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二度目の勇者は救わない  作者: 銀猫


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13/21

獣鳴く夜空にて3

「「「アオォーン!!」」」

「「「グルァー―!!」」」


 夜は更け、静けさが漂う森に獣達の叫びが木霊する。


「一匹たりとも森を抜けさせるな!」

「ダメです!数が多すぎます!」

「このままでは…!」

「ぐわぁーー!!」

「ッ!?よくも仲間を!!」


 暗き森を、無数の獣が駆ける。

 群れと呼ぶにはあまりに多すぎるその数は、種族もバラバラに統率が取れているかのようにある一点を目指し進行する。森を抜けた先、とある種族の集落を蹂躙せんと。

 それに対抗するは、弓を構え魔法を放つ耳の長い種族。エルフと呼ばれる彼等彼女等は、己の故郷を死守せんと獣達に立ち向かう。


「数が…!減らない…!」

「多すぎるよ!」


 射る、射る、射る。

 眉間を、心臓を、足を。放たれる矢は獣たちの命や足を奪うが、それらを踏み潰し新たな獣が躍り出る。


「「「悠久を見守る我らが守護者、御身の力にて侵略者を絡み捕れ!」」」


 一人、また一人と傷を負う弓兵達の後ろ、木材で作られた防壁の上で複数のエルフが同時に魔法を解き放つ。

 生えわたる木々の枝や根、蔓や蔦が獣達を絡め捕り、新たな防壁となって一時的にではあるが獣達の進行を足止めする。


「今のうちに負傷者を担いで奥へ!ここを破棄して次の防衛地点まで引くぞ!」


 本日三度目の撤退。負傷者を担ぎ、次に定められた防衛地点へと急ぐ。

 故郷を守るための戦いは、夜明けまで続いた。


***


「戻りました…族長……」


 夜が明け、獣の吠える声が離れていくのを背に、防衛線のリーダーである男エルフは族長である老齢のエルフへと報告する。その姿は痛ましく、体中の傷が衣服を赤く滲ませる。


「うむ、今宵もよく持ちこたえてくれた」

「ありがとうございます、ですが…」


 族長の労いの言葉に答えながら、彼は背後に視線を向ける。

 そこには、彼より重傷なエルフも多く、無傷な者は一人もいない。中には亡くなってしまった者もいる。獣達に踏み荒らされ、原形を無くし家族のもとに連れ帰れなかった者すらいる始末だ。

 

「これ以上は限界です。消耗が激しすぎる…このままではいずれ……」


 獣の大群による襲撃、これは今日に始まったことではない。既に量の手では数えれないほどの襲撃を受け、最初は森に入る前に撃退出来ていたが今では森の中心部まで侵攻を許している。それに戦えるエルフも傷を負い過ぎた。このままでは女性や子供まで戦場に立たせなければいけなくなる。


「そうじゃのぅ…やはり、助けを乞う以外にないか」

「では」

「うむ、早朝にも使いの者をだそう」


 族長の決断に、男のエルフも頷きを返す。


「その任務、私が」

「ならん」


 男エルフの提案を、族長は一喝する。


「そなたは防衛の要、ここから離れさせるにはいかん」

「では、誰に行かせるのですか。道中に危険がないとも限らない!これは確実に遂行しなければいけません!」


 道中に何者かに襲われる可能性はゼロではない。エルフはあまり森の外に出ない珍しい種族。疚しい企みを持つ者に見つかればその結末は容易く想定できる。


「儂が行く」

「族長自らが!?」


 悠久すら生きると言われるエルフであっても老齢に差し掛かる族長は、魔法を得意とするエルフの中でも群を抜いた腕前を示す。しかし、それでも肉体的な衰えは無視できない要素だ。


「安心せい、もう一人連れていく」

「もう一人?いったい誰を」


 男エルフの心配は既に予測済み、族長の中では明確な作戦があった。

 それが、全エルフ達にとってのタブーであるとわかっていても。


「あやつ(…)を護衛につける」

「あやつって、まさか!?」

「そのまさかじゃ」


 男エルフと族長の頭には、一人のエルフが浮かんでいた。

 かつて、救世主を裏切った大罪人の一人にして、現在生きている唯一の生き証人。同族ですら恨み、憎悪する対象。


「何、逃げはせんよ」


 二人が話す場所から更に奥、深い深い森林に閉ざされた一つのろうごく。その中にはやつれたエルフが鎖で繋がれ、彼女は窓を無気力に見ている。


「これも、贖罪の一つになるのじゃからな。それにあやつの腕はいくら錆びつこうと、そこらの障害なら穿つじゃろうし」


 かつて世界を救う旅に出て、最後には裏切った大罪人。勇者殺しの汚名を背負うエルフ、フォルティナを連れ、エルフの里の族長たる彼は助けを乞うべく森を出る。

 目指す場所はアリーゼ王国。エルフ達の数少ない同盟国。

 彼らが王国を目指したのは、奇しくも王国が襲撃された翌日であった。


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