第14話 腹黒の次はブラックモード発動
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僕、ジャックス・オブライエンは、ルイン・エクリュ侯爵の爵位授与式で思った。
ドラゴンを単独討伐するほどの戦力。
人ならざる美貌。
そして、今回の討伐の褒美として与えられた中佐という軍位と侯爵という爵位。
彼と王家が繋がりを持てば、エディタ王国は安泰だと……。
だってそうだろう?
王家と繋がりがあったら、この国から逃げることができなくなる。
姫君を妻にしておきながら、国を捨てて逃げたとしたら糾弾されるからね。
だから、兄上……つまり国王陛下が、たかが強い精霊術が使える程度の伯爵令嬢を婚約者とするなんて、信じられなかったんだ。
それも……二人が相思相愛で、無理やり離したら駄目だとか関わるなとか言うからさ?
兄上が動かないなら、この国のために僕が代わりに動いてやろうと思ったんだ。
普通の男なら王家の姫君を妻にと言われたら、喜んで受け入れるだろう?
だって、そんだけ箔がつくんだし……王家との繋がりができるんだから。
だから、年齢的にクリストファーの妹姫を妻に……と言ってみたら……うん、その時にやっと兄上の言葉の意味が理解できたね。
エクリュ侯爵は、この国なんてどうなってもいいんだ。
彼が最優先するのは、シエラ嬢で。
彼女が傷つくならそれこそ…この国を……。
………うわぁ…考えただけで鳥肌が……。
というか、兄上……。
こんなにヤバイ人ならもうちょっと説明くれたっていいんじゃないかな?
というか、なんで未だに軍部に所属してくれてるかも分からないんだけど?
あ、シエラ嬢がこの国にいるからか?
シエラ嬢との暮らしのためか?
ってことは、彼女次第ではこの国とか簡単に出て行きそうなんだけど……?
………兄上はそれを分かってたから下手に関わるなと言ってたのかな……?
………ありえる…。
下手に関わって、彼らがいなくなったらそれこそ損だ。
ドラゴンスレイヤーがいるというだけで、他国への牽制とか有用性があるからね。
それ以上は望んじゃいけないと分かってたから、僕にそう言ったんだ……。
それに……今の会話からもシエラ嬢がエクリュ侯爵の暴走を止めてくれてるみたいだし……二人を離そうとしたり、下手に関わろうとしたら逆にこっちが死ぬ。
というか、二人と話すだけで滅亡展開に繋がる可能性があるとか怖すぎる。
よく兄上、こんな怖い人達と普通に会話してたなぁ……。
……………うん…とにかく。
この僕の行動が反面教師になって、この場にいる者達は馬鹿な行動をしなくなるだろう。
と思ったんだけどねぇ……。
*****
「決闘しろっ、ルイン・エクリュ‼︎」
シィン…………。
響いた声で静まり返ったダンスホール。
私はその声の方にゆっくりと振り返った。
そこにいたのは、褐色の髪に濃紺の瞳を持つ少年(?)。
顔は整ってるけど、私と同い年くらい?
………というか……この人、誰?
「………えーっと…」
ルインも流石にこの子を知らないのか、険しい顔をしている。
すると、公爵様が顔面蒼白で彼に話しかけた。
「ジェームズ君⁉︎一体、どうして決闘なんてっ……」
「どうしてっ⁉︎そいつがオレのシエラを横取りしたからだっ‼︎」
「シエラは俺のだよ?何言ってるの?死にたいの?」
「私は初めからルインのモノですわ。貴方のモノとか気持ち悪い」
一瞬だけルインから負のオーラが出たが、彼の腕に抱きついてソレを収める。
周りの人達が恐怖に凍りついても、私達はそんなの気にならなかった。
だって、それよりも腹立つことをこの子が言ったんだもの。
私がいつ、この知らない人のモノになったのよ。
私はずーっとルインのモノだわ。
しかし……ルインの負のオーラに気づかなかったらしい彼はプルプル震えて私達を指差す。
そして、怯えることなく激昂した。
「オレは公爵家の嫡男ジェームズ・スレイサーだぞっ⁉︎元々、オレがシエラに婚約を申し込んでいたんだっ‼︎なのに貴様が横取りしたんだろうがっっ‼︎」
………婚約を申し込んだ???
……あぁ、お父様が仰ってた公爵家からの婚約申し込みってこの人なのね。
というか……ジェームズ・スレイサー?
「あ。この人、攻略対象だわ」
「えっ⁉︎」
小声で呟いたら、ルインも小声で驚いていた。
俺様キャラで唯我独尊みたいな性格してたけど……ヒロインのアイラと関わることで改心していくシナリオだったかしら?
でも、私とは婚約関係とか何も関係なかったはず……どういうこと?
「ジェームズ君、止めなさい。彼はドラゴンスレイヤーだ。君では勝てない」
「オレは剣と攻撃系の精霊術が得意なんだよ‼︎負けるはずないだろうっ⁉︎」
いや、それでも普通にルインが勝つわよ?
