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アヤツリdoll  作者: レモネード
2/7

第一話 『dolls』

一回消えて地獄を見ました。

 またいつもと同じ朝。今にも雨が降りだしそうな、微妙な朝。予定は既に決まっている。

 食事、大学、バイト、ゲーム、就寝、以上!

またいつもと同じように今日を過ごし、いつも同じように明日を迎えるのだろう。


「なーんか起きねえかなー」


 声に出しても何も起きるはずがなく。とりあえず朝食を食べる。とは言ってもゼリーかヨーグルトなわけだが。


「いってきまーす」


とは言わない。高校を卒業してはや二年。やっと一人暮らしに慣れてきた頃なのだ。

 うっ、太陽の光が目にしみる…昨日ゲームしすぎたな…本当はこんなに早く出なくても大学には間に合うのだが、少々理由があるのだ。


 急いで駅に向かった。もっと大学に近い家にすることもできたが、家賃の関係で学校へは電車通学なのである。最初はめんどくさい限りだったが、それは今や、俺の人生と、早起きの理由の99%を占めている。なぜなら…


「あっ、おはよう、善財くん」


「おっ、おはよう、雨夜」


 この綺麗な笑顔の黒髪セミロングで小柄な同級生の女の子、雨夜光あまやひかりに会えるからだ!顔よし、性格よし、そして名前すらよし!この子のおかげで雨が好きになりました。それに比べて俺は、「ぜんざい(食べ物)当たる!」とか幼少期にからかわれてたっけ。

 そういえば今日はいつもと感じが違うな…なんだろう、喜びと悲しみが入り混じったような…ま、気のせいか。


「あっ、電車きたよ」


 電車と言っても、乗車時間は30分程度。その中での雨夜との会話だけが、このしょうもない人生で唯一の楽しみなのだ。


「朝、何食べたの?」


「ゼリーだったかな」


「えー、もっと栄養とらなきゃ倒れるよ?」


「じゃあ朝ごはん作ってくれ」とは言えない。


「あっ、着いた」


俺の人生の99%終了…今からしょうもない人生のスタートだ…


「じゃあ…またね!」


 やっぱりなんか変だな。

 ここからは学校まで行ける道が2つに分かれており、俺は左、雨夜は右の道から通学する。どちらも距離はほぼ同じであるが、右の道で友達が待っているらしい。はぁ…俺も右の道から行きたい…


「おーい、おーい」


 進んで行くと茶髪を逆立てた、大柄な男がこちらに手を振っている。これが俺の早起きの1%かつ右の道から通学しなければならない理由、馬養剛まがいごうだ。なんとも物騒な名前である。


「遅えぞアタル!早く行こうぜ!」


「はいはい」


 こいつとの関係は主従…ではなく親友だ。

幼稚園の頃からの幼馴染で、大学まで同じ。そういうシチュエーションは雨夜とが良かった。

 大学に着き、まず話すことは、


「で、今日は何すんだ」


「テニスしようぜ!」


「またテニスかよ…自分の得意なのばっか選びやがって…」


 俺たちが早く登校する理由、それはスポーツをするためだ。この大学では朝練をする部やサークルが少ないため、コートは使い放題なのだ。そしてゴウは習ったこともないのにテニスがうまい。どうせ勝ってドヤ顔したいだけだろう。

 テニスコートに着くと見覚えのあるやつがそこにいた。


「おいお前、運動音痴のくせにテニスしてたのか?」


「うるさいな…どっかいけよ…」


「んだとゴルァ!」


 この黒髪短髪やせ眼鏡のいかにもいじめられてそうな見た目の男は落合我将おちあいがしょう。名前は超かっこいいのに超小心者。こいつは小学生の頃からの知り合いだが、やはり昔からいじめられっ子だった。すっ転んでゴウの顔面に給食のスープをぶちまけた時からいじめは始まったらしい。


「そうだ落合、俺今金欠なんだよなー…金貸してくれよ」


「今は…金、持ってないから…」


「じゃあ見せてみろよ!」


 ゴウは強引に落合のカバンから財布を取り出す。


「あるじゃねえか、しかもなかなか多いぜ?お前…俺に嘘つきやがったな…」


「そ、その金だけはやめてくれ!他は…他ならなんでもするから!」


「駄目だ、これは全部もらってくぜ。嘘ついた罰だな」


「クッ…クソッ!覚えてろよ…」


 なんともザコキャラ臭の漂う捨て台詞だ。落合は涙を浮かべて何かブツブツ言いながら去っていった。まあ、ゴウが全面的に悪いのだが。

 ちなみに俺はこのことに関して加担もしなければ止めもしない。特別落合が嫌いなわけでもなければ、めんどくさいことにもなりたくないからだ。



「よっしゃー授業終わり!」


 天に向かって大きく背伸びする。自分の頬に雨粒が落ち、ぽつぽつと降り出した。雨…これはまさか雨夜が「おめでとう」と言ってくれているのか!そんな馬鹿な妄想は置いといて、後はバイトしてゲーム…


「アタル!メシ行こうぜメシ!」


「ゴウお前…昼あんだけ食ってたのにまだ食うのかよ…」


「俺にとってはメシこそが命!お前ならわかるだろ?」


「はいはい…この後バイトあるから早く済ませろよ…ん?」


「どうした?」


「いや、なんか視線を感じたような…」


「なんだよそれ、こえーこと言うなよ…お前ブサイクってわけでもねぇから女にでも見られたんじゃねぇのか?」


「だといいけど…」


 ゴウと別れた後、バイト先であるコンビニに向かう。…誰もいないよな…


「いらっしゃぁせー」「あざーしたー」


 あいつも怪しい…こいつも怪しい…

 なんだってんだ一体…バイト中も帰り道も、あの視線が気になってしょうがない。実際誰かに見られてたのかすらわからないのに…

 とりあえず家に帰って即ゲーム。なりふりかまわず即ゲームだ。

 いつもは遅くても一時には寝るようにしているが、今日は寝てはいけないような気がして、四時までゲームにのめり込んだ。

 しかし、睡魔に勝てず就寝。


「はあ、結局何もなかったな。」


 何言ってんだろ。いつもと違う何かを求めていたのに、何もないことがこんなに落ち着くなんて。

 さすがに疲れていたのか、視界が闇に覆われていくのがわかった。




 光が眩しい…もう朝か。まあ寝るのが遅かったし当然か。……ってどこだ?ここ…


 見覚えのない天井、自分とは違うニオイのする布団と部屋…何が起きてるんだ!と、とにかくまずは場所を確認…

 布団から出て立ち上がったとき、さらなる異変に気付いた。景色が違うのだ。場所が違うからとか、そういうことじゃない。いつもの視界の高さとは全く違うのだ。そしてあることに勘付く。


「かっ、鏡、鏡は…」


 慌てて鏡を探し、洗面所らしき場所にたどり着く。そして飛び込むように自分を映らせ、視界に入ってきた光景は…


「なんで……俺……落合に…」










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