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空と空  作者: 東京 澪音
10/16

the end of the sky ~ 空side~ 10


16時35分。

私たちは最終のバスに乗って平塚駅に帰ってきた。


どちらかが言い出したわけじゃないけど、気が付けばお互いに手を繋いでいた。

今日の朝にはこんな展開になるなんて夢にも思わなかった。


気持ちが通じ合うって素敵な事だね。

私は今、生まれたばかりの小さな幸せを、心の中で噛みしめていた。


それからお互いの連絡先を交換した。

意外だったのは、彼が住む家から私の家までそう遠くない事だ。


電車の方向も同じで、今まで通学中に一度もすれ違わなかった事が、今思うと奇跡にすら思えてくる。


いや、もしかしたら同じ電車に乗っていたかもしれない。

でも、恋を知る前の私は、人に関心なんかもてない様な醒めた子だったから、多分気が付かなかったんだろうな。


私たちは電車に乗り、一緒の方向へ帰る。

普段は長いと思う電車も、好きな人と乗るとあっという間に感じてしまう。


別れ際、握りしめた手を放したくない衝動と、もう少し一緒にいたいという欲求に駆られたが、そこはグッと我慢して、明日の約束をした。


私は電車から降りると、彼の乗る電車が見えなくなるまで見送る。それからいつもの様にバスに乗り、家に着いた。


帰宅して部屋に帰ると、とても寂しい気持ちになった。

さっきまでは一緒にいた彼。


私はいまだ残る彼の手の温もりに反対の手を重ねると、その余韻に浸っていた。


昔誰かが言ってたな。

恋って言うのは、漢字で心が変になるって書くって。


その時は何とも思わなかったけど、今ならそれがわかる。

色々な感情と想いが重なり合って、それ以外の事を考えられない。


恋は盲目!なんて言葉が一瞬胸を過ぎったが、まさにその通り。

恥ずかしくもなくこんな事を思えてしまう自分に、少しだけ驚いてしまう。


そう言えば今日、あまりにも色々あり過ぎてすっかり忘れていたが、彼と携帯の番号を交換したんだった。


私は携帯を取り出すと、彼にメールをしようと思い立つ。


さて、なんて打ったらよいのだろうか?

何分、こんな事は初めての事で、何をどうしたらいいのか判らない。


書いては消して、書いては消し手を繰り返しいると、階段下から母が夕飯が出来た事を教えてくれる。

私は一度携帯を打つのを止め、一階に降りて母と一緒に食事をとる。


食事中も彼の事ばかり考えていた。


メールどうしようかな?

いきなりメールしたら、重い女とかって思われちゃったりするのだろうか?


そんな事を考えていると、次第に食事が手につかなくなっていく。


恋ってやっぱり難しいね。

自分ひとりでどうにかできる事ばかりじゃないから。でも、愛おしくもある。


今まで経験した事のない不思議な感情。

でも、色んな事を一人で悩む必要はない。


彼と二人、一つづつ解決していけばいいのだから。


私は食事の片づけを終えると、お風呂に入り部屋に戻る。


携帯電話に1件のメッセージが入っていた。

彼からだ。


”今日はありがとう。嬉しくて早々にメールしてしまいました。でもなんて送ったらいいか判らなくって、実は結構長い事考えていたらこんな時間になってしまいました。明日は家庭教師よろしくお願いいたします。家を出る時に連絡下さい。駅まで迎えに行きます。”


たったこれだけの事なのに、私の胸はとても熱くなった。

彼もどんな内容のメールを送っていいのか悩んでたんだ。私と同じだ!


私は早々に彼に返信した。


さっきまで色々と悩んでいたのが馬鹿みたいだ。無理にカッコつけた内容じゃなくていいんだ!

素直に思った気持ちをそのまま伝えればいい。


気が付けば随分遅い時間までメールのやり取りをしていた。


直接電話で話した方が、労力も少なく楽かもしれないが、言いずらい事もメールでならサラッと書けたり、送信から返信までの間のドキドキ感が、恋に拍車をかけていくような気がする。


尽きない会話を、どちらともなく無理やり終わりにすると、私はベッドに横になる。

時間は午前0時になろうとしていた。


明日になればまた彼と会えるのだけど、それまでの時間がとても長い時間に思えてくる。

正直、今すぐ会いたい!


逸る気持ちを押さえながら、さっき彼とやり取りしたメールを再度読み返していると、私はいつの間にか眠りに落ちたのだった。




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