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【第12話】幹部会議(レイン王国との対談)

「それではこれより、ワーマ王国幹部による会議を始める!」


 ワーマ国王の始まりの挨拶によって、幹部会議が始まる。

 今日の会議で呼ばれたのは、ワーマ王国にある5つの戦闘部隊の隊長と、その部隊の隊員のトップ、そして、ルルともう1人の側近、国王を合わせ、計13名である。


 長い長方形の机の一番奥には、国王が座っており、その横に側近、国王に近い順に第1戦闘部隊〜第5戦闘部隊といった感じで並んでいる。


 幹部の皆が、姿勢を正して、礼をする。


 今日のワーマ国王は、どうやら機嫌が悪いようで、声の裏に怒気(どき)がこもっているように聞こえる。

 ワーマ国王は、溜息(ためいき)をつきながら、会議のテーマについて話し始める。


「はぁ……今日の会議は、昨日のレイン国王との対談についてだ」


 そう、ワーマ国王は昨日、レイン国王との対談を行っていた。

 どうやらその対談に不満があったのか、ワーマ国王の声がだんだんと荒いものへと変わり、顔が赤くなる。


「レインの奴め……弱小王国というのに、この私に歯向かいおって……」


 ワーマ国王のあまりの怒りに、幹部の中でも下の方の者は、少しの恐怖を覚える。

 そんな空気の中、ある1人の幹部が声を上げる。


「ワーマ国王〜、一体何があったのか教えてくださいよ〜」


 そう発言したのは、第2戦闘部隊トップ隊員のエース・ウォード。

 第2戦闘部隊では突出した力を持っており、その性格からか、ワーマ国王からも気に入られている。


「分かった……昨日の出来事を話そう……」


 そう言って、ワーマ国王は、レイン国王との対談について語り始める。


〜昨日〜


 レイン国王、アクア・レイン第2王子、アイス・レイン第3王子の3人は、ワーマ王国の城の中にある、大きな応接室へと招かれる。

 応接室の前には、黒い鎧を着た大きな人間が立っている。

 後に分かることになるが、この黒い鎧を着た人間は、第2戦闘部隊隊長の、シュヴェルト・ヴァルツである。


「貴様ら、何者だ?」


 シュヴェルトは、3人に問いかけ、自身の持つ大きな黒剣を3人に向ける。

 アイスは、その黒剣に(おび)えて体が震える。

 アクアは、(おび)えるほどではないにせよ、シュヴェルト隊長を警戒(けいかい)している。

 そこで、レイン国王が、シュヴェルト隊長に答えを返す。


「私たちは、ワーマ国王と対談をするために、お隣のレイン王国からやってきた。私が、レイン王国国王の、アルマ・レイン、こちらが、第2王子のアクア・レイン、そしてこちらが、第3王子のアイス・レインだ。早く中へ入れろ」


 そこまで話を聞くと、シュヴェルトは頷いて、応接室の扉の前に立つ。


「分かった。少しここで待っていろ」


 そう言い、シュヴェルトは扉を“コンコン”と叩くと、応接室の中へと入っていった。


「国王様、レイン王国の者が3名来ております」


 シュヴェルトが、ワーマ国王にそう伝えると、ワーマ国王は、顔を(しか)める。


「分かっておる……奴らを中に入れろ」


 シュヴェルトは、応接室を出ると、3人の元へと戻ってくる。


「国王様からの許可が下りた。貴様らの入室を許可しよう。行くが良い」


 3人が応接室へと入ると、シュヴェルトは、勢いよく扉を“バタン”と閉める。


 3人が、用意された席へと座り、ワーマ王国とレイン王国の対談が始まった。


「はぁ……今日は何の用ですかね、レイン国王」


 ワーマ国王は、ため息をつき、3人を(さげす)むような目で見ながら、面倒くさそうに問いかける。

 そんなワーマ国王の態度に、3人は腹が立ったが、怒りに飲まれては対談は進まない。

 怒りを押さえ込み、レイン国王がゆっくりと話し始める。


「前も話をしたように、ワーマ王国への武器の輸出価格を引き上げる件で来た」


 それを聞いたワーマ国王は、またしても大きなため息をついて、話す。


「はぁ〜……またその話ですか。そもそもなぜ値上げをする必要があるのですか?」


 その質問に対し、レイン国王は、怒りの形相(ぎょうそう)で、理由を説明する。


「最近は、我々レイン王国で取れる鉱石が少なくなってきていてな〜、他の王国から輸入する鉱石の価格も高くなっているんだよ。だから、このままの価格で輸出するのは無理だ」


