【第13話】幹部会議(3人の正体)
ルルの告げた衝撃的な一言、それは、この世界を騒がせるほどの超ビッグニュースであった。
ワーマ国王が全員に席に座るように指示し、全員が元の席に戻ると、ルルの話を聞くことになった。
それからルルは、3人の水晶の光り方が、他の転移者とは違っていたことについて、事細かに説明を行った。
その説明を受けて、サンが口を開く。
「確かに……その光り方は異常ですね。私のところにも、何人もの転移者がやってくるのですが、そんな話は聞いたことがないですね」
すると、その話を黙って聞いていたワーマ国王に、エースが疑問に思ったことをぶつける。
「でも、ワーマ国王は、水晶の光り方を見て、それが分からなかったんすか? 今まで色々な転移者を見てきたなら、それくらい分かると思うんすけど……」
それを聞いた瞬間、ワーマ国王の顔が一気に険しくなる。
そして、またしてもゴニョゴニョと小さな声で呟き始めた。
「それは……その、そうだ……だから……」
周りの皆も、困った顔でワーマ国王を見つめる。
このままでは話が進まないと思ったのか、サンが、口を開く。
「それにしても、もしその3人が本当に複数能力持ちなのだとしたら、大問題になりますね」
それに続けて、シュヴェルトも話し出す。
「そうですね……転移者の複数能力持ちは、この世界に7人……もしその3人が複数能力を持っているのだとしたら、それを加えても10人しか存在しない、とんでもない逸材です」
2人の会話を聞いて、ワーマ国王は悔しそうに、頭を机に打ち付ける。
そこで、シュヴェルトがある提案をする。
「きっと彼らは、どこかの王国で生活をしているはずです。比較的近いグアルム王国やレイン王国を捜索してみるのはいかがでしょう?」
その提案を受け、ワーマ国王は机に打ち付けていた頭を起こす。
「そうだな! 一度王国から追い出した身だが、高い地位につけるとでも言っておけば、素直に戻ってくるだろう!」
能力が2つの超逸材であると分かった瞬間に手のひら返しで、謝ろうともせずに戻ってきてくれると思っているワーマ国王は、やはりどこまでも傲慢で意地汚い人間である。
そして、どのようにして3人を捜索するかについて話し合うことになった。
「やはり、ワーマ王国からは一度追放しているので、見つけた際に、万が一戦闘になった場合に備えて、各戦闘部隊から何人かを選抜して捜索させるべきかと思います。」
シュヴェルトの提案に、ワーマ国王は少し思考する。
すると、エースがワーマ国王とルルに対して問いを投げる。
「ところで、あの3人の能力って何なんすか?」
ワーマ国王は、3人を追放してから少し期間が空いていたので、もう能力のことなど忘れていた。
そこで、ルルが答える。
「当時は1つだと思っていたので、それぞれ1つずつしか能力が分からないのですが、バーナ様は<バナナ>、チック様は<ニワトリ>、ヴィル様は<ウイルス>と、水晶には表示されていました」
それを聞いて、シュヴェルトが、エースに疑問をぶつける。
「しかしエース、彼らの能力を聞いてどうするのだ?」
その質問に対し、エースは軽く答える。
「あ〜、強そうな能力だったら、俺らとかが行った方がいいかなって思ったんすけど、聞いた感じあんまり強そうじゃなかったんで、下の奴らに捜索させても問題なさそうだなって思ったんす」
それに対して、ルルが神妙な面持ちで、エースに対して言う。
「しかし、彼らの他の能力が、ものすごく強力かもしれません。ですので、油断は出来ませんよ」
そこで、目を瞑って思考をめぐらせていたワーマ国王は、ついに、皆に対して指示を下した。
「シュヴェルトの言う通り、あいつらがいると思われる場所は、おそらくレイン王国かグアルム王国だろう。捜索範囲はその2つの王国に絞って、それぞれ捜索をしてもらおう。そして、奴らの戦闘力は未知数だが、そこまでの戦闘力があるとも考えにくい。よって、各戦闘部隊から20名ずつ、捜索部隊として選抜し、その中に、各戦闘部隊のトップ隊員であるお前らにも入ってもらおう」
