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【第9話】強さを求めて

 昨日は初めての戦闘ということもあり、死を間近に感じることで、3人の体はより一層疲れを溜めていた。

 その晩は、オーク肉を食し、すぐに眠りについた。


〜翌朝〜


 3人は、昨日のキングオークとの戦いを経て、思うところがあった。

 それは、この世界で生きていくには、まだまだ力が足りない、ということである。

 そこら辺で見つけた洞窟に潜む、キングオークに3対1で挑んで、ギリギリの決着だったのだ。

 きっとこの世界には、あのキングオークをも超える、強敵、難敵が数多(あまた)といるのだろう。


 実際、この世界には魔物が巨万(ごまん)と生息しており、ランクがC〜Sで分かれているが、なんとそのうちの半分以上をA〜Sが締めているのだ。

 その理由としては、最近、魔物の勢力が強まっていることにあるが、詳しいことはまだ先の物語である。


 そんなことは知る由もない3人であったが、さらに強くならなければ、生きていくことは出来ないということに気づき、その日から、各々で訓練を始めることとなった。


 まず、ヴィルが行うのは、スキル研究であった。

 ヴィルの能力<ウイルス>は、とても強力な能力であるが、チックのように体が強くなるわけではない。

 また、バーナのように、味方をサポートできるような能力でもなく、主に戦闘特化型の能力と言えるだろう。

 加えて、ウイルスという、これといった形のないものであることから、様々な応用が利く。

 よって、ヴィルはそこに目をつけ、スキル研究に(はげ)むのであった。

 ヴィルが行うスキル研究には、主に2種類ある。

 1つは、全く新しいスキルをゼロから生み出す「スキル開発」。

 そしてもう1つは、出来上がったスキルの技術を磨き、スキル自体を強くしていく、「スキル研鑽(けんさん)」である。

 スキルの数が少ない今は、強くなくとも、スキルの数を多くし、相手に混乱を与えることを目的として、スキルの開発を行うこととした。

 スキルの開発と言っても、すぐにポンポン作れるようなものではない。

 確かに、ヴィルの能力の特性上、様々な応用ができ、開発可能なスキルの種類は、他の2人と比べても圧倒的に多いだろう。

 しかし、能力とは、体の一部。幼子(おさなご)が、箸を使えるようになることや、自転車に乗れるようになるのと同じように、スキルの開発には、ある程度の期間と、練習が必要なのだ。


 その頃バーナは、ヴィルと同じように、自身のスキルを磨いていたのだが、バーナが行うのは、ヴィルとは少し違っている。

 ヴィルは、ゼロから新たなスキルを生み出すことでスキルの種類を増やしているが、バーナは、バナナに命を与えることで生まれる『バナナモンスター』を応用することで、スキルを増やしている。

 まさに、ヴィルの「スキル開発」と「スキル研鑽(けんさん)」の中間とも言えるだろう。

 現在の『バナナモンスター』は、顔で殴る、噛み付く、体で相手を縛り上げる、の3つの技しか出来ないが、バーナが技を教え込めば、様々な応用が可能となるのである。

 教え込むと言っても、『バナナモンスター』は、ペットのようなものではなく、バーナが直接操作することもできるものだから、AIが搭載されたラジコンのようなものと捉える方が近いだろう。

 また、バーナの能力<生命>にも、応用がかなり利く。

 ただ命を与えるのではなく、その命が継続する時間または期間の調整、その性格や風貌(ふうぼう)など、品種改良のような感じで、様々な形態に『バナナモンスター』を変化させることが出来る。

 バーナは、ただ『バナナモンスター』と(たわむ)れているだけのようにも見えるが、実は、しっかり強くなるために、色々と工夫をしていたのだ。


 一方チックはというと、丸太を掻き集めて、バーナの生成した葉やツタを使って、丸太を(たば)ね、さらに重い筋トレ器具を作って、筋トレをしていた。

 ほか2人のように、スキルを開発したりはしないのかとも思うが、チックの能力は<筋肉>であるため、筋トレが、強くなるための一番の近道であり、チックが筋トレをするのも必然と言えるだろう。

