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第10話 実質、夫婦になることが決定しました。


はい、沢山の方に読んで頂きありがとうございます‼︎

今後も頑張りますよ‼︎






前回の話。

ルインがドラゴンを殺したよ☆

で、サラッとイチャついたら、独身達が「恋愛したい……」やら「恋人欲しい……」やら悲痛な叫びを上げましたとさ。




と……ふざけるのはここまでにして。

私とルインは、そんな独身達の悲痛な声を聞きながら、王宮に強制連行された。

まぁ……そうよね?

さり気なくルインってばドラゴンを単独討伐したんだもの……呼び出すに決まってるわ。


でも、あの……。



王宮から来た馬車に一緒に乗ったこの人は誰なのかしらっ⁉︎



金髪碧眼の白銀の鎧を纏った美青年(まぁ、ルインの方がイケメンだけど)は、さっきからチラチラと私達を見ていて。

………まぁ、あのね?

チラチラと見られるのって、少しイラッとするのよ。

何か言いたそうにして、でも言わないってのも。


というか、本当にこの人、本気で誰なのっ⁉︎


私の苛立ちを察したのか、ルインは大きく溜息を吐いて……目の前の青年に話しかけた。


「…………先ほどから、何か仰りたいことでもございますか?クリストファー殿下」



クリストファー、殿下?



その名前を思い出すこと数秒。

私は大きく目を見開いた。

あぁ、思い出した‼︎この人、攻略対象だ‼︎

………興味がなさ過ぎて、すっかり頭から抜け落ちてたわ……。

ルインに声をかけられたクリストファー殿下は、それで決心したのか、真っ直ぐに私達……いいえ、を見つめた。


「この間ぶりだな、シエラ嬢」

「………………」


思わず黙り込む私。

それに怪訝な顔をした殿下は、静かに私の名前を呼んだ。


「シエラ嬢?」


はい、素直に白状します。

実を言うと……同じ学園に通ってはいるけど、この人に興味がなかったから全然記憶に残ってないの……。

だから、この間ぶりって言われても分からないのよ。

同じクラスだったかどうかもあやふやだし……。

ルインはなんとなく察したのか、ゆっくりと目を逸らす。

その横顔は、私に認識されていなかった殿下を面白がっているみたいで。

私は彼の足をちょん‼︎と足先で突っついた。


「どうかしたのか?」


殿下は黙ったままの私を見て首を傾げる。

…………あー…もぅ……面倒だわ……。

私はぶっちゃけることを決めて、口を開いた。


「失礼を承知で申し上げます」

「………ん?」

「ルイン以外の男性に興味がなくて、この間ぶりと仰られてもいつのことだか分かりませんわ」

「……………へっ⁉︎」


それを聞いた殿下はまるで石像のように固まる。

それを見たルインはとうとう我慢できなくなったのか……バイブレーションのように震えて笑っていた。

ちょっと、そんなに笑わなくてもいいでしょうっ⁉︎

笑うルインをジトーッと見つめると、彼はクスッと笑って私の手の甲を撫でた。


「ごめん、ごめん……だって。シエラ、そんなにも俺のことだけを見ていてくれたのが……嬉しくて」


蕩けるような声と視線に、私の頬が熱くなる。


「…………あぅ…」

「ふふっ、先までの大人っぽいシエラも良いけど……こうやって俺の言葉一つで真っ赤になるシエラも可愛い」


ルインはそう言って私の頬にキスをする。

私もお返しとばかりに彼の頬にキスをして……。


固まる殿下とキスし合う私達。

なんともシュールな絵面で、私達は王宮に向かった……。





*****




呆然として魂の抜け殻状態の殿下は、王宮に着くなり何人かの青年達に連れて行かれた。

多分、私の所為なんでしょうけど……興味がないから放置するわ。

そして、流石に血塗れ状態の私達(私はルインに抱き着いたため)は、精霊術で身なりを整えさせられて……謁見の間に通された。


王座には少し老けた国王陛下。

その背後には総帥と女男……未だに呆然としている殿下。

そして……周りには重臣らしい人達がズラリと並んでいた。


「顔を上げよ」


跪いて頭を下げていた私は、その声に顔を上げる。

陛下はなんとも楽しそうな顔をしてルインを見た。


「ルイン・エクリュ小隊長」

「はい」

「まさか、このようなカタチで功績を挙げるとは思ってもみなかったぞ」

「はい、自分もです」


そう答えたルインに、陛下はケラケラと笑う。

流石に、そんな笑い方をする陛下は初めてで……私を始めとする周りの人々はギョッとしてしまった。


「いやぁ、すまんすまん。余りにも面白くてな」

「面白い、ですか?」

「あぁ。エルフ達がエクリュ小隊長を殺すために放ったドラゴンなのに、ソレのおかげで二人は結ばれることになるのだから……笑わずにはいられないだろう?」


それを聞いた女男は複雑そうな顔をする。

あんたの故郷がやったことだからね?

何かしらの制裁を覚悟してなさいよ……?

