第13話 腹黒モード発動
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ですが……風邪引いたので、もしかしたら明後日の更新はないかもしれないです。
更新できたらいいな……取り敢えず、風邪を治すために頑張ります‼︎
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その日、国王主催の爵位の授与式と舞踏会が開かれた。
爵位を与えられるのは、この前、王都に現れたドラゴンを単独討伐した軍部所属のルイン・エクリュ。
ドラゴン討伐という偉業は、それ相応の褒美が与えられる。
彼は階級を中佐まで昇進することになり、侯爵の位が授与されることになった。
王宮のダンスホールに現れたエクリュ中佐は、それはとても美しい青年で。
艶やかな漆黒の髪、薔薇のような真紅の瞳。
中性的な顔立ちに、軍服を着たその姿は令嬢だけでなく、貴族達さえも魅了していた。
貴族令嬢達は、彼の気を引こうと色めき立つが……それは叶わぬ夢となる。
何故なら……その隣には既に、美しい少女がいたのだから。
*****
シャンデリアの光が煌めく豪奢なダンスホール。
着飾った人々がいても、誰も彼には敵わない。
だって……私には隣に立つルインが一番イケメンなんだもの。
私はエスコートをしてくれている彼に、見惚れていた。
「どうしたの?シエラ」
私が見惚れると分かっているのに聞いてくる。
ちょっと悪戯っ子みたいな顔も好き……。
「ルインがイケメンなんだもの……誰よりも格好いい……」
「シエラも凄く可愛いよ。誰よりも、一番可愛い。そのドレス、とっても似合ってるよ」
「ルインが選んでくれたんだもの。似合ってるに決まってるわ」
「そうだね」
ルインは幸せそうに微笑んでくれる。
今日の私は、白のレースフリルで装飾されたローズピンクのドレスを着てます。
えぇ、ルインからのプレゼントです。
余り派手ではない品の良いドレスで、とっても素敵なんです。
あ、ちなみに……このパーティーの所為で、精霊王に拉致られた日から余り会うことができませんでした。
パーティーの主役だから、準備が大変だったみたい……。
午前中に行われた授与式で、ルインは貴族の仲間入りをした。
その時、私が婚約者になることも国王陛下から発表されたらしい。
私は当主じゃないので参加できなかったから、聞いた話なんだけどね。
軍部所属の貴族は、軍部所属中は領地は与えられないらしい。
まぁ、軍人なのに領地経営とかであっち行ったりこっち行ったりとかしてたら大変だものね。
急に戦争とかになったら困るし。
だから、軍部所属中は爵位に値する給料を与えられる。
軍部を辞めたら領地を与えられて、領地経営から収入を得る……っていうシステムらしい。
これって前世の世界でもそうだったのか分からないんだけど、この世界(というか、国)はそうらしいのよねぇ。
随分、都合がいいわよね。
あ、ゲームの世界(または類似した世界)だからかも……。
まぁ、とにかく。
身分差などの問題が解決して、国王陛下からも婚約の許可を頂きましたから、今度こそお父様も反対することなく婚約を許してもらったわ。
つまりっ‼︎私とルインはちゃんとした婚約者になったのです‼︎
なのに、久しぶりに会ったのがこのパーティーなので余りイチャイチャできてないのよ……。
「なんかご機嫌斜め?」
「このパーティーの準備の所為でルイン、忙しかったでしょう?だから、全然一緒にいられなかったから……」
「……うん。そうだね……でも、今後は少し楽になるだろうから、沢山イチャつけるよ?」
………そうよね。
結婚するんだし、これからもっとイチャつけるはず‼︎
ルインに甘えるように、彼の腕に抱きついた。
「ふふっ、ルイン……大好きよ」
「俺も大好きだよ、シエラ」
……とまぁ、二人だけの世界を作っていたら、いつの間にか側にいた男性がクスクスと笑っていた。
金髪碧眼の、貴族然とした青年だ。
「何か?」
ルインが冷たい声で彼に声をかける。
しかし、彼は気にする様子もなく首を振った。
「いや?陛下が君達の婚約を宣言したけど、エクリュ侯爵は優良物件だからね。シエラ嬢を押し退けて婚約しようと目論んでた貴族達が、君達のイチャつきに負けて険しい顔してるから面白くて」
そう言われて周りを見ると……確かに凄い顔をしている。
なんか砂糖を吐いたような顔とか……凄い悔しそうな顔とか……まだ諦めてない顔とか。
え?何これ?
