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さてさて

間隔があいてしまい、すみません。

プライベートで用事が重なってしまい、中々時間が取れませんでした。

ちょっと少なめですが、楽しんでいただければと思います。

  ──「始め!!」

 号令と共に、武道館に二人の勇ましい掛け声が響き渡る。

 「動きませんね、二人とも」

 「動けないんだろうさ。西川の威圧感もだが、その西川を動けなくしているあの鞘師は、一体…」

 シーンと張り詰めた空気に、増岡先輩らのやり取りが微かに聞こえる。

 対峙して分かるけど、これはすごいな。全く隙がないし、構えにも無駄がない。

 ジリジリと間合いを詰めようとする僕だったが、闘志のこもったフェイントを交えられたりで中々踏み込めない。

 そんな緊迫の空気を先に切り裂くのは──。

 「めぇぇん!!」

 「っ!!」

 「西川が先に動いたか!」

 先に勢いよく出たのは、西川さんだった。鋭い剣筋を瞬時に見分けた僕は間一髪、竹刀で防いで鍔迫り合いの形となった。

 鍔迫り合いになったことにより、至近距離でヒシヒシと西川さんの迫力が伝わってくる。

 負けたくない。勝ちたい。色んな感情が湧いてくる。けど、僕の奥底はもっと──。

 今度は僕が攻めに転じ、鍔迫り合いで張り付く西川さんを強引に引き離す際に、ほんの僅かに空いた小手を引き技で狙う。

 しかしこれはさすがに防がれ、一本先取を知らせる審判の旗は上がらない。

 「うーん、惜しい!」

 「狙いは悪くない」

 「エースで部長の世阿弥原ぜあみはら かなえなら、今の場面だったらどうする?」

 「アタシなら、そうだなぁ…おっ!」

 再び間合いが空いたのもつかの間、瞬時に攻めに転じる西川さんが一気に突っ込んでくる。

 小手を狙いにきたと読んだ僕は、その鋭い剣筋を避けて空いた面を狙う。しかし、それも見極めた彼女は、頭を横に傾けて一本を防ぐ。

 なるほど、これも避けるか。ならば次はどう攻めるか。

 互いに激しく動き合い、息切れも垣間見える中今度は二人とも前に出て、再び鍔迫り合いとなる。

 「勇希奈、凄いな君は。想像以上だよ」

 ギシギシと竹刀が軋む中、鍔迫り合い越しに西川さんが話しかけてきた。その顔は、始めて会った時よりも良い笑顔だったようにも見える。

 「私も嬉しいよ。西川さんみたいな子がいるなんてさ」

 「ふふ、それはどうも。君も楽しんでいるようでよかったよ」

 そう、そうだ。今僕は楽しいんだ。西川さんと戦っている今が。

 もっと戦っていたい。けど…。

 「息が上がってきたね」

 「当然だ。中学にもなれば竹刀の重さだって変わる。二人は練習で使ってたかわからないけど」

 互いに間合いとり、切先をパチパチと牽制し合う。出方を伺う僕らだったけど、ここで勝負に出たのは──。

 「鞘師ちゃんが前に出た!!」

 僅かな隙を見つけて突っ込んでくる僕に対し、西川さんは冷静だった。

 「狙っているな。返し技を」

 僕が面を狙っていると確信した彼女は、返し小手を打ってくる。だが、それは想定済みだ。

 「!!鞘師ちゃんの剣筋が!」

 「ほう、面白い」

 返し小手を打ってきた西川さんに対し、僕は面の軌道を変え、ほんの微かに空いた胴へと狙いを切り替える。

 彼女は既に小手の軌道から変えられない。しかし、タイミング的にどうか。

 二人の竹刀が、ほぼ同時に狙いの箇所へと当たる音が響く。

 ほぼ同時のタイミングに、二人の視線は審判へと向かう。そして紅白の旗が決着を告げる。

 「赤が一、白がニ。際どいが、まさかあの西川を負かすとはな」

 審判を努めてくれた先輩らも、若干自信なさそうではあったけど、確実にそれは僕の勝ちを示していた。