だってルインは精霊術が使えない間は剣だけでなんとかしてきたし……今は私よりも強い精霊術を使えるんだもの。
万が一にも勝てる要素がないわ。
言い合いをする公爵様と彼の会話を見ていたら……ルインが不思議そうに首を傾げた。
「……うーん…?なんか、いつもだったらシエラを奪おうとする奴は本気で殺そうとか思うんだけど……いや、一応殺意は抱いたんだけど……」
「…………えぇ」
「なんかあの子が馬鹿そうだからか、子供っぽ過ぎるからなのか……相手にするのが馬鹿らしくなるね?」
「ぷぷっ……‼︎」
思わず口元を押さえてサイレントモードで笑う。
いや、だって笑っちゃうでしょう?
………ルインのヤンデレセンサーが匙を投げるほどに相手にされてないんだもの……。
というか、あの子の場合、ひよこがピヨピヨ文句言ってる程度にしか見えないから?
「……あぁ、分かったよ。なんで今回は殺意弱めなのか」
「どういう理由なの?」
「うん。やっぱりあの子が幼いからかなぁ…って」
「幼い?」
ルインは色っぽい微笑みを浮かべて、私の頬を撫でると、ゾクッと……背筋に甘い痺れが走る。
熱い吐息を漏らしながら、彼を見つめた。
「まず言動が幼いでしょう?それにシエラを欲しがるのも玩具としてじゃないかな?」
ルインの言葉を肯定するように精霊達が『お子様みたいなの〜』とか『シエラが欲しいのも強い精霊術師だからなの〜』とか、『強い武器とか玩具とか欲しがる子なの〜』とか教えてくれる。
いつもお世話になってるわ、精霊情報局。
「となると、子供の戯言としか思えないんだよ。まぁ……それでも?シエラを玩具感覚で手に入れようとするのに殺意は湧くけど。あんな小さな子供にも嫉妬するような、狭量な男でごめんね?」
「……ううん。嫉妬してくれるってことは、ルインが私だけでいっぱいになってくれてるってことでしょう?それだけ私のことが好きってことでしょう?嬉しいわ」
恍惚とした気持ちで彼を見つめる。
それだけでルインも幸せそうに微笑んでくれて……。
「うん……シエラ、大好きだよ」
「私も大好きよ、ルイン」
「俺の方が好きだよ?愛してる」
「私の方が愛してるわ。ずーっと…私の愛しい人はルインだけよ」
互いに幸せな理由で競い合って、「「ふふっ」」と笑い合う。
二人で見つめ合って、蕩けるような笑顔を浮かべて……指を絡めて寄り添い合って……。
あぁ、こんな場でなかったら、今すぐキスをするのに。
……と、公爵様達を放置してたら、またひよこが叫んだ。
「貴様っ‼︎何、シエラとくっついて……」
「婚約者だからくっついてても普通だよね。というか、決闘だっけ?受けてあげてもいいよ?」
「なぁっ⁉︎」
ルインの返事に驚いたのは公爵様の方で。
顔面蒼白通り越して土色になり始めている。
ルインはクスクス笑う。
その笑顔は、背筋が凍るほどに……冷たかった。
「でも……決闘を申し込んだ以上、死ぬのはほぼ確定だからね。ちゃーんと遺書を書いておくんだよ?」
「…………へ?」
………ぶわりっ。
ひよこの顔から滝のような冷や汗が出る。
うわぁ……ルインったらとっても器用ね?
ひよこだけに殺意を向けてるけど……巻き添え食らうだろう周りの人達には精霊術で恐怖耐性つけてるんだもの。
「できるだけ手加減するだろうけど、その手加減でさえ死ぬ可能性が高いんだよ。だから、遺書、書いておいてね。若くして先立つ不孝をお許し下さいってヤツ」
「……………」
「大丈夫。死ぬときは苦しまないようにしてあげるからね」
その声は淡々と。
ただ事実だけを述べていて。
そしてその笑みはどこか凄みのある冷酷なモノ……。
……ヤンデレルインとはまた少し違うブラックルインに胸がときめいちゃう……。
「ぁ……ぁ……」
ひよこはガクガクと震えて、後ずさる。
それを見てルインはブラックモードを解除して、ニコッと優しく微笑んだ。
「あはは、冗談だよ?でも、相手の力量を見極めないと早死にするから気をつけた方がいいよ?」
ルインがクスクスと笑い、舞踏会はなんとも言えない空気になる。
まぁ、ひよこが絡んでくるのが悪いのよ。
まぁ、そんなこんなで?
こんな空気の舞踏会にやって来た国王陛下は……。
「我が来る前にもう既に問題が起きているとは何事なんだ……」
と、ただの舞踏会のはずだったのに、無駄に色々と起こったことに溜息を零していたわ。




