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空と空  作者: 東京 澪音
15/16

the end of the sky ~ 空side~ 15

9時48分。

土曜日という事もあり、駅はソコソコ混んでいる。


私はいつもの様に6両目の電車に乗り込むと、彼がいつも乗る駅へ向かう。

何もかも今日はいつもとは逆だ。


9時56分。

駅に着くと、彼が乗り込んで来て、私の横に腰を下ろした。


「おはよう空。いよいよだね。あ、デートも兼任しているからその辺も忘れないでね。」

笑顔でそう言うと、携帯電話で乗り換えなどを検索してくれる。


「取り敢えずこのまま小田原まで乗って、そこで乗り換えて熱海へ。熱海でまた乗り換えて伊東方面だね。で、空がこの間見せてくれた住所から割り出したんだけど、どうやら伊東市吉田と言う駅は存在しないみたいだから、川奈ってところで下車して、そこからはバスで城ケ崎方面へ向かう。伊東商業高校を越えて二つほど先のバス停で降りればちょうどいいみたい。さすがにバスの時間までは調べてないから、その辺は駅に着いたらバス停で確認しよう。」


私の事なのに、まるで自分の事の様に細かく調べてくれた彼。


「ありがとう。任せちゃってごめんね。私方向音痴だから・・・。頼りにしてます。」


デートも兼任している訳だから、楽しまなきゃ!


でも冬の伊東って。

伊豆って言ったら春・夏・秋でしょ!桜だったり、高原だったり、紅葉だったり。


でも、彼と一緒だから、別に行先なんてどこでもいいんだ。


けどお昼位美味しいものを食べようって相談していたから、私たちは一度伊東駅で降りる。

伊東まで来てファーストフードじゃ味気ないし、なにしろ初デートでもある。先日PC検索して探したのだ。


なんでもそこは、千円で凄い海鮮丼が食べられるお店みたいで、大人気との事。

伊東駅からも徒歩5分圏内なんで、迷う事もない。


地図でも確認したけど、駅からひたすら真っすぐって言うのも嬉しい。

これならいくら方向音痴の私でも大丈夫・・・のはずだ。


伊東駅に降りた時には11時15分を少し過ぎたところだった。

お昼前にはまだ時間がある為、私たちは駅でもらった観光マップをみながら周辺を散策する。


その中でも二人が一番気になった場所、東海館を訪れてみる事にする。

ここは市の指定文化財にもなっていて、なんでも職人が手を凝らした内装が特徴との事。

元は旅館だったが、1997年に営業を終了したものの、現在でも館内でお風呂に入浴する事が可能の他、喫茶室もあるらしい。


私も以前テレビで紹介されたのを見た事があるが、外観はとても立派で見事な造りをしている。

観光名所で有名になるのもうなずける佇まいだ。


予約したお昼の時間まで然程余裕がある訳じゃないので、私たちは松川からその姿を眺めた。


松川沿いから眺める東海館は、平成の世には不釣り合いな建物かもしれない。でも大正の香りが漂うようなロマンがそこにあるように私は思えた。


それはどうやら私だけじゃなかったみたいだ。


「よくもここまで綺麗に保存されているよね。だって大正だよ!1928年創業なんだよ!凄いよね。」


彼も同じ意見らしい。


一つの感動を二人で分け合える嬉しさ。

恋をしてよかったと思える瞬間だ。


ひとしきり観光を済ませ、私たちは予約したお店で食事をとる。

噂になるだけあって、凄い海鮮丼だった。

なんでも毎朝地元で捕れた魚介類を直接市場に買い付けて、その日のお昼に全て出す。


鮮度は勿論、とても美味しい。


正直採算がとれているのか逆にこっちが心配になる位の盛り付けだ。

地元なら間違いなく2500~3000円位するだろう。それが千円だって言うからビックリ。


高校生カップルにしては随分とオジサンぽいシブいランチとなったが、大満足でお店を後にした。


伊東駅に戻ると、そこから川奈駅へ向かった。

窓の外の景色は、いつもの見慣れた景色と違ってとても新鮮に映る。


海の色も地元と違ってとても綺麗なブルーをしている。


伊東駅から二駅。

私たちは川奈駅に降りたった。


伊東駅とは違い随分とこじんまりとしてはいるが、とても趣きのある駅である。

私たちは近くの案内所で城ケ崎行きのバスについて聞くと、伊豆箱根バスの方が丁寧に教えてくれた。


13時26分のバスに乗り、城ケ崎方面へ。

伊東商業高校を過ぎ、彼が言った通り伊東商業高校前から二つ越えたバス停で降りた。


どうやらこの辺が伊東吉田になるみたいだ。

電柱に住所が書かれていた為確認できた。


私たちは近くのコンビニで伊東市吉田416-2の住所を教えてもらう。

見た事のない風景と、父の元を尋ねる事についての緊張と不安からか、段々と無口になってしまう私。


それを悟ったのか、彼が私の指に自分の指を絡ませてくれる。

黙ったまま彼の顔を見ると、”大丈夫だよ”と言わんばかりの笑顔で答えてくれた。


喫茶店の看板を左に曲がると、目的の家が見えた。


私は彼に小さく一つ頷くと、ゆっくりと呼び鈴を一つ押した。



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