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なんだか、面白くなってきた

  体育館の中には、入学式のように椅子が並べられており、先生に促されて各自座っていく。

 数分後には新入生全員が席に着き終わる。すると突如、体育館のカーテンが一斉に閉められ、辺りを暗闇に染めていく。

 「やぁやぁ、新入生諸君!」

 一人の女性の声がしたとともに、壇上へ一点のスポットライトが灯された。

 「はじめまして。私は、中等部三年生生徒会長の宝禪院ほうぜんいん) 璃楽あきら)です。よろしくね」

 そうウィンクしながら言い放った彼女は、百七十センチはあろうかという長身に、離れていてもわかる綺麗な銀髪を携えて僕らの前に現れた。

 登校する最中にもちらほら上級生らはいたけど、ここまでの存在感というか、オーラみたいなものはなかった気がする。

 「さて、せっかくのサプライズです。長々しいことは抜きにしましょう!皆様、用意はよろしいですか?」

 生徒会長の掛け声に合わせ『おー!!』と盛大な声が体育館にこだまし、それと同時に数台のドローンが飛び立つ。

 そしてドローンは灯りを伴いながら、体育館の天井付近に文字を作っていく。形成された文字は【新入生歓迎セレモニー】と書かれており、僕はあまりの凝った演出に胸の高鳴りを抑えられなかった。

 新入生の皆んなも気持ちは同じなようで、盛大な拍手がしばらく鳴りやまなかった。

 「これだけじゃあないよ!さぁて次は──」

 その後も僕らは、あの手この手で上級生たちからの手厚い歓迎を受けた。

 そんな時間もあっという間に終わりを告げる、お昼のチャイムが鳴り響く。

 暖まった心に、一筋の冷風を吹きかけられた気分になった。けど、こんなに楽しい上級生らがいるという希望に満ちた学校生活を想像すると、そんなことは気にもならない。

 「では、これにて私ら上級生による新入生歓迎セレモニーを終わります。最後にですが─」

 そう切り出すと、生徒会長の顔つきが一気に凛々しく引き締まる。

 「もう少ししたら、生徒会選挙がございます。中等部生徒会は、中等部全生徒のことを考えなければいけない重要な役割で、責任も重大です。ですが、得られるものも沢山あるはずです!得られたものはこの先の人生でも貴重な経験となるはずです!ぜひ私らと共により良い学園を作っていきましょう!私からは以上です」