 するとワーマ国王が、椅子に深々と座って、(あご)を前に突き出しながら、レイン国王に対して問いをなげかける。


「そうですか。それで、一体どれほどの値上げを希望しているのですか?」


 レイン国王は、紙を“バチン”と机に叩きつけ、高圧的な態度で言う。


「こっちとしては、現在の価格の50%は値上げしてもらわないと困るね〜。これでも利益は出ないんだけどね〜」


 その答えを聞いて、ワーマ国王は不気味に笑い出す。


「はっはっは、レイン国王、冗談を言っては行けませんよ。で、本当のところは、どのくらいの値上げを望んでいるのですか?」


 ワーマ国王は、レイン国王の要求を、冗談だと言って聞こうとしない。

 さらには、レイン国王を(にら)みつけ、ものすごい重圧で、押しつぶそうとする。

 それに対し、レイン国王はまっすぐな眼差(まなざ)しをワーマ国王に向けて、力強く答える。


「冗談だ? こっちは真剣だよ。原材料の高騰、職人の高齢化。それで今レイン王国は貧困状態なんだ。50%の上乗せくらい応じるよな?」


 圧をかけたにも関わらず、むしろレイン国王が圧を押し返している。

 答えが変わらず不満な様子のワーマ国王。

 しかし、ワーマ国王が、またもニヤリと不気味な笑みを見せると、レイン国王を見下しながら話し始めた。


「しかし、ワーマ王国とレイン王国は古くからの同盟関係です。そちらが弱小国家であるが(ゆえ)に、我々は優秀な兵士を多数、派遣させていますよね? それは考慮されてますか?」


 レイン国王は、それを聞いて、苦い表情を浮かべる。

 その様子を見たワーマ国王は、話を続ける。


「まさかその恩を忘れて、自らの利益のためだけに、武器の値上げをしようなんて考えていませんよね?」


 そこまで言われたレイン国王は、歯ぎしりをして黙り込む。

 ワーマ国王は、少し気分が晴れたのか、グラスのワインをグッと一気に飲み干す。


「それじゃあ、値上げに応じないって事でいいんだな? なら、武器の輸出は停止させてもらうよ。これでワーマ王国は弱体化するな〜(笑)。泣いて懇願しても助けてはやらないからな」


