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第1話 情報解禁って親密度が上がってからの話じゃないんですか?


楽しんで読んでもらえたら幸いです‼︎

よろしくどうぞ‼︎







暖かな日差しの下。

絢爛豪華な王宮の森の中。


名も知らぬエルフさんにプロポーズしました☆





「えっと……はい?」


目の前にいる黒髪イケメンエルフさんは、困惑顔を浮かべつつ……若干頬を赤くしている。

私もそれにつられて頬を赤くしながらもう一度言った。


「私の旦那様になって欲しいのです。貴方の子供を産みたいんです」

「……………えっ⁉︎」


エルフさんは、今度は疑いようもなく林檎みたいに真っ赤になった。

照れ顔さえも眼福だわ……。

いや、だってね?

だってこの方、エルフだからすっごく綺麗な顔をしているんですよ。

あ、ちなみに……このファンタジーな世界、普通にエルフや獣人やらいらっしゃいます。

精霊がいるくらいだから当たり前だよね‼︎

※イケメンさんが目の前にいるので、テンションが少しおかしくなっております。

本当は、どうして火傷を負って死にかけてたとか詳しく聞いた方が良いんだろうけど、今はそれよりもこの人をゲットする方が先だよね‼︎

軍部に所属して、そして軍部近くで大火傷を負い倒れていた……只事じゃないし。

まぁ、そこは親密度がアップしてから教えてもらおうっと。



「えっと……かっ…可愛い娘しゃんっ‼︎」

「…………っ‼︎」

「あっ、今のは噛んだだけですからねっ⁉︎ワザとしゃんと言った訳ではないですよ⁉︎」


噛んじゃったことに恥ずかしそうに慌てながら、訂正するイケメン‼︎

なんか超絶な初心みたいで、母性本能がくすぐられまくってるんだけど……。

あぁ……胸がキュンキュンする……。


「可愛いだなんて……ありがとうございます。私はシエラ・ジキタリスと申します」

「あぁ……精霊がよく話してくれるジキタリス伯爵家のご令嬢ですか。申し遅れました、俺はルイン・エクリュと申します。軍部所属の二等兵です」

「………ルイン、様……」

「様付けなんていりませんよ、シエラ様。俺はただの一兵卒です」


名前さえも爽やか……。

胸のトゥンクが止まらない……。

というか、精霊の声が聞こえるってことはこの人も強力な精霊術が使えるのかも。



あ、ついでに説明しておくと……この国、近衛騎士団と精霊術師団、軍部という三つの軍事力を有している。

近衛騎士団は王族の護衛をしていて、精霊術師団は精霊術の研究・軍事行動への参加……軍部は完全に国家防衛や戦争などの軍事行動専門って役割になってる。

あ、ちなみに……王宮敷地内では王がいる建物を中心にして、三角形になるように騎士団、魔術師団、軍部の建物がある。

まぁ、色々とツッコミたいけど、ここらへんはご都合主義だから深く考えちゃ駄目だよ?


「えっと……シエラ様、失礼ながら申し上げさせて頂きます」

「………はい」


ルイン様は急に真剣な顔になって私を見つめてくる。

え?何?もしかして、受け入れてくれる?



