↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ややこしい婚約者に振り回されてばかりで幸せを感じられない人生でしたが、これからは幸せな未来のために歩むつもりです!  作者: 四季


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

11/21

11話「進展はそれぞれですね」

「私も……貴方のこと、フリッツのことが……好き」


 気づけばそこまで言ってしまっていた。


 胸の内で膨らみ続けていた感情。

 それはいずれ破裂する。

 平常時は何ともなく抱えていられたとしても、きっかけさえあれば、意識するより先にぱぁんとなってしまってもおかしくはない。


「そうですか、それはうれ――って、えええええ!!」


 フリッツはかなりの衝撃を受けたようで、目をくるくるさせていたが、やがてめまいに襲われて気を失ってしまう。


「だ、大丈夫!? フリッツ? フリッツ!? しっかりして!!」


 取り敢えず家の中へ連れていこう。

 寝かせておけばいつかは意識を取り戻すだろう。




「――で、気絶してしまったんですね自分は」


 横にしてそっとしておいたところ、三十分もかからずフリッツは目を覚ました。


「め、迷惑! お掛けしまして! すみません!」

「いいの、気にしないでちょうだい」


 母は相変わらず何か思っているようだ。

 離れたところからこちらをちらちら見てどこか楽しげな顔をしている。


「それより体調は大丈夫?」

「は、はい」

「なら良かった。安心したわ。ごめんなさいね、びっくりさせてしまって」

「いえそんな……」


 少し間を空けて。


「けど、本当なんですか?」


 彼は尋ねてくる。


「オリヴィエさんが自分のことを好きだなんて……」


 どうやら彼はまだかなり戸惑っているようだ。

 そういう展開は欠片ほども想像していなかったのだろう。


「本当よ」

「……その、すみません、どうしても信じられなくて」

「嘘はつかないわ」

「気を遣ってくださったのかと……えと、こういうことを言うのも、失礼……ですよねすみません」


 暫し気まずさの中で互いにじっとしていたのだけれど。


「私はフリッツのことが好き」


 やがて思いきって言ってみると。


「う、嬉しい……!」


 彼はそんな風に発して瞳を輝かせた。


 お互いに気づけていなかった相手の心。それに少しずつ近づいている。今はひしひしとそう感じる。きっと彼も、同じように感じているだろう。これまでは敢えて触れずにきたところにようやく指が触れそうな、そんな状況。距離は確かに縮まりつつある。いや、実際には、距離はもうとうに縮まってはいたのかもしれないが。その事実に向き合う時がようやくやって来ているのである。


「オリヴィエさん! ありがとうございます!」


 確かに一歩近づいた、そんな日だった。



 ◆



 ルーインは病気にかかっている。

 もうほとんど動けない。


 厳密に言うなら――死にかけている。


 ほぼ寝たきりでお世辞にも健康とは言えない状態の身体には普通の風邪でもかなりの影響が出るもの。健康体であれば多少症状が出る程度の風邪でも、今も彼にとっては致命的なものとなりかねないのだ。


「悪い、のは……オリヴィエ……オリヴィエ、なん……だ……わる、い……のは……オリヴィエなん、だ……悪女、なん、だ……あいつ……オリヴィエ、は……悪女で魔女で、けが、れ……て、いる……んだ……悪い、のは、オリヴィエ……すべての……悪、は……オリヴィエ、にある……ま、じょは……オリヴィエだ……オリヴィエ、が、悪い……悪い悪い悪い、わる……い、んだ……」


 意識が朦朧としていて、ただ、その中でもルーインはまだオリヴィエが悪いというようなことを言い続けている。


「オリヴィエ、が……わる、い……悪いん……だ、オリヴィエが……魔女、だ、から……悪女、だ、から……オリヴィエ、の、せい……なんだ、全部……僕は決して、決してそうだぜった……い、絶対、に……悪くない……はめられた……だけ、なんだ……オリヴィエ……悪女オリヴィエ……魔女オリヴィエ……穢れ、て……いる女、が、悪い……んだ、悪女が、オリヴィエが、悪い……」


 だがルーインの意識は徐々に薄れてゆく。


「オリ、ヴィエ……あく、じょが……ゆる、さ……ない、んだ……オリ、ヴィ……エは、ま……じょ……だか、ら……オリ、ヴィエ……あく、じょ……けが……れを、せお……う……おん、な、だか……ら……オ、リ……ヴィエ、は……えい、え……ん、に……ゆる、され……ないんだ……オリ、ヴィエ……ぜった……い、に……わす、れ……る、なよ……オリ、ヴィ……エ……ぼ、くは……ゆる、しは……しな……い……オリ、ヴィエ、を……」


 そうしてやがてルーインは事切れたのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
 きちんと一歩を踏み出せたオリヴィエ。  フリッツの驚きようも嬉しさから、ですね。  今まで大変だった分、これで幸せになれれば……と思うのですが。  何やら不穏な様子のルーイン。  完全に逆恨みです…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。