 その成長速度は凄まじく、初めは重そうに上げていた丸太の(たば)も、少しの間筋トレを続けると、いとも簡単に上げられるようになってしまうのだ。

 また、能力<筋肉>には、筋肉痛無効というチート特性が付随(ふずい)しているため、どれだけ過酷な筋トレを行おうと、次の日に筋肉痛を感じることはないのである。


 こうして、3人それぞれが異なる訓練を始めてから、3日が経過した。

 強くなるための自己研鑽(じこけんさん)というものは、元の世界ではなかなか出来なかったこともあり、意外にも、3人はその訓練に楽しさすら感じていた。


 しかし、いくらスキルを開発し、いくら体を強くしようとも、実戦で使いこなせなければ意味がない。

 それに一番早く気がついたチックは、ヴィルとバーナにとある提案を持ちかける。


「俺ら毎日、強くなるためにとか言って、スキルを作ったり、筋トレしたりしてるけどよお、やっぱり実戦をしないと意味がねえから、ちょっと強い魔物を探して、戦いに行こうぜ!」


 そう言われた2人は、チックの言葉に納得する。

 しかしヴィルは、少し困った顔をしながら2人に話す。


「そうだけどなぁ、まだオークは残ってるし、食べきってもねえのに他の魔物を倒すのは、ちょっとなぁ……」


 オークは、確かにまだ残っている。ヴィルの言葉には、食べ物を無駄にしないためにという意味もあったのかもしれないが、心のどこかに、キングオークの言っていた“人間と魔物の共生”という言葉が引っかかっていたのかもしれない。

 そして、少し頭を悩ませた(すえ)、チックは代替案を提案する。


「それじゃあ、俺たち3人が1対1で戦うっていうのはどうだ? それなら、新しいスキルとかも見せられるだろ?」


 これにはヴィルも賛成したが、今度はバーナが、少し不安そうな顔をしている。


「でもさ、攻撃当てたりしたら危なくない? チックのパンチとか、お腹に喰らったら、私死ぬんだけど……」


 確かに、ここで怪我でもしようものなら、大変なことになる。

 小さな怪我なら、市場で買ってきた薬を塗れば、治るかもしれないが、大きな怪我をしてしまったら、薬程度では治すことは出来ないのだ。


「確かに、バーナは体が小っさいもんな!」


 チックがバーナをからかうと、バーナは、その言葉に腹を立てる。

 2人のいつも通りの喧嘩を横目に、ヴィルは、あまり危険でない実戦を考える。


 皆の能力は、体に触れるととても危険である。また、長時間の戦闘を行えば、冷静な判断が出来なくなるため、それもまた危険。

 つまり、相手の体への攻撃を目的とせず、かつ短時間で決着がつくルールの戦闘。

 ヴィルは、頭をフル回転させ、考える。

 そして、ヴィルは、小さな声でボソッと(つぶや)く。


「しっぽ取り……」


 喧嘩をしていて聞こえなかったチックとバーナが、ヴィルが何か言っていたのに気づき、聞き返す。


「ヴィル! 今なんて言ったんだ?」


 ヴィルは、チックとバーナに、もう一度その案を言う。


「しっぽ取り……とか、どうだ?」


 ヴィルの新たな提案を聞いたチックが、ヴィルに、ある疑問を投げかける。


「お〜。なんでしっぽ取りなんだ? しっぽ取りなんかやっても、本番では役に立たねえ気がするぞ!」


 チックの言う通り、本物の敵と戦う場合は、相手の体を攻撃して戦うため、しっぽ取りをやったとしても、本番で役に立つことは考えられない。

 しかし、ヴィルには考えがあるらしく、自信満々に答える。


「全く、チックは分かってないなぁ。怪我をしたら危ないから、体はなるべく狙わない。けど、これじゃあ実際の敵と戦う際の練習にはならない。けどなぁ、相手の背後をとるっていう練習にはなるだろ? 相手の背後をとれれば、後は攻撃をするだけ。ちゃんと本番にも役に立つと思うぜ」