「俺みたいなおじさんに冗談でも、夫になって欲しいなんて……言ってはいけませんよ」



………と、期待した私が馬鹿でした。

えぇ、まぁそうですよね。

初対面の少女にそんなこと言われたらそう反応するわ。

おじさんって……まぁ、確かに歳上だろうけど、見た目十八歳くらいなんですよ⁉︎

美青年なんですよ、貴方‼︎

精神年齢三十代の私には関係ないです‼︎


「私は冗談で言ったつもりはありません」

「………え。」

「それにこんなに格好いい貴方をおじさんだと言うのは、全世界のおじ様方に喧嘩売ってますわ」

「いや、あの……」

「例えおじさんだとしても、貴方は素敵な殿方です」


顔を真っ赤にしているルイン様。

褒められ慣れてないんだねっ‼︎



「私を直ぐに好きになってとは言いません。どうか、私のことを知って下さいませ」



男の人にしては華奢な手に私の手を重ねて、微笑む。

ルイン様ったら、顔を真っ赤にして狼狽してるね‼︎

可愛いよ……。


「いや、あの……」

「私はまだ小娘ですが…あと七年……いや、五年もあれば淑女レディとして見た目だけでも相応しくなると思います。ですから……」


必殺・頬を赤らめての上目遣い。

自分シエラの見た目が可愛いからできることだよね。



「私のこと、考えていただけませんか?」



何かを考える前に落とし込む‼︎

そう決めて私が更に口を開こうとしたら……。



『素直になれば良いのに〜』



「「っ⁉︎」」


いつの間にか、私達は凄い数の精霊に囲まれていた。

彼らはニマニマと笑いながら、私とルイン様の周りを飛ぶ。


『ルインだって、シエラのこと好きでしょ〜?素直にお嫁さんにしたら良いのに〜』

「ちょっ、お前らっ……」


ルイン様がその言葉に顔を真っ赤にする。

あ、やっぱり?

私の好みドンピシャなルイン様も、私のこと好みだったんだね。


『何がダメなの?』

「………俺はただの二等兵だよ。この方は伯爵令嬢だ。身分の差がある」

『それって人間族のルールだよね?ルインには半分しか関係ないよね?』

「……………うぐっ……」


ルイン様はなんとも言えない複雑そうな顔をして目を逸らす。

いや、確かに貴族身分は人間族が作ったルールだけど……この国、一応多種族国家だからルイン様も完全に当てはまるんじゃ?

何故半分?


「でも、王族がシエラ様を囲い込もうとしてるだろっ⁉︎」

「あー……やっぱりですか……」

「あっ、すみませんっ……」

「気にしないで下さいませ。この国は私の力を懐に入れておきたいのでしょう?」


この国としては王太子であるクリストファー殿下と婚約させて、婚約という名の契約を利用して、私が国を裏切らないようにしたいんでしょうね。

クリストファー殿下にも強力な味方ができるものね。


でもね?ルイン様。



「でも、私、クリストファー殿下の顔、好みじゃないんですよね……ルイン様みたいな爽やかな男性が好みでして」



「…………えっ⁉︎」


ルイン様は再び顔を真っ赤にして狼狽する。

いや、まぁ……殿下の顔もイケメンっちゃイケメンなのよ。

どちらかというと王子様オーラ満載な感じの凛とした感じの。

でもルイン様の方が私の好みで。

っーか、前世といえど画面越しに殿下とアイラの濡れ場エロいシーンを見ちゃったんだもん。

気まずいし、ちょっと……。



いや、かなり無理。



「シエラ様……ですが、何も持たない俺よりも殿下の方がよろしいと思います。俺は……こんな見た目ですし、ハーフエルフですし」


でも、そんな私の心境を知らないルイン様はそう言ってくる。

………いや、ハーフエルフとか気にしないし。


「………私は、貴方の見た目が好きです。というか、精霊達に私好みの男性とお願いして、ルイン様の元へ連れて来てもらったのですよ?」

「………ですが…俺はもう二十八歳ですし…」

「種族の問題や、年齢の問題なんて紙に包んで捨ててしまえばいいんです。気づいてないかもしれませんが……一目惚れとは言え、好きな男性に他の男を薦められるのはツライんですよ?」

「…………っ…‼︎」


あぁ、ツライですよ。

一目惚れした人に、好きでもない男をオススメされるのは。

でも、ただでは転ばぬのが信条なので。

ルイン様に目を向けてもらうためなら、なんでもしてやります。


「一目惚れなんて言っても私は子供ですので信じてもらえないと思います。それでも私はこの気持ちに嘘がつけないんです」

「………えっ…と…」

「ルイン様が私のこと、知らないからなんとも言えない気持ちになっているだろうことは察しています。ですが、私が貴方のおそばにいることをお許し願えませんか?」

「………っっ〜‼︎」


ルイン様に視線を向けてジッと見つめる。

彼は言葉を詰まらせて……顔を真っ赤にしている。

あー…これで駄目って言われたらどうしよう……。

ちょっと内心泣きそうになっていたら、精霊達が再びふわふわと周りに集まっていた。


『大丈夫?泣きそうだよ?』

(……いや、本当に泣きそうだから……いきなりこんなこと言ったら、警戒するよねーとか、私が子供だから相手してもらえないよなーとか考えたら泣きそうになってるだけだから……)



