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第8話 ヤバいと思った時には手遅れです。


沢山の方に読んで頂きありがとうございます‼︎

急展開ですぞ。

この話はひたすら溺愛いちゃらぶ系なので、障害は早々に消え去りますぞ。


今後も頑張りますので、よろしくどうぞ‼︎






はい、シエラちゃん十三歳です。



最近、ルインが忙しいみたい。

その理由は簡単。

一年前に話していたルインの話……魔族の動きがなんか不可解らしくて、詳しくは話してくれないけど……警戒レベルを上げてるんだとか。

まぁ、裏方だから見回り回数を増やすとかしてるだけらしいけど。


あ、でも、第五部隊の役割の見直しはされました。

何が起きたって?

簡単に言えばルイン様、大激怒ですよ。

ついに第五部隊の人が倒れて……堪忍袋の緒が切れたルインは、書類不備が多くて脳筋な第一部隊、第二部隊(第三、第四は参謀とか情報部隊だから問題ないらしい)を実力(武力)で制圧。

そして次に書類不備とか出したら死より恐ろしい目に遭わすと脅したらしい。

えぇ……余りの暴れっぷりに王宮敷地隣にある学園で授業中だった私に救援要請が来ましたよ。

何事だと思ったよね、私も他の人(先生、生徒)達も。

最終的にもぎゅっと抱き締めて落ち着いてもらったよ。

正確に言うと、もぎゅっとだけじゃダメだったんで……キスとかキスとかキスとかで落ち着いてもらったわ。

えぇ、いつもよりねちっこくキスしましたとも。

婚姻してないから最後まではしてないけど、これ以上は私の羞恥心が死ぬから止めとくわ……。


まぁ、そんなこんなで。

ルイン大暴れのおかげでだいぶ仕事が楽になったみたいよ?

軍部内ではルインさんに逆らうなって感じになったらしいし。

つまり、ルインは地味に軍部を掌握する裏ボスになりましたとさ。









「うーん……疲れたぁ……」


いつも通りのランチタイムが終わった後。

そう呟いたルインは、私の隣で大きく息を吐いてベンチに座っている。

…………仕事内容は多少マシになったみたいでも、大変みたいね。


「大丈夫?」

「うん。他のとこと折り合いが悪いだけだから……大丈夫だよ。ここ最近、ピリピリしてるから……」


やっぱり魔族の活動が原因?

こんな感じじゃちょっと相談するのは厳しいかな……。

私は思わず視線を下げてしまう。


「………で?シエラは俺に話があるんでしょう?」

「…………え?」


驚いて彼を見ると、ルインは困ったように笑っていた。


「分からないと思ってるの?君は精霊に好かれてるんだよ?」

「………あ…」


そうよね。

ルインは精霊達の声を聞ける。

私が悲しんでいたり、悩んでいたら精霊達は勝手にルインに教えてしまうものね。

私が考え込んで黙っていたら……ルインはそれを否定的な意味で捉えたのか、悲しそうに顔を歪めた。


「それとも俺は頼りないかな」

「っ……違うっ‼︎私はただ、ルインの仕事が大変みたいだからっ……」

「仕事なんかよりシエラの方が大事だよ」

「…………ルイン……」


彼はそう言って私の手を握ってくれる。

あぁ……こんなに優しくされたら、蕩けちゃいそう。


「話して?」


もう既に知ってるはずなのに私に聞くのね。

私はゆっくりと……話し始めた。


「お父様が、いい加減にルインを連れて来いって。ほら、なんだかんだと言って婚約とかしてないでしょう?」

「あぁ……ごめんね、シエラ……俺の考えが及ばないばかりに……そうだよね。シエラはまだ、貴族令嬢だもんね」


そう。

お父様はルインの身辺調査はしているみたいだけど……はっきり言って、私と彼の仲は認めていないみたい。

いや、認められないの方が正しいかしら?

ルインは精霊王の子供だけど、平民だし……。

口には出してないけど、身分差がネックなんでしょうね。

これからどうするか、話し合いたいのかも。


「分かった。一週間後、お伺いするよ」

「えぇ、分かったわ」


ルインは優しく微笑んで「大丈夫だよ」と言ってくれる。

えぇ、私も大丈夫だって信じてる。




*****





一週間後。

式典用軍服を着て現れたルインを見て、鼻血を出さなかった私は凄いと思う。

いや、式典用って普段のやつより十倍格好いいんだもの。

黒軍服に、金色の刺繍がされててイケメン具合が十割増しなのよ?

