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プロローグ

『昔々、魔族の王が人々の国に戦争を仕掛けました。


長く、苦しい闘いが続き、王国はついに異世界から勇者を呼ぶことに決めたのです。


王国が呼び出した勇者は次々と魔族を倒していき、遂には魔族の王を倒しました。


誰もが勇者に感謝を送りました。


しかし、王国は大きな間違いを犯したのです。


勇者の仲間たちと手を組み、勇者を暗殺しようとしました。


勇者の仲間たちは一人を残して王国の提案を飲み、勇者を殺すことにしました。


ただ一人、勇者を愛していた聖女は反対しましたが、教会の奥に捕らえられてしまいます。


計画が実行されます。


王城へ呼び出された勇者を、仲間たちが後ろから刺したのです。


勇者の仲間が止めをさそうとした時、教会に捕らえられていた聖女がその身で庇い、勇者を逃がしました。


逃げた勇者ですが、武器に毒が塗ってあったため、どんどんと体が冷たくなります。


虚ろな足取りで王国の大きな広場にたどり着いた勇者は叫びました。


「こんな世界、救うべきじゃなかった!!」

「こんな国、滅んでしまえ!!」


命の灯が消えた勇者の体から夜が噴き出しましす。


夜はどんどんと広がり、遂には王国全土まで広がりました。


こうして、王国に明けない夜が訪れたのです


多くの人が王様を恨みました。


多くの人が王国から去りました。


こうして王国はどんどん衰退していったのでした


終わり』


 パタンと本を閉じる。

 表紙に描かれているのはデフォルメされた勇者の絵。

 もう何度読んだかわからない本の表紙を撫でながら、窓から見える空に思いを馳せる。


「勇者様は、まだ私たちを許してくださらないのね」


 勇者が死んで二百年の時が過ぎ去った。

 王国では未だに、勇者の恨みが根強く残っている。


「サンドラ様。ここにおられたのですね」


 聞こえてくるノックに入る許可を出すと、一人のメイドが部屋に入ってきた。


「儀式のお時間です」

「わかりました」


 本を机の上に置き、立ち上がる。

 メイドに先導されながら王城を歩く。


(あぁ、もし勇者様が生きていたら、おそらく怒るのでしょうね)


 今も昔も、この王国は何も変わっていない。

 自分たちでできないことを、全て勇者に押し付けようとする浅ましい本質。


(それでも、私はこの国を救わなければいけないのです)


 王国の外は闇に覆われ、空に輝く星々が僅かな光源として輝く。


「この身が憎悪の炎で焼かれようとも、私はこの国を救います」


 夜は、未だ明けぬ。

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