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第18話 ルインの女神がキレる時


今後もよろしくどうぞ‼︎






最近、俺のところに王女殿下が突撃してくるようになった。




それは軍部だったり、ドラゴン討伐報酬として王都に屋敷を陛下から頂くことになったから、その手続きのために王宮に行った時だったり……様々だ。

精霊経由でシエラはあんな小物、どうでもいいと思ってる&俺が彼女を裏切らないって分かってるから放置してるって教えてもらったけど……俺はちょっと…いや、かなーり気分が悪い。


だってそうでしょ?

お母さんと離れて落ち込んでるシエラが心の中で少し一人になりたいって思ってるから、今は少しだけ距離を置いてるんだよ?

なのに、代わりに超絶どうでもいい女が近づいてくるんだ。

イラってするでしょ?

というかさ?

はっきり言って……泣きそうな顔してくるんなら、来なければいいのにって思ってる。

なんか、ベタベタ触ってこようとするんだけど……俺が睨むと動かなくなるからよく睨むようになったんだ。


というか、本当に邪魔なんだよね……。

一応、国に仕える身だから王族を無下にはできないから、相手してやらなきゃいけないでしょ?

そうすると仕事が中断されて滞るじゃん。

軍部内でも階級が上がったから色々と揉めてるんだよ(第五部隊に残るか、どうかとか)。


まぁ、言ってしまうとシエラ以外の人がどうなろうと構わないから……この国を出て行ってもいいんだけど。

シエラは人間だからね。

ハーフエルフ(半精霊)の自分の考えに巻き込んではいけないと思うんだ。

シエラが人間として生きているなら、ちゃんと人の世で生きさせてあげなきゃね?







「何を考えてるの?ルイン」


俺の部屋の、真っ白なベッドシーツに広がったストロベリーブロンドの髪。

陽の光で煌めいていて、とても美しい。

葡萄酒ワインレッド翡翠エメラルドの瞳が、蕩けるように俺を見つめている。

………俺は愛しい婚約者シエラの上に覆い被さって、彼女の頬を撫でた。


「………分かってる癖に」

「そうね。久しぶりの逢瀬に他の女のことを考えているなんて……酷い人」


俺の顎を人差し指で撫でるシエラは、とても妖艶で。

そう……彼女の言葉通り、俺達は久しぶりに会っていた。

心が落ち着いたというよりは、俺が足りなくなったみたい。

ずぅっと一緒にいたもんねぇ……。

取り敢えず、弁明しなくちゃ。


「王族がまだ俺らに関わろうとしてくるから、どう始末しようかなって考えてただけだよ?」

「そうねぇ……クリスタ王女はちょっと頭が足りないみたいだわ」

「まぁ……プライドがエルフ並みに高いから、シエラの方が目立つのが許せないらしいよ?」

「目立ってるつもりはないのだけどね?」


シエラは少し困った顔で言う。

はっきり言ってシエラは綺麗だ。

精霊経由で他の男達が、シエラに横恋慕しているのを知ってるし。


「成績優秀なんでしょ?」

「全部ルインの隣にいるためよ?」

「……………」


頬がじんわりと熱くなる。

シエラが俺のために頑張ってくれるなんて嬉し過ぎて……溶けそうだ。

俺にそんな価値があるとは思えないけど、シエラがそこまで頑張ってくれてるなら……俺も俺なりに彼女に相応しくなれるように頑張らなきゃ。


「あー……早く結婚したい」

「もう少しの辛抱よ」

「うん……あの、さ?」

「なぁに?」


シエラはクスッと大人びた笑みを浮かべる。

そして、分かってるのに俺に言わせようとするんだから。


「……本当は、いいお屋敷で二回目をしようと思ったんだけど……」

「久しぶりに会ったから、我慢できなくなっちゃった?」

「………ごめん…ケダモノだね」

「うふふっ、それだけ私が欲しいってことでしょう?」


両手を広げて彼女は微笑む。



「おいで?」



その言葉に俺は……。



ドンドンドンッ‼︎



「「……………」」


容赦なくノックされる扉。

スッと冷たい視線になる俺とシエラは、ゆっくりとそちらを向いた。


『ルイン・エクリュ侯爵‼︎いらっしゃいますかっ⁉︎』

『本当にこんなところにいるのかしら?侯爵がいるような場所じゃないわ』

『ですが姫様……軍部に問い合わせたら……』


………ボロアパートだからね。

外の声(結構、声が大きい)が丸聞こえだよ。

つーか……そこまでするのか。



…………………よし、殺そう。



俺が扉の外にいるであろう人物達に、闇で出来た剣を見舞おうとした瞬間……。



「……………私とルインの時間を……よくも邪魔してくれたわね……」



俺の女神シエラがキレた。




*****





心を落ち着ける時間が必要だったけど、ルイン不足になった私は久しぶりに彼と会った。



でも、それなのに……王女様は軍部に問い合わせてまでルインの部屋を探ったらしい。

…………ふざけてるわ。

なんで私とルインの時間を邪魔するの?