 それを聞いた2人は、“おぉ〜”と納得し、ヴィルの案である、しっぽ取りをやることに決めた。


 ルールはとてもシンプルで、ズボンの後ろ側に挟んだ、細い紙でできたしっぽを取った方の勝ち。

 怪我をしない範囲での相手への攻撃は可。

 体に攻撃をするのは危ないと言っていたが、本番は、常に死と隣り合わせである。

 少しでも本番に近い形で試合ができるように、多少の攻撃を許可したのである。


〜チックvsバーナ〜


 まずはじめに、チックとバーナが対決をすることになった。

 紙を細くちぎって、ズボンの後ろに挟み、2人がポジションに着いて、試合が始まる。


「よーい、スタート!」


 ヴィルの開始の合図によって試合が始まった。

 先に動き出したのはチックだった。


「最速で終わらせてやるよ〜!!」


 そう言いながら、驚異的(きょういてき)な速さでバーナへと襲いかかるチック。

 そのまますぐに勝負が終わるのかと思われたが、バーナは(いた)って冷静な顔をしている。

 すると、チックの足元からゴロゴロという音が鳴ると同時に、地面に亀裂(きれつ)が入り始めた。

 それに気づいたチックは、咄嗟(とっさ)に、後ろへと跳ぶ。

 亀裂(きれつ)の入った地面からは、バーナのスキル『バナナモンスター』が4体現れたのだ。

 よく見てみると、それぞれの頭の大きさや、茎の太さが違っているように見える。

 それを見たチックの顔が、少し厳しいものへと変わった。

 その様子を見たバーナがチックを(あざけ)り笑いながら話し始める。


「どう? チック、私の可愛い『バナナモンスター』たちの新しい形態は。それぞれ色んな技を使うから、チックはここまで絶対来れないよ〜」


 観戦しているヴィルには、目も鼻もない、(きば)が鋭く口が大きいあの怪物のどこが可愛いのかが理解できなかったが、まあ、スキルを色々いじてっいるうちに、愛着が湧いたのだろう。