「え?なんであんな顔してるんだろう……?」
ルインがきょとんと首を傾げる。
うわぁ、その顔も可愛いわ。
「あははっ。君達のイチャイチャに中てられたんだよ。面白いね」
というか、この大爆笑している人は誰?
彼は「あぁ、忘れてた」と胸元に手を添えた。
「初めまして。僕はジャックス・オブライエン。公爵家当主……王弟だよ」
「……はぁ。ルイン・エクリュです」
「シエラ・ジキタリスですわ。よろしくお願い致します」
「あれ?王弟って言ったのに反応その程度なの?」
いや、だって王弟言われても興味ないからどうでもいいというか……。
ルインも困ったような顔になった。
「いや、俺、王弟とか興味ないんで」
「………ぶふっ‼︎素直過ぎるでしょ‼︎」
いや、まぁそうよねぇ。
それ言ったらルインは精霊王の息子よ?
ある意味、半神だから……王弟なんて敵でもないわよ。
「ちなみにさ。クリストファーの妹姫が君に惚れてるらしいんだけど、妹姫を娶る気はない?」
しんっ……。
この人の声は無駄にダンスホールに響いて、一瞬で会場が静まり返る。
…………っていうか、私がいるのに他の女を紹介するとかふざけてるの?
「オブライエン公爵」
「ん?何かな、エクリュ侯爵。あ、もしかして妹姫を娶ってくれー」
「死にますか?」
ぞわりっ……。
背筋が凍りそうになるほどに冷たい声。
この男、やらかしたわ……。
「俺はシエラを愛してるんです。俺とシエラの邪魔をするヤツは……たとえ、王弟だろうと殺します」
「………っ…‼︎」
闇の粒子が足元で蠢き、《穢れの王》化し始めるルイン。
そして再びの精霊達のSOS。
『シエラ〜っ‼︎早く抑えて〜っ‼︎』
『世界がぁぁっ‼︎歪むぅぅぅ‼︎』
はいはい、分かってますよ〜……。
私は闇に包まれつつあるルインの身体に抱きついた。
「ルイン、落ち着いて?」
「落ち着いてるよ、シエラ。大丈夫。今すぐ、この邪魔な奴を殺すから……」
「それは落ち着いてると言わないのよ?」
頬に両手を添えて、至近距離で光を宿さない濁った瞳を見つめる。
……闇堕ちルインも、これまた違った一面なのよねぇ。
どんな彼でも好きだわ。
「他の人に私以外の女を娶れって言われたって、ルインが選んだのは私なんだから関係ないわ」
「………ん」
「それに、まだ陛下と殿下にしか王族の方に会ったことがないでしょう?だから、いきなり妹姫様が惚れたって話が出るはずないでしょう?」
「…………あ…」
「多分、さっきの言葉は公爵様の意地悪よ?」
意地悪、なんて言葉で片付けたけど……。
いきなり人前でそんな話をしたんですもの、
目的があるはず。
ルインへ王族も唾をつけているという牽制か……それともルインの本性を炙り出すためか。
どっちかしら。
「さて、公爵様。このような場で私を捨てて妹姫を娶れとおっしゃった目的はなんでしょうか?返答次第ではそれ相応のお覚悟を」
言外に場合によっては精霊術の行使も厭わないと告げる。
公爵は自分が予想よりもヤバい者に手を出したと理解したのか……若干、動揺しながら答えた。
「………えっと……エクリュ侯爵とシエラ嬢がとても仲が良いと聞いてね。どれくらいなのかなぁ……って意地悪したくなったんだよ」
「まぁ。意地悪ですか……」
私は大袈裟気味に驚いて、それから大袈裟な溜息を吐く。
そして……にっこりと微笑んでやった。
「ご覧の通り、ルインは私のことになると、とーっても気が短くなってしまいますの。ですから、私を害そうなどと考えないで頂きたいですわ」
「………いや、うん……そうだね…シエラ嬢をエクリュ侯爵から離そうとしたら……死ぬね」
「死ぬだけで済めばいいんですけど……まぁ、最悪世界が滅ぶだけですわ」
『えっ?』
顔面蒼白になる人々ににっこりと微笑んで、ルインに抱きつく。
そうすればルインも、さっきまでのお怒りモードは消え去ってニコニコと抱き返してくれる。
〝世界が滅ぶ〟という単語以外は言わないでおくと、不安になるわよねぇ。
そんな腹黒モードを発動して私は、クスクスと笑った。