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ここで、各戦闘部隊の特性、隊長、トップ隊員について紹介する。
<第1戦闘部隊(魔導術戦闘部隊)>
第1戦闘部隊隊長:サン・ドーナ
能力:雷
特徴:冷静で、頭の回転が速い。その能力自体の強さもさることながら、頭の回転の速さで、戦闘力はワーマ王国随一。
第1戦闘部隊トップ隊員:フォー・ディーン
能力:4次元
特徴:物静かで、穏やかな性格。この世界に伝わる3大貴族のうちの1つ、ディーン家の4男。
<第2戦闘部隊(剣術戦闘部隊)>
第2戦闘部隊隊長:シュヴェルト・ヴァルツ
能力:衝撃吸収
特徴:真っ黒な鎧を全身に纏い、真っ黒な大剣を持っている。甘いものが好き。
第2戦闘部隊トップ隊員:エース・ウォード
能力:マッハ
特徴:おちゃらけた性格で、ワーマ国王から好かれている。あらゆる剣を使いこなせるが、細長い剣が好み。
<第3戦闘部隊(格闘術戦闘部隊)>
第3戦闘部隊隊長:アーツ・ショック
能力:衝撃波
特徴:頑固で意地っ張り。超筋肉モリモリの打撃専門。筋肉が太すぎて背中が痒いのにかけないのが最近の悩み。
第3戦闘部隊トップ隊員:マルソ・アール
能力:柔軟
特徴:能天気な性格で行動が読めない。柔軟な動きで攻撃を躱して、正確に相手の急所を突く。
<第4戦闘部隊(隠形術戦闘部隊)>
第4戦闘部隊隊長:ビリー・テルス
能力:透明化
特徴:隠形術を極めたジジイ。姿が見えず、音も出さない。夜に行動することが多い。
第4戦闘部隊トップ隊員:レンス・サウンド
能力:消音
特徴:無口。誰も彼の声を聞いたことがない。
<第5戦闘部隊(射撃術戦闘部隊)>
第5戦闘部隊隊長:クレア・ヘル
能力:千里眼
特徴:千里先まで見えるわけではないが、約1km先の塩粒の数を数えられるほどに目が良い。ワーマ王国一の狙撃手。
第5戦闘部隊トップ隊員:フォルン・フェア
能力:追尾
特徴:荒くれた性格で、周りからは問題児扱いされている。対象に弾が当たるまで弾が追尾してくる。
各戦闘部隊には、約100名ずつ隊員がいる。他の王国に比べて小さな王国ながらも、他の王国に勝るとも劣らない戦闘力を持っている。
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ワーマ国王の命令に、エースが気だるそうに叫ぶ。
「え〜! 俺も捜索するんすか〜!? きついっすよ〜! 俺こういうの苦手っすも〜ん!」
そのエースの発言に対して、ワーマ国王が机を“バン”と叩き、にっこりと不気味な笑顔を浮かべながらエースに問いかける。
「私に何か文句でもあるのか?」
それを受けて、エースはすぐに姿勢をピンと正して、敬礼をして言う。
「いえ! 全くもってございません!」
ワーマ国王は、満足そうに笑う。
すると、ずっと黙っていた第5戦闘部隊トップ隊員のフォルンが、ワーマ国王に質問する。
「ワーマ国王〜、もしその3人を見つけたとして、万が一戦闘になった場合に、そいつらのことを撃ち殺しちゃったらどうなるんすか?」
そんな質問をするフォルンに対し、第5戦闘部隊隊長のクレアが、机を“ドン”と叩いて叱りつける。
「あくまでワーマ王国に連れ戻してくるのが目的なんだから、殺しちゃダメに決まってるでしょ!」
その時、ワーマ国王が両肘を机につけて、フォルンを睨みつけながらニヤリと笑った。
「その時は……任務失敗と言うことで……分かっているな?」
その時のワーマ国王からは、どす黒く濁る(にご)オーラが漂っていた。
そのあまりのオーラに、フォルンは少し怯える。
そんなフォルンをみて、第3戦闘部隊トップ隊員のマルソが、フォルンに近づき、肩に手を置くと、ヘラヘラと笑いながら言う。