 先ほどまで少し厳しい表情をしていたチックは、ニヤリと口角を上げ、なぜか自信に満ちた表情へと変わる。


「確かに厄介だけどよお、俺だって新しいスキルがあるんだよ!ぶっ潰してやるぜ!」


 その言葉を聞くと同時、『バナナモンスター』は、チックへと襲いかかる。

 チックは、腕を硬化させ、『バナナモンスター』を迎え撃つ体勢をとる。

 4体の中で一番頭が小さく、茎の細い『バナナモンスター』が、初めにチックの眼前(がんぜん)まで近づき、チックの腕に絡みつく。


 そう、この4体の中の、一番頭が小さく細い個体は、相手に絡みつき、動きを封じる役目をもつ。


 次に、チックの元へ、普通の見た目の『バナナモンスター』が近づいてくる。

 しかし、通常の『バナナモンスター』と異なるのは、牙がないことである。なぜか口を細く尖らせている。

 次の瞬間、その『バナナモンスター』の口から、小さな黒い粒が、ものすごい速さで放たれる。

 チックは、細い個体に腕を掴まれており、その場から動くことが出来ないため、その黒い粒を、硬化させた右腕でガードする。


「チック〜! もう辛そうだね〜!」


 自分は体を動かしてないのに、性格悪いやつだなぁ〜、とヴィルはバーナのことを目を細めて見る。

 防戦一方(ぼうせんいっぽう)となったチックが負けるのも時間の問題かと思われたその時、チックの『硬化』の範囲が、右腕だけでなく、全身へと変わる。

 チックは全身を硬化させることで、黒い粒の攻撃の一切を無効化することに成功した。

 これにはバーナも少し驚き、動揺を見せるが、チックは依然としてその場から動けない。

 バーナはさらに多くのバナナを撒き散らし、細い個体を大量に生み出す。

 次々と生み出される『バナナモンスター』の細い個体が、チックに向かって襲いかかる。

 しかしチックは、左腕に巻き付く細い個体を掴んで叫ぶ。


「こんなので俺を止められるわけねえだろ〜!!」


 チックがそう叫びながら、その細い個体を全力で引っ張る。

 すると、それが生えている根元から、“ブチブチブチ”という音が聞こえると同時、その細い個体は、チックによって引っこ抜かれてしまったのである。

 チックは、その場で左腕をブンブンと振り回し、引っこ抜いた細い個体を腕に巻き付けると、それを他の個体に向かって、カウボーイのように投げつけた。

 見事、それはチックに襲い来る細い個体らに巻き付き、縛り上げることが出来た。

 残る『バナナモンスター』は2体。通常の個体と、茎が太く、動きが遅い個体である。

 チックは、動かなくなった細い個体の上を通り、バーナに向かって一直線で突っ込む。

 しかし、通常の個体がチックに対して突進し、頭突きを食らわせようとする。

 それを見てチックは、右手の拳に力を込めて、その通常の個体の頭を思い切り殴る。

 通常の個体の頭はひしゃげ、そのまま、その場で動かなくなった。

 チックとバーナとの距離は、もうあとわずか。

 だが、その間には大きな個体が(たたず)んでいる。

 バーナは、その後ろに隠れており、チックからバーナの姿が(うかが)えない。

 チックは、またも右手の拳に力を込めて、その大きな個体に殴りかかる。

 けれども、“ミシミシ”という音はするが、その大きな個体はビクともしなかった。

 岩をも砕くチックのパンチ力を耐えるとは、途轍もない防御力である。

 破壊できないなら、とチックは回り込んでバーナのしっぽを取ろうと考える。

 しかし、回り込もうとすると、大きな個体から、巨大な葉が生え、その道を(ふさ)がれてしまうため、バーナに辿(たど)り着くことができない。


「めんどくせえな!」


 チックはそう言うと、その場で立ち止まり、硬化させた右腕に力を込め、最大出力で、この大きな個体を破壊しようと構えに入る。

 それを見たヴィルが、能力<翠眼>で、チックの力量を測定する。

 すると、その拳を放つと、少なくとも家が破壊され、とても危険な状況になることが分かった。


「おいチック! やめろ!」


 ヴィルは、必死にチックに対して声をかける。

 しかし、チックは集中モードに入っているのか、ヴィルの声が全く聞こえていないようである。

 これはもう終わりか……と思ったその時、チックの後ろで動かなくなっていた『バナナモンスター』の細い個体のうちの1体が、動き出し、チックのしっぽを目掛けて突っ込んだ。