そこまで私が憎い?

………ルイン不足の私は今、とっても心が狭いのよ。



私達の邪魔をするなら……邪魔できなくさせてあげる。



私はルインを押し退けて扉の前に立つ。

そして、内側からゆっくりと告げた。



「今ここで……問答無用で串刺しになりたいか。私と決闘して公的に近づけなくなるか。どちらか選びなさい」



『『『ひぃっ⁉︎』』』


…………ちょっと、ルインに負けず劣らずの冷たい声が出たわ。

でも、こう言ったからには引けない。


「ねぇ……国王陛下は私達に関わらないと言ったのよ?その意味、王女あなたなら分かるわよね?」

『………その声、はっ…‼︎』


彼女の顔を見たくないから扉を閉めたままだけど……私の声の冷たさは伝わるでしょうね。


「そこまで私を目の敵にしたいなら……いいわ。決闘で決めましょう?完膚なきまでに潰してあげる」


プライドが高い人間はボッコボコにしてやるのが最適だもの。

……………もっとも、相手のプライドが傷つくように……ね?


『わたくしにそんな不敬な口を利いていいとでも思ってるのっ⁉︎』

「なら、婚約者がいる男性に不必要に近づいて、媚びを売るのはいいことなの?はしたない人ね」

『っっっ‼︎』


扉の向こうで王女が息を呑む気配がした。

しかし、プライドが高い彼女は反論する。


『そんなことないわっ‼︎ルイン様だって親切に接して下さったし……よく見つめ返してくれたわっ‼︎そうするのは、わたくしに気があるからでしょうっ⁉︎』

「いや、それなりの対応をしたのは貴女が王族だからですけど。見つめてないです、睨んでました。後、俺はシエラを愛しているので貴女に微塵も興味がありません」

『えっ⁉︎』


ルインは私を背後から抱き締めながら、そう告げる。

そこでやっと……私は扉を開いた。

目の前には護衛騎士を二人連れた……悔しさに顔を歪ませる王女の姿。

私はそんな彼女を嘲笑った。


「勘違いもそこまでいくと逆に憐れね」

「なぁっ⁉︎」

「で?ルインが欲しいのは私が憎いからでしょう?私から全てを奪いたいからでしょう?なら、貴女の小さいプライドのために付き合ってあげるわ」


挑発すれば彼女は乗る。

だから敢えてキツい言葉を言えば、ほらこの通り。


「わたくしをコケにするのも大概になさいっ‼︎決闘で叩きのめしてあげるわっ‼︎」

「えぇ。聞きましたわね、護衛騎士のお二人。これで貴女は逃げられないわ」


………よし。

これで決闘という名の、観客が沢山いる見世物でプライドをバッキバキに折ってやれるわ。

人前で敗北したら、しばらくは立ち直れないでしょうし。


「では、三日後の正午。会場は学園の訓練場にて。異論はありまして?」

「ございませんわ、覚悟しなさいっ‼︎シエラ・ジキタリス‼︎」


王女は小物っぽい台詞セリフを残してその場を後にする。

後ろから抱きついていたルインはそれを見て、呆れたような溜息を吐いた。


「シエラ〜……敢えて煽ったでしょ〜?」

「勿論。プライドが高い人間は挑発すると簡単に乗ってくれて楽だわ」

「俺がキレるより先にシエラがキレたから……逆に冷静になっちゃった」

「そうなの?」

「そうなんです」


ルインはクスクス楽しそうに笑いながら、扉を閉める。

どうやら私の意図に気づいているみたいね。



「決闘なんて公の場で潰されたら、あの女、もう立ち直れないかもね?」



そして、とっても嬉しそうに言うのね。

まぁ、多分そうなるでしょうけど。


「私のルインに手を出そうとしたんだもの。後悔もできないほどに……潰すわ」

「そういう黒い一面シエラも大好きだよ」

「………腹黒い所も好きなんて変な人ね」

「ふふふっ……シエラを構成するものはなんでも好きだからね。その髪も、瞳も、肌も、顔も、性格も……臓物の一つまで全部好き」

「私も大好きよ、ルイン」


ちょっと最後の臓物たんごは驚いたけど。




その後……私達は、王女のことなんてさっぱり忘れて、久しぶりの逢瀬を満喫した。









ちなみに……王女が泣きそうだったのは、目を潤ませていたから。

睨んで動かなくなったのは、ルインの美しい顔に見た目返されてると思い込んでいたから。

暴走系ポジティブ王女ですね‼︎


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