだけどさ」

「終わったら、いっぱいイチャつきましょう?」

「…………うん…」


ルインは私のお腹に抱きつくように腕を回す。

今は訓練服(ラッシュガードに近い。男子はズボンだけど、女子はキュロットみたいになっている)を着ているから……彼の体温がいつもより分かりやすい。

あ、今更なんだけど……学園の制服は濃紺のワンピースタイプで、ちょっと前世的に言うとお嬢様学校みたいな感じの制服(男子はブレザータイプ)ね。

ルインは私の背中から臀部にかけてスルリと撫でた。


「訓練服って身体のライン、分かりやすいよね」

「そうね」

「シエラの身体、他の男が見てると思うと腹立つな……」


仄暗い瞳でそう言うルインは、私の太腿を撫でる。

闇の粒子を放出し始めるのは少し困るけど、嫉妬してくれるのは少し嬉しかった。

だって、それだけ私のことが好きってことでしょう?


「でも他の男は服の上からよ?私の素肌を知ってるのは貴方だけなのに……それでも嫉妬する?」

「するよ。シエラに関することだったらなんだって嫉妬する」

「うふふっ。ルイン……可愛い」


彼の膝の上に跨って、唇を喰むようにキスをする。

女性から男性に触れるのは、はしたないらしいけど……キスするとルインの真紅の瞳が蕩けるの。

それがとても綺麗で、色っぽくて……身体が痺れそうになる。

それに、彼も喜んでくれるしね。

ルインが喜んでくれるなら、えっちな子になってもいいと思ってしまうの。


「シエラ……」

「んっ……」


彼の首に腕を回して、舌を絡めてキスをする。

さっきまでクッキーを食べていたから、ちょっと甘いわね。

まぁ、お菓子を食べていなくてもルインとのキスはいつも美味しいんだけど……。

あぁ……幸せ。


「これ以上は、俺が我慢できなくなるから……また後でにしよう?」


ルインが頬を赤くしながら困ったように言う。

私はクスクス笑いながら頷いた。


「………終わったら、頑張った私にご褒美を頂戴ね?」

「うん、シエラが望むもの……なんでもあげるよ」



トントントン。



『シエラ、時間よ』


そうやってイチャついていた時、ノックと共に聞こえたのはオリビエの声。

どうやら、決闘のお手伝いをしているらしい。

私はルインから離れて扉を開けた。


「ご機嫌よう、オリビエ」

「ご機嫌よう。緊張はしてなさそうね?」


彼女はニカッと笑って挨拶をしてくる。

そして、後ろにいるルインを見て目を見開いた。


「うわぁ、間近で見ると本当に好青年ね‼︎」


オリビエは頬を赤くして、興奮したように言う。

その反応が、ちょっと恋する乙女みたいで……私は……。


「シエラ、紹介して頂戴‼︎」


オリビエは私の腕を掴んで催促してくる。

ルインが側に来たのを確認してから、私は二人を紹介した。


「こちらが私の婚約者のルイン・エクリュ侯爵。で……彼女は私の友人のオリビエ・ナザヴィサ伯爵令嬢よ」

「初めまして、エクリュ侯爵。わたしはナザヴィサ伯爵家長女のオリビエと申します。シエラの友人です」

「初めまして。俺はルイン・エクリュです。侯爵の位を賜っていますが、軍部では中佐を務めています」

「えぇ、ドラゴンスレイヤー様ですものね‼︎お聞きしておりますわ‼︎」


ルインの笑顔にオリビエは更に頬を赤くする。

…………どうしよう…面白くないわ……。


「ナザヴィサ令嬢には、いつもシエラがお世話になっているようで……」


なんてルインが挨拶するから、自分の顔が険しくなる。


「いいえっ、そんなことっ……‼︎」


オリビエは更に興奮状態になって、唐突に、ルインの手を取ろうとする。

それが、私の限界だったわ。



「ルイン。その言い方は少し父親みたいだわ」



ピキッ。

私の声は、いつもよりも数段冷たくて。

ルインとオリビエの身体が、固まった。

そして……ルインはにっこりと、微笑みながら……私を見つめた。


「………俺は婚約者だよ?」

「でも、そう聞こえたんだもの」

「………………」


父親扱いされたのが気に食わなかったのか、ルインの目がスッと細められる。

互いの間に流れる極寒零度の空気は、実際にその場の空気を冷たくしているようで。

