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アヤツリdoll  作者: レモネード
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第二話 『無責任な自暴自棄』

 状況が理解できなかった。ゲームや漫画で『入れ替わり』というものを知ってはいるが、それが自分に起こるなんて夢にも思わない。そしてゲームや漫画の場合、都合よく『入れ替わり』が戻るようになっている。

 しかし、これはどうだ?いつが都合のいいタイミングなんだ?そもそも『戻る』ことができるのか?

 とにかく気分は最悪だった。『入れ替わり』の相手が落合って…そんなのひでぇよ…


「ふざけんじゃねぇぞ!クソッ!クソッ…」


 こらえきれず怒鳴ってしまったがやはり声も落合だ。『実は夢だった』なんて期待は砕け散る。


「おい!うるせえぞ!」


 壁からドンドンと音が聞こえる。ここもアパートか。落合も大学生だから当たり前だ。

 身体からは冷や汗が吹き出し、常に歩いていないと気が済まなかったが、心を落ち着けて今何をすべきか考える。

 そうだ!とりあえず落合の生活を知ろう!あいつの性格なら1日のスケジュールぐらいどっかに書いてるだろ!ぱっと見、周りにはないから引き出しの中とか…


「え…なんだよこれ…借金?」


 あったのは借金返済だなんだと書いてある紙ばかり。

 そして探していたスケジュール表も見つける。そこに書いてあったのは大学と睡眠時間以外全てバイト。

 大学の清掃のバイトもある。昨日テニスコートにいたのはそういうことだったのか…これだけしないと返せないほどの借金?いったい何に…

 まだ色々入ってるけどもういい!とりあえず外に出て大学に行こう…あのバカなゴウならこんなありえない話も信じてくれるかも…


 ピンポーン、ピンポーン


 ドアを開けようとした瞬間、チャイムが鳴る。


「落合さーん、どうかされましたかー」


「こんな朝早くに大きな声が聞こえたらしくてね、何かあったのかなーって」


 無駄におせっかいな近所のおばちゃんか…今出て行っても面倒なだけだな…


「な、なにもないですっ!」


「あらそうー何かあったら言ってねー」


 おばちゃんだけじゃない。落合が天性のいじめられっ子なのはよくわかってる。大学に行くまでの間に何人の不良に絡まれるかわかったもんじゃないぞ…


 そうだ!寝よう!外に出る必要なんてない!この『入れ替わり』も寝てる間に起きたことだ!幸い冷蔵庫の中に2日ぶんぐらいは食料は入ってるし、今は朝だから何か夜まで時間を潰して寝よう!


 そして午後10時。だがもう人が寝られないほど電話のベルが鳴り響いていた。

 さっきからずっと鳴りっぱなしだ。借金返済、バイト先…色々理由は考えられるが…電話の線を抜いて寝よう…


 眩しい…朝か…朝…そうだ!身体は!…


「戻ってない…」


 なんで戻ってないんだよ!クソッ!明日だ…明日戻らなきゃもう多分…

 頭がおかしくなりそうだ。家に鳴り響くチャイムと時計の音がさらに俺を不安にさせる。



 しかし、次の日起きても戻らない。それはもう絶望的だった。正直、戻るとしたら1日だろうと心の中では思っていたのに、もう2日だ。これで3日目に戻りました、なんて考えにくい。もう戻れないと考えるのが普通だ。いや、3度目の正直って言葉がある…望みは捨てちゃ駄目だ…

 夜までずっと部屋の中を歩き回って時間が経つのを待ち、食料不足による空腹を押し殺し、就寝。



 そして起床。やはり戻らなかった。つまりこれは戻らないということなのだろう。なんで俺なんだよ。神様が俺に与えた罰か?自分がいい人間だったとは思わないが、俺より悪いヤツなんていくらでもいるだろ。ああ、これじゃあただの嫌がらせだ。


 もう死のう。この身体じゃ、外に出ることすら危険だ。この3日間で明らかに怪しい男が何度も家に来た。落合、お前よく生活できてたな。すげえよ。


 前の身体の時だって、楽しいことはほとんどなかった。もう雨夜やゴウとも3日も会ってない。仮に元の身体に戻れても、もう俺の居場所はないかもしれない。


 生きる理由が見当たらない。この身体の持ち主の落合には申し訳ないが、お前も借金やいじめに追われるこの身体よりもまだ、毎日良くも悪くも何もない俺の身体で生きた方が幸せだよな。



そう自分に言い聞かせ、俺は車の行き交う国道に身を投げた。









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