 チックは集中しすぎて、周りが見えなくなっていた。

 その隙に、細い個体はチックのズボンに挟まっているしっぽを“スポン”と取り、決着がついた。

 その感覚で自分が負けたことに気がついたチックは、拳を下ろした。


「おい〜! マジかよ〜!!」


 まさか自分が負けるとは思っていなかったのか、とても悔しそうにしていた。

 バーナの多方面からの多様な攻撃により、チックvsバーナのしっぽ取りは、バーナが勝利することとなった。


〜ヴィルvsバーナ〜


 試合が始まり、バーナが前回と同じように、バナナを撒き散らすと、地面から『バナナモンスター』が現れる。

 今度は、4体全てが、細い個体だけとなっていた。

 相手に合わせて戦闘スタイルを変える。バーナの成長具合に、チックは感心する。

 きっと、チックは動きが速く、力も強いから、多様な個体で攻撃を仕掛けなければ、隙を生み出すことは出来ない。

 しかし、ヴィルはチックに比べれば動きが劣る。

 ゆえに、細い個体で四肢(しし)を封じれば、簡単にしっぽを取ることができる、とバーナは思ったのだろう。

 『バナナモンスター』が一斉にヴィルに襲いかかる。

 だが、ヴィルのもう1つの能力は<翠眼>。

 ヴィルは、バナナモンスターをじっと見て、次の動きを読む。

 ヴィルは、バーナが、四肢(しし)を拘束しようとしていることを読み、『バナナモンスター』に掴まれる直前、右に大きく飛び跳ね、その攻撃を回避する。

 回避すると同時、ヴィルは手を前に伸ばし、指5本をバーナの方向へ向ける。

 次の瞬間、ヴィルの5本指全てから、ウイルスの弾が生成され、バナナモンスターの根元へ向かって放たれる。

 4発全てが命中し、茎が瞬時に腐り始め、バナナモンスターはだんだんと弱って、その場に崩れ落ちる。

 しかし、ヴィルの小指から放たれた1発は、他の4発とは少し離れたところに放たれていた。

 4体のバナナモンスターが一瞬にして、倒されたことに焦りを感じ、バーナは急いでバナナを生成する。

 ふとヴィルの方を見ると……なんとそこには、ヴィルの姿はなかった。

 試合中に相手を見失うのは、死も同然である。

 バーナは必死に周りを見るが、一向にヴィルが見つかる気配がない。

 その時、“スッ”という音とともに、バーナは、腰のあたりから、何かが抜けたような感覚があった。

 後ろを恐る恐る振り返ると、なんとそこには、妖しく笑いながらバーナのしっぽを手にする、ヴィルの姿があった。


「はい、俺の勝ち」


 ヴィルは、ポケットに片手をつっこんだまま、余裕そうな表情でそう言った。


 何が起こったのか全く分からなかったチックとバーナ。

 チックはその凄さに感動して、走ってヴィルの元へ行き、問いを投げる。


「おい! ヴィル! 今のなんだったんだよ! なんか急にヴィルが、バーナの後ろから出てきたから、俺、びっくりしすぎて心臓飛び出るかと思ったぜ!」


 一体何が起こっていたのか……

 実はあの時小指から放った1発は、バナナモンスターを狙ったものではなく、バーナのすぐ後ろに向かって撃っていたのだ。

 しかし、なぜそんなことをしたのか。ヴィルが自身のスキルについて話し始めた。


「俺がこの3日間で開発した新しいスキルだよ。『Virus(ウイルス) Teleport(テレポート)』って言うんだけどな……」


Virus(ウイルス) Teleport(テレポート)

自らの能力でウイルスを生成した場所へ、自由に瞬間移動ができる。


「つまり、バーナの後ろに撃って、地面に広がったウイルス地点に瞬間移動したってわけだよ」


 ヴィルから説明を受けても、2人は仕組みを理解出来ず、ただポカンと口を開けて立っていた。


 そうして、ヴィルとバーナの戦いはあっさり終わり、あっという間にヴィルとチックの最終試合となった。


 早速始めようと、2人がポジションについたとき、チックが奇妙なことを言い出した。


「お前ら、今の聞こえたか?」


 2人はなんの事か全く分からず、ヴィルがチックに聞き返す。


「ん? 何も聞こえなかったぞ。何か聞こえたのか?」


 チックも、あまりに急なことで、あまり覚えていないようだったが、必死に思い出そうとする。


「なんか、子供の叫び声……みたいな?」


 思わぬ返答に2人は驚く。

 そして、チックが2人に言う。


「行ってみた方が良くねえか?」


 本当に子供の叫び声だとしたら、確かめに行っても良いのだが、2人には全くその声が聞こえなかったこともあり、妙に信じ難い。

 しかし、ヴィルは、あることに気がつく。

 そう、それは、チックの能力が<ニワトリ>であり、それによって耳が、通常の人間より発達しているということである。

 ヴィルが、それをバーナに伝えると、バーナも納得したようで、2人はチックの言うことを信じることにした。


「場所は分かるのか?」


 ヴィルがそう聞くと、チックは黙って、首を縦に振る。

 それなら急いで向かおう、と3人は、念の為武器を持ち、チックが言う、子供の叫び声がする方向へと向かっていくのであった。

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