 言葉を述べ終わり一礼する生徒会長に、割れんばかりの拍手がおくられる。

 生徒会かぁ…。確かに興味はあるけど、僕はやっぱり─。

 体育館のカーテンが開き、先生に連れられて再び教室へと戻ってきた僕らは、ここで学園生活始めてとなるお昼ご飯を食べる事となった。

 私立なので学食なのだが、まぁこれが凄い。

 和食は勿論、洋食や中華。さらには日替わりで世界各国料理が用意されており、ビュッフェ形式という豪華っぷりだ。

 無難に鯖の味噌煮を中心で和食を選んだ僕は、出来上がった品を受け取り、辺りを見渡す。

 さて、万理華はっと…。

 同じく来ているであろう万理華を探す。だが、万理華は同じクラスの子らと楽しくやっているようで、邪魔するのも気が引ける。

 「あら?鞘師さん、お一人?」

 一人でキョロキョロしている僕を見つけた八嶋さんが、声を掛けてきた。

 「うん。そうだよ」

 「では、私たちと食べませんか?今、雛乃ももうすぐ来ますし」

 雛乃とは、陽川さんの下の名前である。

 「お待たせー!って、お。勇希奈じゃん!寧と何喋ってんだ?」

 「ちょうどお一人ということなので、せっかくですし私たちとお食事でもとお誘いしてたのですよ」

 「そりやぁいいじゃん!食べよ食べよ!」

 二人の誘いを無碍にする理由もないので、僕はお昼を共にすることにした。

 「いやぁ、混みはじめたね」

 「でも座れてよかったな!」

 「ギリギリでしたけどね」

 軽くやり取りした僕らは、さっそく手を合わせて食事にとる。

 陽川さんはがっつりハンバーグ中心、八嶋さんは野菜を中心とした鶏むね肉の水晶鶏という メニュー選びが、二人の個性をよく表していてとても面白い。

 「八嶋さんはボディビルダー部だったけど、陽川さんはどこ見に行くか決めた?」

 「うーん、とりあえず興味があるのがいくつかあるから、順番に見ていこうかなーって」

 「全く。優柔不断なのは直りませんね」

 「寧がスパッと決めすぎなんだよぉ」

 やはり、この二人といると楽しいな。

 彼女らのやり取りを眺めてほっこりしている中、気になっていたことを聞いてみようと、口を開く。

 「そういえば二人って、幼なじみなんだっけ?」

 「まぁ、腐れ縁ってやつです」

 「えぇ!?幼稚園からの親友じゃなかったの?」

 「親友って…よくそんな大きな声で言えますね」

 ああ、平和というのはこんな感じなのか。

 そう思いながら僕は、改めて平和を噛みしめながらお昼の一時を過ごした。

 