 試合が終わって礼を交わし、僕らは身につけている防具を外していく。面を取ったあと、滴る汗を吹きつける風が、今日はなんだか心地がよかった気がする。

 「あっはは!いやぁ、やるな勇希奈!まさか、僕が負けるなんてね!」

 「びっくりした。急に大きな声出さないでよ」

 「ごめん、ごめん。だって、同世代で僕を負かしたなんて君が初めてだったからさ」

 そんなやり取りをしていると、僕らの試合を見届けた先輩らに囲まれてしまった。

 一通り質問攻めに答えたあと、借りた防具を綺麗にして返し、その日は部室を後にする。

 西川さんと一緒に武道館を出ると、空はすっかり夕焼けに染まっており、帰路につきはじめる生徒もちらほら見かける。

 「私はこのまま入部届を出してから帰るけど、西川さんは?」

 「じゃあ僕も一緒に行こうかな。どうせ出すんだし」

 というわけで帰る前に入部届を出すため、職員室へと向かう。

 いつもは隣に万理華がいたのが、今は西川さんというのがなんだか新鮮だな。

 「どうしたんだい?そんなソワソワして」

 「いやぁ、やっぱり西川さんと一緒にいると視線を感じるなって」

 「ははは、それは仕方ないだろ。一年にしては僕らは身長も高いし」

 それだけじゃない気がするが。

 僕の容姿はともかくとして、西川さんのどこぞの王子みたいな出で立ちは、やっぱり目を引くんだよな。

 「それにだ。君は僕の容姿ばかり褒めるけど、君も大概だよ?」

 「いやいや、私なんて…」

 謙遜しながら言うと、西川さんの足が止まり突然僕の顔をじっくりと見つめてきた。

 本当にこの子は急だな。もう慣れたけど。

 「うーん、髪をもう少し整えた方がいいかな」

 「それ、妹にも言われる…」

 「美容院とかどこ行ってる?」

 「安いところで適当にかな」

 「もったいないよ。ちょっと待って」

 彼女は自身のカバンからスマホを取り出すと、マップアプリを立ち上げる。

 すると、何軒か西川さんのオススメの美容院をピックアップして見せてくれた。

 「うわぁ。どれもおしゃれなお店ばかり…」

 「入りづらいなら、今度僕と行く?」

 「か、考えとくよ」

 西川さんと一緒に行ったら、それこそ視線を浴びそうだしな。でもちょっと気になるし、万理華や舞依華に頼んで行こうかな。

 他愛のない話をしていると、あっという間に職員室に着き、奥の方にいた顧問の谷川先生に入部届を提出した。

 入部届を出して職員室を後にする僕らの前に、偶然とある人物と鉢合わせになった。

 「あら、鞘師勇希奈と西川百十那じゃない」

 「…ああ、姫岡さんじゃないか。君も入部届を出しにきたのかい?」

 「入部届?私は、生徒会の立候補をしにきたのよ」

 ほう、姫岡さんは生徒会か。確かに彼女なら手を挙げそうだな。

「それはそうと入部届って言ってたけど、あなたたちは生徒会には立候補しないわけ?」

 「僕はあんまり興味はないかな」

 「私は少しあるけど、身体動かす方が好きだし」

 まぁ、学園のパンフレットを見た程度だから詳しくはわからないけど、生徒の手で学園生活をより良くしていくっていうのも確かに面白そう。でも、今はいいかな。

 「ふーん、なんだか張り合いがないわね」

 そう言う彼女は、どこか寂しそうだった。

 よほど僕らと生徒会選挙で戦いたかったのかな。

 「ま、しょうがないわね。って何よ、その顔は」

 「いや、姫岡さんにしてはあっさりだなぁって」

 「別に勝負なんて他にいくらでもあるじゃない」

 それはそうだけども、なんか釈然としないな。

 姫岡さんの思わぬ態度に心のどこかでモヤっとする気がして、もっと深く聞こうとした時。

 こういう時に限って運が悪く、職員室のドアが開いて先生から早く帰るように促されてしまった。結局、釈然としない気持を抱えたままこの日は二人と別れた。