 そう吐き捨てると、3人は応接室から出ていき、ワーマ王国を後にした。


〜現在〜


「……という感じだ」


 それに対し、そこにいる皆が頭を悩ませる。

 それと同時に、皆は、ワーマ国王の話に違和感を覚えた。

 そこで、エースがワーマ国王に、疑問をぶつけるように話す。


「ん〜、レイン国王ってそんなに高圧的な人でしたっけ〜? もっと(おだ)やかなイメージがあったんすけど……」


 エースのその意見に、周りの皆も首を縦に振って(うなず)く。

 そんなエースの意見が気に触ったのか、レイン国王は一瞬苦い顔をするが、すぐにそれは、怒りの表情へと変わった。

 そして、ワーマ国王はエースに圧をかけるように話しかける。


「なんだエース? 私が嘘をついているとでも言いたいのか?」


 そんな圧に耐えかねたのか、エースは冷や汗をかきながら、必死に答える。


「いえ! 全く思っておりません!」


 すると、ワーマ国王の表情は明るくなり、会議を続けることとなった。


 しかし、レイン王国の要求する値上げに応じなければ、優れた武器を仕入れることが出来なくなり、ワーマ王国が弱体化してしまうかもしれない。

 まさにレイン国王の言う通りだ。


 そこでエースが、ワーマ国王にある問いをなげかける。


「ワーマ国王は、レイン王国の値上げには、絶対に応じたくない感じっすか〜?」


 国王に対する敬意が全くないような言い方であるが、国王はエースを気に入っているからか、それを無視して答える。


「ああ、そうだな。私にとっては、奴の言うことは信用出来んのだ」


 そのワーマ国王の意見に、エースが質問をする。


「なるほど〜。具体的にどういうところが信用出来ないんすか?」


 すると、ワーマ国王が目を(つむ)って、腕を組みながら、何やらゴニョゴニョと小さな声で話し始めた。


「そうだな……それは、その…………だから、……で、………というところだな」


 こんなにも近くに座っているのに、誰一人として、ワーマ国王の声を聞きとることが出来なかった。

 ワーマ国王を(あお)るように、エースがワーマ国王に声をかける。


「ワーマ国王、全く聞こえないっす(笑)。もっと大きな声で喋ってくださいよ」


 ワーマ国王は、腕組みをやめ、ついにちゃんと話す気になったのかと思ったのも(つか)の間、ワーマ国王はその両手を、机に思い切り叩きつけた。


“バァンッ”


 会議室には、机を激しく叩く振動音が響き渡る。

 そして、辺りが静寂(せいじゃく)に包まれた時、ワーマ国王が口を開いた。


「うるさいわ! とにかく、値上げには応じない! これだけは譲れないのだ!」


 だからなぜそこが譲れないのかが知りたいのだが、これ以上詰めても、何も答えられず、後日自分が処刑されてしまうかもしれないと思った幹部の皆は、それ以上ワーマ国王に質問することはしなかった。

 そして、ワーマ国王は、ニヤりと口角を吊り上げて、いやらしく笑うと、とんでもない一言を言い放った。


「我々ワーマ王国は、レイン王国へ宣戦布告をすることにする!」


 予想だにしていなかった一言に、会議室内が一気に静まる。

 これには、おちゃらけた性格のエースも、思わず驚いて、聞き返してしまう。


「え……えっと、マ……マジっすか……?」


 エースは、あまりの衝撃にしどろもどろになっていた。

 そこで、ずっと黙っていた第2戦闘部隊のシュヴェルト隊長が、ワーマ国王に質問をする。


「しかし国王様、レイン王国に宣戦布告をしたところで、一体どうなるのでしょうか? 結局レイン王国と戦うことになっても、我々にメリットがないのではないでしょうか?」


 その質問に対し、ワーマ国王は狂気的な笑みを浮かべながら答える。


「恐怖だよ……恐怖を与えるんだ……」


 ワーマ国王のパッとしない回答に、シュヴェルト隊長が聞き返す。


「……と言いますと?」


 ワーマ国王は、続けて話す。


「確かに、ワーマ王国とレイン王国は、古くからの同盟関係だ。しかし、王国間の同盟や信頼などは、自らの利益を得るための妄想に過ぎない。初めから自らの利益を追求した結果で結んだ同盟だ。つまり、それは同盟関係でなくとも達成できるだろう?その手段が恐怖だ。恐怖で奴らを支配する。そうすれば、我々ワーマ王国は、更なる発展を遂げることができるだろう」


