002 キャラクリエイト
今日からMyriad Universe Onlineのサービスが開始される。
まだフィールド解放までは時間があるが、キャラクリエイトはできると聞いたのでやってみることにした。
余談だが、VRキャステットは優秀な代物だ。
ゴーグルのような硬い物を付ける必要がなく、横になった状態でプレイするため、プレイ中は浅い睡眠をとっているのと同じ状態になるモードが選べるのだ。
すべての睡眠をまかなえるわけでは無いが忙しい学生にとってはありがたい機能だ。
VRキャステットのなかに入り電源を入れると、視界が一気に変わり、オープニングが流れた。
長ったらしいのは好きじゃない。
ここは当然スキップだ。
『プレイヤー名を入力してください。』
機械的な音声が流れると同時に目の前に仮想キーボードが現れる。
そのまま名前を入力するのは駄目だよな。
月だから、ルナ?ムーン? いくらなんでも無いわ。
しんぐうの “し” と、いつきの “つき” で “紫月” とか、そこそこイケてるのでは?
『キャラを作成してください。』
ボディスキャンで作ったアバターが一番動かしやすい、と朝陽が豪語していたのを思い出し、ボディスキャンを選択。
何秒か間があって、目の前に俺そっくりのアバターが現れた。
見た目はほとんどこのままでいいか。
何といっても俺の顔はかなり整っているのだ。
ホストの父│(イケメン)と、アイドルの母│(美人)から生まれたため、遺伝的にそうなるべくしてなったと言えるだろう。
自慢がしたいわけでは無い。
俺には顔以外の取り柄が何も無かったのだ。
運動神経なんてあるわけがないし、勉強だってさっぱりだった。
おまけに性格まで悪い。
寄ってきた人達も、しばらくすると失望したように去っていった。
それにムカついた俺は見返してやりたいという一心で血のにじむような努力を重ね、 “天才風清楚系王子様イケメン” を演じているというわけだ。
もちろん今でも努力は継続中である。
辞めたとたんに残念イケメンに戻るだろうからな……
なにはともあれとにかく今はキャラクリだ。
現実と全く同じじゃつまらないし、どうせだったら、最近良いなと思っていた “儚げイケメン” を目指したい。
儚さを出すならやっぱり白だよなあ。
ホワイトよりのホワイトブロンドにしよう。
眼はプレイヤー名にちなんで紫にしてっと、これで完成。
今作ったアバターに吸い込まれるようにして、職業選択の画面に飛ばされた。
『メイン職業を選択してください。』
たくさんあるようだが、俺は完全に見た目で選ぶつもりだ。
白髪紫眼が似合う職業にしたい。
精霊使い 妖精使い 祓魔師 幻術師 神官 妖術師 人形師
似合いそうなのはこれくらいか。
祓魔師は人相手だと役にたたなそうだから却下。
幻術師は能力の幅が狭そうだから却下。
精霊使いとか妖精使いは、精霊とか妖精とかと契約できなかったら詰みそうだから却下。
人形師は人形を制作するのも職業に含まれていそうで、工芸っぽい要素も強そうだから却下。
残ったのは妖術師と神官。
中世っぽい世界観らしいから妖術師より神官のほうが映えるかなってことで、神官に決定!
『サブ職業を選択してください。』
神官はサポート職だから、サブ職業は火力になりそうなものにしておこう。
こういうのって極振りすると良くないと思うし、サポート/サポートじゃあ飽きちまうよな、きっと。
ゲームの醍醐味ってモンスターをぶっ飛ばすことにあると思うんです。
ということで杖使いを選択。
一般的に杖は魔法の強化道具としての意味合いが強いが、俺は杖自体を武器としてみている。
メイスも杖の仲間らしいし、杖だって立派な打撃武器に決まっている。
『初期ポイント100ポイントとスキルを配布します。』
体力→攻撃されると減り、無くなると死ぬ。
魔力→魔法発動時に死亡
攻撃→物理的な攻撃の威力
防御→物理的な攻撃からの防御
知性→魔法的な攻撃の威力、回復・付与も含む
精神→魔法的な攻撃からの防御、精神系の防御
敏捷→素早さ
器用→遠距離攻撃の命中率、細かい作業
幸運→モンスター遭遇率、ドロップ率など
HPとMP→1ポイントで10上昇する
スキルLv→スキルの熟練度を表す
(小、中、大)→熟練度の段階を表す
フィーリングでステータスを振っていく。
意地でも “幸運” は上げない。
運に振り回される人生は現実世界だけで十分だ。
〇ステータス
名前:紫月
性別:男
種族:人間
職業:神官/杖使い
レベル:1
体力:200/200
魔力:150/150
攻撃:25
防御:15
知性:20
精神:10
俊敏:10
器用:5
幸運:0
ポイント:0
スキル
神聖魔法(小) Lv1
回復魔法(小) Lv1
称号
なし
装備効果
なし
よし、これでようやくアバターが出来た。
ちょうどあと数分でフィールドオープンの時間だ。
キャラクリに一時間もかかったのは予想外だが、時間もピッタリなことだし、そのままフィールドに入ってしまおう。
『それではいってらっしゃいませ。』