『シエラ、大丈夫だよ‼︎ルイン、シエラのこと、誰にも・・・渡したくない・・・・・・くらいに好きだから‼︎』



「え?」

「あっ、コラっ‼︎」


精霊達がケラケラ笑いながら教えてくれる。

私は目を見開いて、キョトンとしてしまった。

え?


『本当は今直ぐ自分のものにしたいはずだよ〜』

『そーだよ、ボク達と同じなんだから〜』

「お前達、何暴露してんだっ‼︎」


ルイン様は慌てて精霊達の口を塞ごうとするけど、それは敵わない。

彼らはするりとその手を避けて、更に教えてくれた。


『ルインはね、エルフと精霊のハーフなんだよ〜。だから、ボク達の家族なんだ‼︎』

『そう〜。精霊ボク達は普通に接してるけど、エルフ達はルインに冷たかったんだよ〜。あの火傷もエルフにやられたの〜。ボク達には優しいけど、ハーフとか嫌うから〜。だからね、恋慕を向けられて困惑してるの〜』

『でもね?精霊でもあるから、シエラのこと、嫌いにはならないよ‼︎ううん、というか……ルインも一目惚れしたのに、なんでそんなこと言ってるか分からない‼︎』

「何サラッと人の秘密を教えてるんだよっ‼︎そして一目惚れっていうのをバラすなっ‼︎」

『ルインよりもシエラの方が好きだから〜』


あの……好きだからってかなーり重大な秘密をサラッと教えちゃ駄目だと思うの。

うん。それも内容がかなり重いのもあったからね?

普通、そういうのって親密度が上がってから教えてくれるもんだよね?

いや、別にテンプレ展開は望んでないからいいけど。

っーか、あの火傷はエルフの所為なのね……許すまじ。

後………ルイン様…最後の一言で私に一目惚れしたの、肯定してますからね?


「なんでお前達は簡単にそうっ……」


ルイン様も流石に秘密の暴露は嫌だったみたい。

でも、精霊達も黙ってない。


『ルインが悪いんじゃん‼︎シエラのこと、好きなのに素直に言わないから……』

「いや、でも……初対面の人にいきなり好かれたら、怖いだろ⁉︎」

『何言ってるの〜?シエラもルインが好きだって言ってたじゃ〜ん』

「あぁ、どうしてお前達はそんな楽観的なんだよ‼︎」


そんなふうに考えていたら、いつの間にかルイン様は周りにいる精霊達とギャーギャー言い合いを始めてしまった。

そんな男らしい一面もあるんだね……ちょっとぶっきら棒なところも好き……。

胸をときめかせて彼を見つめていたら、側に来た別の精霊に言われた。


『シエラ、あともう一押しなの』

「もう一押し?」

『シエラの言葉にぐらぐら揺れてるの。ずっとハーフということで苦しんでたから、種族なんて関係ないって言われて、ルインの嬉しいって感情がボク達にバンバン伝わってるの』