 ワーマ国王がそこまで言い終えると、会議室の中は、もう地獄のような空気になっていた。

 ワーマ国王のあまりに狂気的な提案に、誰も何も口を出せなかった。

 しかしそんな中、ルルただ1人が立ち上がり、ワーマ国王に鋭い眼光(がんこう)を放ち、反論をする。


「ワーマ国王! ワーマ国王の思想は(ゆが)んでいます! 恐怖で支配をしようとしたら、確実に戦争になります! それに、周りの王国からの反感を買ってしまいますよ!」


 ルルは必死に訴えるが、他の幹部は、苦い顔をしながら黙っているだけで、何も言おうとしない。

 ルルは、国王だけでなく他の幹部にも意見をぶつける。


「どうして皆さん何も言わないんですか!? こんなのは明らかにおかしいです! これが許されてしまっては、大変なことになりますよ!?」


 ルルが必死に、ワーマ国王の提案を否定するが、ワーマ国王は聞く耳を持たない。

 それどころか、必死に訴えるルルを黙らせるために、ポケットからナイフを取り出し、ルルの首元にナイフを近づける。

 その行動には、周りの幹部たちも焦りを見せる。

 そして、鬼のような形相(ぎょうそう)を浮かべながら、ワーマ国王はルルに詰め寄る。


「貴様……私の意見に反対したらどうなるか分からんのか……」


 ワーマ国王は、そのナイフをさらに近づけ、ルルの首の皮にナイフを軽く当てる。


「ひぃっ!」


 ルルは、逆らったら殺されるということをそこで初めて理解し、顔を真っ青にしながら涙目になる。


「こ……国王!ルルさんも反省しているみたいですし、そこまでにして、会議を続けましょう!」


 いつもおちゃらけているエースが、国王にちゃんと敬語を使うくらいに、その場には緊張感が(ただよ)っていた。

 ワーマ国王は怒りを沈め、ナイフをポケットにしまい、席に戻る。

 そして、ワーマ国王が、(ひじ)を机につき、口角を上げて薄気味悪く微笑(ほほえ)みながら言う。


「それでは、これより本格的に、レイン王国との関係について議論を進めていこう」


 ワーマ国王による狂気的な提案、未遂で終わりはしたが、ルルにナイフを突き刺そうとする奇行。

 もう議論どころではないというほど、その場の空気は地獄のように(よど)んでいた。


 皆が沈黙(ちんもく)し、なかなか議論が進まない中、第1戦闘部隊隊長のサン・ドーナが口を開く。


「ワーマ国王、レイン王国を恐怖で支配すると言っても、レイン王国に対して、どのように恐怖を与えるのですか?」


 サンによる問いに対して、ワーマ国王は、眉間(みけん)(しわ)をよせて答える。


「奴らは、武器の製作には()けていても、それを使いこなせるほどの戦闘者が少ない。つまりは弱小国家だ。それに対して、我々ワーマ王国は、優秀な戦闘者が多くいる。レイン王国の幹部の何人かを殺ってしまえば、恐怖に(おび)えて、ワーマ王国の下につくだろう」


 ワーマ国王の回答に対して、今度はエースが口を開く。


「つまり、戦争するってこと……ですか?」


 エースがそう聞くと、ワーマ国王は黙って渋々(しぶしぶ)頷いた。

 そこで、サンが冷静に話し始める。


「しかしワーマ国王、レイン王国の幹部を何人か殺るにしても、向こうにも当然、少数とはいえ優秀な戦闘者はいます。それに、目的はあくまでワーマ王国の発展、恐怖で支配することはただの手段に過ぎません。戦争を起こしてしまっては、レイン王国が弱化してしまうが(ゆえ)、ワーマ王国の発展には繋がらないかと思います。それらを踏まえて、やはり恐怖で支配するのではなく、同盟関係を維持するのが、ワーマ王国の発展に繋がると考えます」


 サンの意見を聞いて、ワーマ国王は、少し納得した様子で(うなず)いている。

 その様子を見たルルが、感心して目を見開く。


「(サンさんすごい……国王の意見を、私みたいに感情で否定するんじゃなくて、メリットやデメリットを説明した上で、ちゃんと否定してる……)」


 ワーマ国王は、その場で少し頭を悩ませ考える。

 そこで、エースが横から口を挟む。


「でも、あの対談の様子だと、もう相手は、ワーマ王国と同盟関係とは思ってないかもしれないっすね」


 それを聞いて、ワーマ国王は苦い表情を浮かべるが、サンが、ある提案をする。


「やはりここは、信頼回復のために、一度レイン王国に出向き、もう一度話をしてみるのが良いでしょうね」


 サンの話に、ワーマ国王は納得し、席を立ち上がると、少し不満そうな顔をしながら話し出した。


「とりあえず、今日のところはここまでだ。レイン王国についてこれからどうするかは、あの方とも話をしてから決めよう。とりあえず今日は解散だ。皆は自身の職務を全うしてくれ」


 ワーマ国王の声で、その日の会議は終了し、“はい!”と皆が返事をした後、解散することとなった。


「(あの方? ……レイン国王のことかな?)」


 ルルは、ワーマ国王の発言に違和感を感じたが、特に気にしないことにした。


 会議が終了し、皆が席を立ち上がろうとしたその時、ルルは“ハッ”と思い出したかのように、ワーマ国王に話しかける。


「あ……あの! 国王様! 私から1ついいでしょうか?」


 もう会議は終了し、皆を解散させたというのに、話をしようとしてくるルルに、ワーマ国王は眉をひそめる。


「なんだ、会議はもう終わったのだぞ。貴様も戻らんか」


 ルルは、ワーマ国王の重圧を耐え、話を続ける。


「実は……この前の3人の転移者……複数能力持ちかもしれません……」


 これにはワーマ国王だけでなく、会議室から出ていこうとする他の者も全員が驚いていた。


 そしてここから、3人の大捜索会議が始まる……

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