the end of the sky ~ 空side~ 3
いつもより少し早めの登校となったのは、眠りが浅かったからだ。
私は教室に入ると、彼の席に一度視線を移す。
彼はまだ登校していない様子だった。
カバンを机の横にかけ席に座ると、私はいつもの様に空を眺めた。
昨日と同じで、雲一つない冬日和。
今日も彼は屋上に現れるだろうか?
彼に対する興味が段々と私の中で強くなっていっている。
予鈴のチャイムが鳴る。
鳴り響くチャイムの中を、勢いよく彼が教室に入ってきた。
「あぶなかった~。」
そう言うと、彼は入口付近にいる仲の良い友達に声をかけ、自分の席に向かう。
そんな彼を目視した瞬間、それまで何でもなかった私の胸が、少しざわめき始める。
顔も少し熱を帯びた気がする。
彼のすぐ後に担任も教室に入ってきてホームルームが始まる。
伝達事項などを皆に伝えると、そのまま授業が始まる。
一時限目は数学。
私は割と数学が好きだ。
色々な事を数字で求められたりするし、奥が深いからだ。
それは私が好きな空の広さ位無限で悩ましい。
でもそんな数学も今日はいつも以上に頭に入ってこない。
今の私の興味は、先日から半分くらい彼が占めていて、残りの半分は空だ。今は数学が入り込む余地がないからだ。
私は窓の外、遠くに視線を移す。
結局のところ、考え事をしていても空を見てしまう。
そこに答えは見つからないけど、そうしていると私の心が晴れるからだ。
結局午前中は、色々な考え事をしているうちに終わってしまった。
昼休みになった。
彼がコンビニの袋をぶら下げて廊下を歩いて行く姿が見えた。
私は少し時間を潰してから屋上に向かう事にする。
すぐに彼の後姿を追いかけてもいいのだが、あらぬ噂を立てられたりしても困る。
例えば私たちが彼氏彼女の関係で、付き合ってる・・・とか。
・・・彼氏彼女って!?
私は一体何を考えているんだろう!?
私は顔から火が出るんじゃないか?って位顔が赤くなるのが自分でもわかった。
彼氏彼女って何?
なぜそんな事を考えてしまったの?
私は彼とそういう関係になりたいの?
確かに私は彼には興味がある。
それは認めよう。
でもだからってそういう関係になりたいだなんて、考えた事も無いし、少し話が飛躍し過ぎなんじゃないのか?
そもそも彼氏彼女って何?
国語文法的なソレ?
違う違う、そんなんじゃない!
って言うか、なぜ私は今こんな事を考えるに至ったの?
心の中、自分自身の問いかけに、もの凄く恥ずかしくなってしまい、私は慌てて教室を出た。
誰にも気付かれなかっただろうか?
声に出して言っていた訳ではないので、気付かれるはずなんてないのだが、いつもの様に冷静になれない自分がそこにいた。
とてもじゃないが今日は屋上に行ける心境ではない。
このままじゃまともに彼を見る事さえ出来ない。
私はその足で図書館に向かった。
何かわからない事があると、書物から答えを出そうとするのは私の昔からの癖。
こんな事誰かに相談できるような仲の良い友達がいないからと言うのも理由の一つだが・・・。
しかし、自分でも理解できないこの気持ちを書物から見つけ出すのはとても難しい。
なぜなら、自分の気持ちもわからないのに、どうやってそれを調べたらいいのかわからないから。
こういう時はPCで検索をかけた方が早い。
私はPCを借りると、いくつかのキーワードを入れ検索する事にする。
異性 気になる なぜ?
すると大変膨大な数がヒットした。
幾つかの回答の中に、自分を納得させる事の出来る答えを見つけた。
”誠意”
この言葉は私にとってとてもリアルだ。
今まで誰からも発見できなかった事。
私の質問に真面目に事えてくれた異性は彼が初めてだ。
”包容力”
これについても心当たりがある。
私の話をバカにせずしっかりと聞いてくれた。
確かにあの瞬間、彼が私の事を受け入れてくれたような気がした。
誠実さや包容力を異性から垣間見えると、女性は異性に魅力を感じる。と、ある。
では魅力とはなぜ感じるのだろう?
それは自分になくて相手にはあるそれに魅かれるからなんだと思う。
じゃあなぜ気になるの?
それはその人の事が好きだから。
好き!?
私は自分の中に芽生えたものを一つづつ紐解いていった結果、この答えにたどり着いた。
じゃあなぜ人を好きになるのかを調べると、振出しに戻ってしまい、結果堂々巡りを繰り返す。
つまり、私は彼の事が異性として気になっているようだ。
その瞬間は突然おとずれるものらしく、平たく言うと、これを世間では恋に落ちたと言うらしい。
”恋”
特定の異性に強く惹かれる事。
今の私のソレだ!
一言で簡単に括られてしまったが、私の胸の内を解く為の鍵としては十分すぎる答えだった。
ここまでわかれば後はどう行動に移したらいいかは、調べもつくし見当もつく。
そんな事を考えていると、昼休みの終わりを告げる予鈴のチャイムが鳴る。
私はPCの電源を切ると、図書館を後にし、教室に向かった。
午後の授業は真面目に受けようと、昼休みが始まる前までは考えていたが、午後の少し気怠い授業の中に、恋を上回るものを見つけ出せず、私はまた窓の外、どこまでも遠く広がる空を見ていた。




