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 事故現場に着くと、一体の『魔導人形』が死んでいた。

 人間と同じような四肢を持ち、工事用の服を着た、見た目の年齢は20代ほどと見られる魔導人形が、路上でぐったりと倒れていた。ひとつ目のヘルメットのようなものを被った頭部は、硬いもので滅多打ちにされて、頸部からもげてしまっていた。

 触ると、すっかり冷たくなってしまっていて、表面は魔法人形から溢れた血で黒くベタついていた。

 さて、俺は魔導二輪車バイクに跨り、勘の向くまま駆けていく。

 血痕の散り方から、男がどこに向かおうとしているのか、なんとなく分かる。

 現場からそう離れていない路地の裏を、ひとりの痩せてくたびれた青年が駆けていた。まるで暗闇をかき分けて進もうとしているかのような、犬かき泳ぎのような走り方。

「おっちゃん、止まりな~」

「ひ、ひぃっ!」

「逃げんなって」

「く、来るなぁっ」

 薄暗い闇の中のネオンの光、遠くに聞こえる喧噪と、部屋から零れる灯りが僅かに路地裏を照らしている。

 軽くアクセルを入れて男に追いつき、回り込んで道を塞ぐ。

「錯乱状態……ヤク中か。どこで手に入れたんだか」

「来るな、来るなよぉ!」

 男は手の平で円を描くように空をこねると、そこから尖った緑色の棘が生まれた。それを一発、打ち出してくる。

 力場もなく、ぎゅん、と加速する弾丸。

 勢いはピストルにも及ばない。

 その弾丸へ、人差し指で迎え撃つ。

 弾丸はパキリと無数の霜を散らしながら一気に失速し、ぽとりと地面に落ちた。

「なんだよ、魔導人形をやったっていうから警戒してたのに。同じ雑魚魔法使いかよ。安心したぜ」

「なっ、なっ……!?」

「じゃあまぁ、ふんじばるか」

「うわ、わわぁ!」

 男は自棄になって、次から次へと弾丸を打ち出す。

 しかしそれらの弾丸の対処も、もはや指一本さえ必要ない。

 弾丸は、何もない空中で、次から次へと霜を飛ばして弾速を失い、地面に落下していく。

「確保ぉ~」

「やめろぉぉぉぉおおお!!」

 逃げようとじったんばったん足を動かせて暴れ狂う男。

 ひたり、と俺は男の頭を押さえつける。

 男は白目をむいて、バタリと倒れた。


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