そんな複雑そうな女男の心境に、陛下は気づきながらも……声高らかに告げた。



「さて。ドラゴンスレイヤーという偉業を成し遂げたルイン・エクリュ小隊長には爵位を授け、階級を上げようと思う。反対の者はいるか?」



爵位ー。

やっぱり、私の予想的中ね。

今日のことはこの国にとっても大事件だったもの。

被害なしで……かつ単独討伐したルインに対して、それぐらいはするでしょう。

爵位を与えてでも、この国にいて欲しいでしょうし。

周りにいた重臣達から反対の声は上がらない。

陛下はそれに頷いて、再びルインに視線を向けた。


「異論はないな。では、エクリュ小隊長には侯爵の位を。また軍部における階級を中佐にまで上げよう」

「っ⁉︎」


流石のルインもそこまで厚遇してくれるとは思ってなかったのか、一瞬動揺する。

しかし、直ぐに頭を下げてそれに応えた。


「………はっ、光栄でございます」

「あぁ、そうだ。加えて、ルイン・エクリュ侯爵とシエラ・ジキタリス伯爵令嬢の婚約を認めよう。これは誰にも介入することを許さぬ」

「っ‼︎ルインっ‼︎」

「シエラっ‼︎」


それを聞いた瞬間、私はルインに抱き着いていた。

ルインもそれを受け入れてくれて。

国の偉い人達の前でも、私はその喜びを隠せなかった。

だって、王様が認めてくれたのよ?

つまり、この婚約に異を唱えるってことは王様に文句を言うってことだもの。

実質、もう私達は夫婦になることが決定したようなもの。

喜ばないはずがないわ。


「ありがたき幸せにございます‼︎国王陛下‼︎」


ルインがとても嬉々とした表情で陛下にお礼を言う。

そんな私達を見て、陛下はクスクスと笑った。


「ふっ……爵位や階級よりもそちらに喜ぶとは……相変わらず、仲睦まじいことだな。しかし、幸せな話はここまでだ」


………まぁ、そんな簡単に終わると思ってなかったわ。


「エルフ達について、話をしなくてはな」


エルフの里は、このエディタ王国の端にある。

一応、エルフの里は独立してはいるのだが……王国とは互恵関係と言えるのかしら?

国がするのは、隠れ里に近いエルフの里に対する他国への牽制や街に暮らすエルフ達の支援。

エルフ達は逆に精霊術師団として国の戦力に協力しているわ。

プライドが高いエルフがその関係に甘んじているのは、精霊術を使うことに特化していても、政治的手腕は何もないから。

そして、エルフは美しいがゆえに人身売買されやすい。

そんなことをされないよう、エディタ王国が守っているから……この国に協力的なのだとか。


しかし、そんなエルフ達がエディタ王国の王都にドラゴンを放った。

それは互いの関係にヒビを入れるようなモノよね。


「一応、シエラ嬢が制裁を与えたのだよな?」

「えぇ。エルフは一年間、精霊術を最低レベルにまで下げましたわ。最高でも、子供ができる家事手伝いぐらいの力しか出せません」


家事手伝いレベルって、それこそかまどに火をつけたり、手を洗う水をチョロっと出したりするぐらいね。

国王陛下はそれを聞いて、顎に手を添えた。


「………戦力減少、ではあるが……ルイン中佐がいるから問題ないか。まぁ、それは殺されかけた側の対処だ。流石に国としても対処せねばなるまい」


ルインを殺すために、ドラゴンは王都に来た。

でも、ルインはハーフエルフだから、エルフの里を追い出されてる。

そして、この国の住人として戸籍登録しているらしい。

だから、あのドラゴンはこの国の住人を殺そうとしたのと同然。

加えて、王都を攻撃すると言ったんだもの。

エルフがエディタ王国に戦争をふっかけたと見ても間違いはないわ。


「失礼ですが……陛下」

「なんだ」


そこで女男が陛下に声をかけた。

陛下は冷たい目で女男を見る。


「我々、王都にいるエルフは……ルイン様がドラゴンの生贄に選ばれたことを聞いておりませんでした。つまり、里の者の独断かと……」

「何が言いたい」

「………それはっ……」

「………まさかとは思うが……王都にいるエルフは助けてもらおうなどと、甘い考えはしていないよな?里にいようと王都にいようとエルフであることは変わりないだろう?」

「………っ…‼︎」


女男はそれに押し黙る。

自分達は助かろうと思っても甘いわ。

王都にいるエルフ達だって、ルインに怪我させたりしていたでしょう?

結局、貴方達も里のエルフと同じなのよ。

ハーフエルフというだけでルインを害そうとする、クズ。


「エクリュ中佐はどうするのがいいと思う?」


陛下は冷たい笑顔を浮かべながら、ルインに聞く。

彼の答えは決まっているのに。



「わたしの答えは、シエラを殺そうとした時点でエルフは皆殺しです」



ぞわりっ……。

背筋が凍りそうなほどに冷たい声。

ハイライトの消えた暗い瞳で笑うルインは、再びのヤンデレモード。

ガクガクと震え出した重臣達を見て、私は慌てて彼に抱き着いた。


「駄目よ、ルイン。怖い顔しないで?」

「………ん…」

「ルインが無駄に手を汚す必要はないの。そういうのは陛下にやってもらいましょう」

「………………分かった…」


それだけで彼の纏っていた闇色の空気は霧散する。

………そして漂う独特の匂い。

エルフゆえに殺意を直接向けられた女男が、ぺたりと座り込んで失禁してるみたい……。

どんまい、としか言えないわ。


「………と、わたしは安直な行動に出てしまいたくなるので、どうぞ奴らに対する処罰は陛下がお考え下さい」

「………あぁ…」


流石の陛下もルインのヤンデレモードに怯えたのか、狼狽していた。





これ以上ここにいたら、ルインがまた闇を放ちそうなので……私達はそこで去ることにした。







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