「君の殺しに特化したような能力じゃ、今回の任務は、君にとってはかなりハードかもしれないね〜(笑)」
マルソの鼻につくような馴れ馴れしい態度と、自らの能力を馬鹿にするような煽りに、荒くれた性格でキレやすいフォルンは、すぐにキレた。
「あ!? じゃあてめえに風穴開けまくってやろうか!?」
フォルンが声を荒らげてそう言うが、マルソは変わらずヘラヘラとしている。
「わあ〜怖〜い! まあ君の能力じゃ僕には勝てないと思うけど、出来るもんならやってみれば〜?」
懲りずに煽り続けるマルソに対し、フォルンは席を立って、マルソの胸ぐらを掴む。
「てめえ! 俺の事舐めてんじゃねえぞ!」
会議室の中で、ましてや国王の前であるにも関わらず、喧嘩をしてしまうとは、実にみっともない。
このまま喧嘩をされても困るということで、クレアが2人の間に入って喧嘩を止める。
「やめなさい! 2人とも! 国王様の前でみっともないわよ!」
それに続くように、第3戦闘部隊隊長のアーツが、マルソに向かって怒鳴る。
「全く、会議をしている時に、わざわざ他の戦闘部隊を煽るな! 隊長としても情けないぞ!」
マルソは、“は〜い”と一言だけ言うと、自分の席に座った。
フォルンも、マルソに向かって舌打ちをすると、自分の席についた。
マルソ・アールとフォルン・フェア。この2人は、とても相性が悪く、近くにいるだけで喧嘩が起きてしまうのだが、この2人の実力は、各戦闘部隊では群を抜いており、お互いにトップ隊員に相応しい実力を持っているのである。
ちょっとしたハプニングがあったが、捜索について詳細に話し合いを行う。
そこで、シュヴェルトがワーマ国王に提案をする。
「彼らは、グアルム王国とレイン王国のどちらかで生活をしていると見ていいでしょう。しかし、レイン王国に対して、グアルム王国の国土は約3倍です。ですので、グアルム王国とレイン王国には、3:1の比で捜索部隊を送るのが良いでしょう」
シュヴェルトの提案に、ワーマ国王は静かに頷く。
すると、クレアが口を開いた。
「可能性は限りなく低いかもしれませんが、ワーマ王国に不法滞在している可能性もあります。ですので、私たち第5戦闘部隊は、ワーマ王国内を捜索するのはどうでしょうか?残りの4つの戦闘部隊なら、綺麗に3:1で分かれることも出来ますし」
クレアの提案も受け、ワーマ国王は、5つの戦闘部隊に指示を下す。
「よし、クレアの千里眼なら、ワーマ王国内の捜索が捗るだろう。よって第5戦闘部隊には、ワーマ王国内の捜索を頼む。そして、グアルム王国は国土面積が大きい分、野生の魔物も多数いることから、かなりの戦力を送った方が良いだろう。よって、第1戦闘部隊、第2戦闘部隊、第4戦闘部隊に、グアルム王国での捜索を頼もう。レイン王国には第3戦闘部隊が捜索に行ってくれ」
皆、真剣な表情で、ワーマ国王の指示を受け取る。
捜索をとても嫌がっていたエースが、隣に座る第1戦闘部隊トップ隊員のフォー・ディーンへと泣きつく。
「もう〜! フォー君、一緒に頑張ろうなぁ」
そんなエースに対し、フォーは冷たい視線を送って、冷たく返す。
「エースさん、泣きつくのはやめてください。服が濡れるので」
フォーに冷たく返されるエースは、大人しく席に戻ってフォーの方を見つめて微笑みながら言う。
「フォーはほんと冷たいよなぁ。もっと感情を表に出せよ〜」
エースからそう言われても、フォーは一切表情を変えず、またしても冷たく返す。
「僕は別にこれで困ったことはないので」
それを聞いて、エースはクスッと笑った。
そんな2人のことはさておき、ワーマ国王がその場で立ち上がり、口を開く。
「今日は、隊員の中から数名を捜索部隊に選抜したりと色々忙しいから、明日から捜索を開始するぞ!」
ワーマ国王の生き生きとした掛け声で、場の士気が鼓舞される。
そしてここから、3人はまだ知らない、大捜索が始まるのである。