格好いいのに、柔らかく笑うそのギャップ……。

あぅ……キュンとする……。


「こんにちは、俺のお姫様」

「……こんにちはぁ…」

「ふふっ。シエラ、顔真っ赤だよ?」


愛おしそうに私の頬を撫でるルインと、その笑みにノックアウトされる屋敷の侍女達。

執事も顔面真っ赤なんですけど?

その、フェロモンなんとかなりませんか?





サロンに来た私達は、先に待っていたお父様に頭を下げた。


「お待たせしました、お父様」

「お久しぶりでございます、ジキタリス伯爵」

「………あぁ…」


勿論、ここにお母様の姿はありません。

まぁお父様がいる限りやって来ないでしょうけどね。


挨拶もそこそこで席に着いた私達は、侍女に紅茶を頼んで一息ついてから話し始めた。


「……本日、ルイン殿に来て頂いたのは娘との今後のことを考えたいからだ」

「はい」


お父様は緊張した面持ちで、真剣な顔をしたルインを見る。

まぁ、平民でも精霊王の息子相手だと緊張するものかもね。


「……その……ルイン殿は爵位を持っていないだろう?」

「そうですね。一応、第五部隊の小隊長は任されておりますが、所詮一等兵です」

「裏では軍部を掌握してるのにね?」

「え?」


お父様は引き攣った顔で固まる。

……実力行使で脳筋共を黙らせたことは言わないでおこう。

余計に挙動不審になりそうだし。


「その……国王陛下に頼めば婚約は結べると思うのだが、不干渉を申し出ていたので、見込みはないだろう。と、なると前にも言ったようにルイン殿には功績を挙げてもらうしか……」

「そうですね。となると…シエラ嬢にはもう少し待って頂くことになるかと」

「だが、シエラが強力な精霊術師であることは知れ渡っている。ゆえに沢山の婚約の申し出も来ているんだ。デビュタント前だということもあってその数も凄い」


あら?

それは聞いたことはなかったわ。

この国での成人……デビュタントは十四歳。

つまり来年。

となると婚約者がおらず、強い精霊術師である私と婚約したいという人が沢山いるのは当たり前のことなのかしらね。

ルインしか見てなかったから分からなかったわ。


「二人が恋人のように過ごしていることは聞いているが……しかし、公爵家からも婚約の申し出がきているんだ。流石にこれ以上は……」


お父様は申し訳なさそうに目線を下げる。

……あぁ、流石に公爵家ほど上の階級の人に申し出されたら断りにくいよね。

でも……。


「私はルイン以外の方に嫁ぐつもりはありません」

「シエラ……」

「そこまで問題になっているなら、私を勘当して下さいませ」

「「っ⁉︎」」


その言葉にお父様とルインが目を見開く。

だって、私が好きなのはルインだもの。

婚約でも他の男のものになるくらいなら、勘当してもらってでも拒否したい。

ルインだけのもので、いたい。


「だからーー」

『GUGYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA‼︎』


そこから先は、外から響いた咆哮に掻き消された。

何事だと思って状況確認をしようとしたら、外から大きな声が鳴り響いた。



『我はドラゴンなり‼︎盟約に従い、生贄を喰らいに来た‼︎』



その声に私達は窓辺に駆け寄り、外を見る。



空高く羽ばたくのは、漆黒のドラゴン。



そう、ドラゴンだ。

この世に存在する魔王の次に最強と呼ばれる存在。

破壊の化身、災厄の生命体。

滅多に自分の縄張りから出ることがないその存在が今、この王都の上空に存在した。



それを理解した瞬間、王都中から叫び声が響いた。

人々の恐怖する声、逃げ惑う声。

余りの急展開に意味が分からなくてそれを呆然と見つめていたら……ドラゴンは大声で更に告げる。


『生贄はこの王都に住まうハーフエルフだと聞いた‼︎直ぐに出て来い‼︎来ないのならば我はこの地を焼き尽くそう‼︎』

「「「っ⁉︎」」」


それを聞いて私達は顔を見合わせる。

ハーフエルフも滅多に存在しない。

つまり、あのドラゴンが言っているハーフエルフとはルインのこと。

まさか……ゲームで語られた《穢れの王》に覚醒した原因って、ドラゴンへの生贄だったの?