「あっ、お前っ‼︎何勝手に言ってるんだよっ‼︎止めてくれっ‼︎それ以上、俺のなけなしのプライドを削らないでくれっ‼︎」


ルイン様は顔を真っ赤にして、両手で顔を覆ってしまった。

閉鎖的で選民意識、自尊感情プライドの高いエルフだから……ハーフってことで嫌われてたってことだよね。

それに怪我を負うくらい追い詰められてたのに……。



………私だったら……。



「ルイン様っ……」


私は我慢できなくなって彼に飛びついた。

この人がどんなに嫌な思いをしていたのか。

それを考えるだけで涙が出る。

だって、差別ってツライから。

一緒にしちゃ悪いけど、ブラックな企業では毎日毎日、可愛い子ばっかり楽して私みたいなオバさんは理不尽ばっかり。

ルイン様からしたら、本当に一緒にするなって話だとは思うけど……他の人と違う扱いをされるのって、ちょっとずつ心が傷つくんだよ。

それが最後には大きな傷になるんだよ。

ルイン様の存在価値が否定されるような人生なんて、私よりも酷過ぎる。

ポロポロと勝手に涙が溢れてしまう。


「シエラ、様?」


あぁ、嫌だ。

ルイン様が心配してるのに、涙が止まらない。


「シエラ様……」

「うぅぅぅ……ごめんなさいぃぃぃ……泣きたいのはルイン様なのにぃぃぃ……私が泣いてるぅぅ……」

「…………俺、が…泣きたい……?」

「うわぁんっ‼︎この人、自分が傷ついてるのに気づいてないぃぃぃっ‼︎馬鹿じゃないんですかっ‼︎そんな顔してっ‼︎」


馬鹿だよ、ルイン様。

そんな今にも泣きそうな顔をしてるのに分かってないなんて。

いや、認めたくなかったのかな。

弱いところを認めてしまうと、立てなくなるから。

私は大丈夫だって言い聞かせないと、頑張れなかったから。

でも、そんなの私が許さないから‼︎


「ひっく……ルイン様ぁ……」

「…………」


あぁ……上手く言葉にできない……。

精神年齢三十代の私よ、肉体年齢に若干つられてるな?

本当なら泣かずにかっこよく慰めてあげたかったのに。

子供っぽ過ぎて余計に泣けてくる。

でも、ルイン様にはこれで良かったみたい。


「………あぁ……もぅ、好き……」

「きゅぅ……」


蕩けたような甘い顔で微笑みながら、ルイン様は私を抱き締める。

変な声と共に思考回路が停止したのは、〝好き〟と言ったその声の熱に溶けそうだったから。

触れ合う温もりが、余りにも心地良かったから。

私の頭が彼の胸に触れて……その奥から聞こえる心音が、速かったから。



「…………俺……今まで、そんな風に俺のために泣いてもらったことがなかったから……貴女みたいに可愛い子が俺のために泣いてくれたら、イチコロですよ?」



耳元で囁かれる掠れた声に、身体中の血が沸騰しそうで。


「ねぇ、シエラ様。貴女がそこまで俺を望んでくれるなら、俺は我儘になってもいいですか?貴女を手に入れたいと思ってもいいですか?」

「………思って、欲しいです」

「…………さっきまで、俺は他の男を薦めていたのに。シエラ様が俺を望んでくれるから……簡単に手の平を返して、貴女が欲しくなってしまいました」


自分でもチョロいなと思います、とルイン様は困ったように笑って私の頬を撫でる。


「ル…ルイン様……」

「でも、貴女はまだ若い。そして、精霊に愛される姫だ。それを踏まえると、将来のことに関しては沢山の可能性があります。俺と結ばれたくても、周りがそれを許さないかもしれません」

「そんなことありませんっ‼︎」

「あり得ることですよ。現に、貴女は今日、王妃様方とお会いしていたでしょう?」


……確かに、あれは婚約者候補としての顔見せの意味合いもあったと考えられる。

……というか、なんで知ってるの?


「ルイン様……なんで、私が王妃様達と会ったと……」

「あ……すみません。精霊達に教えてもらいました。ごめんなさい、個人情報漏洩ですよね」

「ルイン様に知られて困ることなんて何もないので、大丈夫です」


でも、私は殿下の婚約者なんて嫌だ。

婚約者になるのなら、ルイン様がいい。



「私は貴方がいいです」



涙を零しながら懇願すれば、ルイン様は蕩けるような甘い笑顔を浮かべてくれて……。




「なら、まずは友達以上恋人未満から始めて……これからは俺達の未来のために頑張ってみませんか?」





そう言って、額に優しくキスをしてくれた。






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