状況を察したのかオリビエは、私達の圧に負けて動揺している。

でも、生憎とそちらを気にしている余裕はなくて。

ルインは、仄暗い闇を宿した瞳で……私を見ながら。



「………父親じゃないって、証明しようか?」



ぞわりっ……と腰が抜けそうになるほど、色気を含んだ声で、そう告げた。



「………ねぇ、やっと婚約した俺にそんなこと言うの?シエラを自分のモノにしたくてでもできなくて、ドラゴンが偶然王都に来て殺せたから、運良く爵位を貰えて。やっと婚約できたのに。君を手に入れられると思った俺に、父親みたいだって言うの?俺、君の家族になるけど父親になるんじゃないよ?父親になったら、君を女として愛せないじゃないか。君をこの手にいれられないじゃないか。俺はシエラが最愛の女性として好きだって、ちゃんと言葉にしてきてはずなんだけど?肉体的にも教え込んでたと思うんだけど?まだ足りなかったのかな?なら、閉じ込めて、三日三晩かけて、精神的にも身体的にも教え込んであげようか?骨の髄まで溶けるまで教えてあげようか?ねぇ、シエラ?」



ギリッ……と掴まれる腕。

痛いけれど、ルインは私を逃さないためかその力を緩めない。


……………どうやら、父親みたいって言葉はルインにとって地雷だったみたい。


ハイライトが消えた瞳で見つめてくる彼は、一歩間違えれば監禁しそうなほどに病んでる雰囲気を出していて。

…………でも、私も引く気がないから。


「私にそんなこと言われるのが気に食わなかったなら、そんな言動しなければいいのよ?」

「………………」

「………………」


互いに睨むように見つめ合うこと数秒。

先に動いたのは……ルインだった。



「……………俺ばっかりかと思ってたら、シエラもかなーり俺のこと好きだよね。父親は禁句だと思うけど」



さっきまでのヤンデレモードが解けて、ルインは蕩けるような笑みを浮かべる。

私はさっと顔を背けた。


「友達に嫉妬したの?」

「……………煩いわ」

「俺が他の女と喋るのが、嫌だったんだね?だから、俺を怒らせるようなことを言って気を引こうとしたの?」

「止めて。言葉にされると自分が如何いかに子供っぽいか分かるから止めて頂戴」


えぇ、そうよ。

オリビエは友人だというのに、ルインが話してるのを見たらちょっと嫉妬したのよ。

というか、オリビエが顔を赤くして話すから気に食わなかったのよ。

でもね?………ちょっと話してるぐらいで嫉妬なんて、子供っぽ過ぎるし心が狭過ぎるでしょう?

怒らせようとしてまで、気を引こうとするなんて……。


「あははっ……シエラ、可愛い……」


蕩けるような笑顔を浮かべながら、私の首筋にガリッと噛み付くルイン。

あまりの痛さに涙が滲んだけど、私はそれを受け入れた。


「……俺にはシエラだけだよ。他の女の反応がどうであれ、嫉妬しなくていいよ」

「…………うん…」

「あ、後……父親みたいは禁止ね?そしたら本気で、最低でも・・・・三日三晩犯すからね。ちゃーんと、俺が君の伴侶なんだって教えてあげる」

「……………はい……」


一晩だって濃厚で精霊術の回復を使わないといけないのに、三日三晩なんて死ぬわ‼︎

でも、ルインの目が笑ってないから……本気なんでしょうね。

うん、もう二度と父親みたいって言わないようにしましょう……。


「………………じゃあ。いつまでもナザヴィサ伯爵令嬢を待たせる訳にもいかないから、行こうか」


そこでオリビエが一緒にいることを思い出したわ。

彼女はなんか……こう、なんとも言えない顔をしていて。

彼女は、ススススッ……と目を逸らした。


「……えーっと…行きますかぁ……」


逃げるように、そそくさと歩くオリビエ。

ルインも首を傾げて、そんな彼女を見つめた。


「………なんか、凄い顔してたね。信じられないものを見たような……」

「そうね……?」




私達は互いに顔を見合わせて、首を傾げた。







ルインにだって地雷はあるよってことですね。

シエラの溺愛でヤンデレを抑えてるけど、下手をすれば監禁されちゃうんだと思います。


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