でも、なんで急に?



『……あぁ、そうだ。思い出した。そういえば、そのハーフエルフと共にいる人間も喰らっていいと言っていたな。ハーフエルフとその側にいる人間よ、直ぐに出て来いっ‼︎』



あ、ヤバい。

そう思った時には遅かった……。



「は?」



次の瞬間、ルインを中心に漆黒の闇が溢れ出る。

…………あぁ、うん。

目のハイライト消えてるし……ヤンデレ(?)モードですわね、ルイン様。


「ハーフエルフって俺のことだよな……で、側にいる人間なんて言われたらシエラしかいないじゃないか」


外へと続く扉を開けて、ルインはゆったりと歩を進める。


「いつの間に生贄認定されていたかは知らないが……」

『っっっ⁉︎』


ぞわりっ‼︎

ルインが放つ殺気が私達の身体を凍らせる。

ドラゴンも驚いたようにこちらを……ルインのことを、見つめていた。


『な、なんだ……貴様は……』


ドラゴンの声には怯えが滲んでいて。

私は思わずご愁傷様と手を合掌していた。



「シエラのことさえ、その声に出さなければ……楽に死ねたのに」




ルインはドラゴンを視認できる位置に立つと、一瞬でその場から姿を消した。





*****





その時、突如現れたドラゴンの存在に王宮は大騒ぎになっていた。

我、国王クリストフはその対応に追われた。



「至急あのドラゴンの情報を集めよっ‼︎」



王宮に勤める文官達に命令し、バルコニーから空高く羽ばたくドラゴンを睨む。

あやつはこの王都に住まうハーフエルフとその側にいる人間を喰らいに来たという。

それに当てはまるのは、あの精霊王の息子であるルイン様とシエラ嬢。

まさか……と思いながらも、ハーフエルフは滅多に存在しないことから間違いないだろうとも考えていた。


「父上っ‼︎」

「クリストファー……」


息子のクリストファーは既に鎧に身を包んでおり、その目がドラゴン討伐に出ると告げているのが簡単に分かってしまった。


「今より騎士団、精霊術師団、軍部を率いてドラゴン討伐に向かいます」

「…………止めろ」

「父上っ‼︎ですが、簡単にそのハーフエルフが出てくるとは思えませんっ‼︎そうなるとこの地の民がっ……‼︎」


お前はそう思うのだろう。

しかし、だ。

我は思うのだ。



「いや、彼の方は必ず現れる」



シエラ嬢のためならば世界すら滅ぼすと言っていたルイン様。

そして、あのドラゴンはシエラ嬢も喰らうと告げた。


それはつまり……。



シエラ嬢を殺すと告げたドラゴンを、あのルイン様が許すはずがないのではないかと。



『GUGYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA⁉︎』

「あぁ、ほら。やはりな」


絶叫が響く空を見れば、その予想はやはり的中していたようで。



その姿を見ただけで悪寒が走る。



きっと、この悪寒の正体は空を舞う漆黒の闇が放つ殺気。

闇がドラゴンの足元を横切ったと思った次の瞬間、ドラゴンの足が空を飛ぶ。

闇色の軌跡を残しながら、ドラゴンの周りを縦横無尽に舞うのはきっと彼だろう。


…………そして、その度に鮮血が舞っているのが遠目でもよく分かる。


「なっ……」


クリストファーもそれを見て絶句しており、きっとこの子だけでなく……今この王都にいる者達はあの闇に恐怖していることだろう。

それほどまでに……我々には向けられていないというのに、彼の放つ殺気は恐ろしいもので。



「あぁ……少しばかりあのドラゴンに同情するな。触れてはならない禁忌に触れたのだから」





世界を滅ぼすほどの力がある。

その意味を、改めて理解した瞬間だった。






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― 新着の感想 ―
[一言] 面白かったです~シエラもルインも大好きです(笑)まだまだ2人の続きが読みたいです!
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