 そしてお昼休憩が終わり、一旦教室へと戻ってカバンを手にした僕は、いざ部活見学へと向かう。

 行くところは決まっている。

 そんな思いを胸に足を運んだのは、武道館だった。上履きを脱ぎ、階段を上る最中──。

 「いやぁ!!」

 「小手ぇ!!面っ!!胴!!」

 と勇ましい女の子の声が僕の耳に届き、ワクワクする心が隠しきれない。階段を上る足も、こころなしか弾んでいるような気がする。

 いざ、武道館の扉の前に立つと迫力のある声が、すぐ近くになり、心までも震わせられているようだ。

 そして、意を決して扉を開けた先には、想像していた通り先輩らが防具を付け、竹刀を振って練習で汗を流している。

 「こんにちは。新入生?もしかして、入部希望?」

 練習風景に見惚れていると、横から急に話しかけられた。

 「あ、はい。新入生の鞘師勇希奈です!入部希望で来ました!」

 「ほんとに!?嬉しい…!嬉しいよ!ありがとう!」

 先輩は僕の手を握り、弾けるような笑顔で歓迎してくれた。

 「あっ、ごめんね。自己紹介が遅れちゃった。私は三年の剣道部マネージャー、増岡恵麻よ。ちょっと待ってね」

 増岡先輩が「練習止め!!」との号令をかけると、ピタリと竹刀を振る手を止め、先輩らの視線がこちらに集中した。

 面を被っており直接顔は見えない。その面の奥はどんな表情をしているのだろう。ワクワクや不安な気持ちが、もうグチャグチャだ。

 「は、はじめまして!入部希望の一年、鞘師勇希奈です!」

 と深々と一礼をして先輩らに自己紹介をした。

 すると、一人の先輩が小手を外し、被っていた面の紐を解きはじめる。面を外すと、キリッとした目つきの顔が姿を現し、堅い表情のまま近づいてくる。

 なにか失礼なことでもしてしまったのかと思って様子を見ていると、堅い表情だった先輩の表情がどんどん崩れていく。終いには大粒の涙を流していた。

 「あ!ありがどう!ほんどに…入っでぐれるの?」

 さっきまでの凛々しい姿はなんだったんだと言いたくなるほどに、彼女の顔はすでに涙でめちゃくちゃになっていた。

 若干引きながら僕は「はい」と答える。

 「やっだー!!みんな!!新入部員だ!!」

 そう言って彼女は、涙ながらに他の部員に抱きついて喜んでいる。

 どういうことか理解が追いつかない僕のそばに、そっと増岡先輩が語りかけてきた。

 「ごめんね、騒がしくて。アレでも一応ウチのエースなのよ?」

 「なんで、私一人にあんなに…?」

 「それはね、ウチの剣道部はこれで全員。しかも一人を除いて皆んな三年生なの」

 ああ、そういうことか。

 部の状況を理解した僕は、ふっと息を吐いた。

 「一昔前までは星城女子の剣道部といえば、強豪で有名だったんだけどね。でも、色んな部ができたりして、いつの間にか剣道部自体の人気がなくなっちゃってね」

 「それは…なんだか寂しいですね」

 「鞘師ちゃんは、どうしてウチにきてくれたの?」

 元勇者でっていうのは、無しにしてと。

 「小学校二年生の頃なんですけど、たまたま家でYOURTUBEを見てたんです。それで偶然、オススメに星城女子の剣道部の試合がいくつかアップされてまして。

 どれも結構前のばかりなんですけど、そこで戦ってる先輩たちが、すごくカッコよかったんです」

 僕の理由に増岡先輩は、微笑みながら聞いてくれている。そんな彼女も口を開く。

 「どこが…カッコよかった?」

 「色々あるんですけど、やっぱりあの星城女子特有の道着を着て試合してるところが」

 「ふふっ。カッコいいよね、あの道着」

 小学校のころ調べてわかったけど、普通の剣道の道着というのは、紺もしくは白が定番。しかも女子となれば大方白だ。

 しかし、星城女子はというと──

 「あの淡い桜みたいな上の道着に、袖の星城女子の校章。あれを着て戦う姿が、いつかしか私の憧れになってました」

 再び増岡先輩の方に視線をやると、メガネをかけた奥で目元が微かに緩んで見えた。

 そんな中、僕はある疑問が頭の中をよぎる。

 そういえば、新入部員は僕一人なのだろうか。他には誰もいないのかな。聞いてみるか。

 「あの、増岡先ぱ…」

 「失礼します!!」

 増岡先輩に尋ねようとした時、それをかき消すように一人の大きな声が、武道館にこだました。

 「入部希望の一年、西川十百那です!よろしくお願いします!…ってあれ?」

 びっくりして後ろを振り向いた僕と、西川さんの目がバッチリ合ってしまう。

 まさか、西川さんも剣道部希望だったとは。

 「まさか君も剣道部希望だったとは!」

 同じことを思うんじゃない。全く、もう。

 「え、西川十百那さん?!あの島崎剣友会の?」

 「…まぁ、そうです」

 「いやぁ、すごい子がきたなぁ。おーい、みんなー」

 先輩の呼びかけに、ワチャワチャやっていた他の先輩らがピタリと止まる。

 増岡先輩が僕の時と同じように紹介をすると、また一段と喜びが増す先輩たち。

 実は僕も【島崎剣友会の西川】の噂程度なら聞いたことはあった。あと、手を見た時に豆ができてたから、もしかしてとは思ってたけど。

 「勇希奈くん、剣道の経験は?」

 「父さんが剣道クラブやってて、そこに混じっては」

 「なるほどねぇ。ちょっと失礼」

 そう言うと西川さんは、僕の手を見たり身体を触ったりして、まるでなにかを確認しているようだ。

 「ほぉ。制服の上からではわからなかったが、中々に良い筋肉をしているな。これはちゃんと鍛錬を積んでいないとつかないよ」

 やはり褒められるというのは、良いものだ。

 西川さんに褒められ、悪くない気分に浸っていると、彼女は増岡先輩の方へと歩いていく。

 「先輩。突然で申し訳ないのですが、防具借りれますか?」

 「良いけど…どうしたの?」

 「ぜひ、勇希奈くんと一度手合わせをしたくて」

 え?ちょっと待って。手合わせ?部活見学なのに?

「構わないわよ。鞘師ちゃんはどう?」

 ああ、なんで僕はこう面倒ごとに巻き込まれるんだ。しかも、西川さんはやる気満々だし、先輩たちもなんかワクワクしてるし。

 僕も僕だよ。なんで、こんなに──

 「…一試合だけですよ?」

 「ありがとう、勇希奈くん」

 「じゃあ、防具持ってくるね」

 そう言い残して増岡先輩は、防具を取りに部室の方へと駆けていく。

 「改めて、受けてくれてありがとう。勇希奈くん」

 「いいよ。それに、ちょうど試したかったんだ」

 「試す?」

「私、剣道クラブ以外の人とは試合したことなくってさ。自分の実力が同年代でどこまでなのかがわからないんだ。だから、嬉しいんだ」

 気がつくと僕の口角は、自然と上がっていて、目を合わせた僕らの心には静かな闘志が燃えていた。

 先輩が防具を持ってきてくれ、さっそく防具を付けた僕らは、竹刀を手に取り向かい合って一礼をする。

 三歩前に出て蹲踞し、互いに竹刀を構えた。

 そして、先輩の「始め!!」の声に合わせて試合がはじまるのだった。

いかがだったでしょうか?

今回も新キャラがいたりだとか、色々ありますけど、どうか楽しんでもらえたらなによりです。

さて、次はいよいよ十百那との試合です。

未熟ですが、頑張って書きますのでよろしくお願いします。

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