 駐輪場へ着くと、ちょうど万理華も帰るところだったらしく、自転車を押しながら今日のことについて語る。

 「万理華は今日の部活見学どうだった?」

 「うーん、なんかなぁ」

 珍しく渋い顔を見せる彼女は、悩んだようすで意外な選択肢を僕に告げた。

 「良いなっていう部活もあるにはあったんだ。けど、私が一番気になったのは…生徒会かな」

 正直びっくりしている。

 だって万理華は小学校の頃はそんな役をかってでるような人物ではなかったのは、一番近くにいる僕がよく知っているから。

 「そんなことするキャラじゃないって思ってるでしょ?私だって思ってるよ、そんなこと」

 「だったら、なんで?」

 「あの生徒会長の宝禪院先輩。すごくカッコよかったじゃん?あの先輩みたいになりたいなって、思っちゃったわけよ」

 確かにあの先輩はカッコよかった。だけど、万理華がそれに感化されるなんて、思ってもみなかったな。

 「それでなんだけどさ…。勇希奈に頼みたいことがあるんだ」

 「頼みたいこと?」

 「生徒会選挙にでるわけだけど、それには推薦人がいるんだってさ。それを勇希奈にお願いできないかなって…」

 「勿論。私で良ければ」

 「ありがとう!!」

 願ってもないことだ。実際、万理華には小学校の頃から助けてもらってばかりだったし、今度は僕が彼女の助けになれるなら、喜んで協力しようではないか。

 その後、彼女から推薦文の原稿を受け取り、我が家の前で別れを告げた。

 家に帰り、制服から部屋着に着替えたら、さっそくもらった課題を済ませるためそのまま机に向かった。

 まだ入学して間もないこともあり、内容も小学校の振り返り程度で、量もそんなに多くはない。

 パパっと片付けたら、今度は万理華からもらった原稿に手を付けた。

 推薦文を書くのには困らず、スラスラと筆が進んでいく。

 まぁ、彼女の良いところは自分がよく知っているはずだし当たり前か。

 万理華の生徒会での姿を思い浮かべながら、原稿を前にして今日も一日が過ぎていくのだった。

 

 ──翌日。

 いつものように万理華と登校している最中、信号待ちで止まったタイミングで僕はカバンの中に手をやる。

 「昨日ちょっと推薦文考えてきたんだけど、よかったら見てくれる?」

 「早いわね、さすが勇希奈。また見とくわ」

 推薦文を受け取った万理華は、カバンからファイルを取り出して大事そうにしまった。

 その後も他愛のない話をしつつ、学園に着き教室へと向かう。

 正真正銘、今日から本格的な授業が始まる。果たしてどんな内容なのか。ワクワクもあるけど、ちゃんとついていけるのかという一抹の不安もある。

 学園生活最初の授業は英語だ。タブレットの教科書を流し見してみたけど、さすがは名門と言われるだけあって、まあまあ難しそうだった。

 チャイムが鳴り、先生が入ってくる。

 「ヘーイ、シンニュウセイノミナサン!コンニチハ!」

 「「「こんにちは!」」」

 「イイデスネ!Fresh!デスネ!ワタシがミナサンのEnglishを担当する、ラングマン デス!ヨロシク」

 なんとも陽気な先生だな。

 黒人でドレッドヘアという、英語の先生と言われなければ、ラッパーのような出で立ちに思わず面を食らってしまった。

 そんなラングマン先生だが、いざ授業に入ると面白いけど、的確に教えてくれる姿に二度驚かされた。全く、人は見かけによらないとはこのことか。

 こうして学園生活最初の全五時限の授業がはじまるのだった。

いかがでしたか?

楽しんでいただけてればいいのですが…。

まだまだ未熟ですが、応援してもらえると嬉しいです。

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