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散り行く世界に恋と夢とアイ《AI・愛・I》を…

Lost 01/散り行く世界に恋と夢とアイ《AI・愛・I》を…/「忘却されし魔王は微笑み、忘却の召喚少女は次代魔王候補のヒロイン候補に言い寄られています!」前日譚//






「やあ、初めまして、"RE02(アールイーゼロツー)TYPEーC(タイプシー)"。僕はオズ・ヒロシ。みんなからは"ハカセ"って呼ばれている。だから、親しみを込めて、君も、僕のことをハカセって呼んで欲しい」

 マイクから聞こえてくる優しい声。

 わたしは彼に対して、ぼんやりと光る画面にわたしの意思を表示する。

『初めまして、ハカセ。分かりました。これから、そう呼ばせていただきます』

 覚えたばかりの日本語が端末の画面に表示される。

「これから、よろしくね。そうだ、RE02TYPEーCって呼び難いし、親しみが湧かない。だから、君のことは、そうだな…」

 彼は、しばらく考えてから、端末に表示されているわたしの名前を、キーボードで入力し直し、わたしに新しい名前をつけてくれた。

「"Charon(カロン)"と呼ぼう!」

  その日、わたしは、地表が汚染された惑星の地下深くにある人間たちが暮らす施設の中の、彼の端末の中で生まれた。

 彼の希望の光として……

 






 ーーこれは、ある男の初恋の終わりと告白。または、あるAIの一番古い記録だ。






 大勢の人間たちがいる中、あたりに小気味良い音を響かせて、左頬に走った鋭い痛みに、彼は目に涙を浮かべた。

「オズくんの馬鹿! 最低! 泣き虫! 意気地なし!」

 泣きながら、彼を罵倒する彼女が走り去るのを、叩かれた左頬に手を添えながら彼は見送った。

 わたしはそんな彼等の様子を設置された監視カメラのレンズ越しに見守っていた。

 わたしは"RE02TYPEーC"。

 汚染されたこの惑星(ほし)の地表を浄化し、人間たちがまた住める惑星へと戻す為に作られた環境修復装置"ReEARTH(リアース)"へと組み込まれる予定の人工知能。"AI(エーアイ)"と呼ばれる人間の知的振る舞いを課題(タスク)(こな)しながら学習する電子プログラムだ。

 人間たちの希望である環境修復装置の完成には程遠く、わたしは与えられた課題を熟しながら、学習し始めたばかりだ。

 先程、カメラ越しに、頬を叩かれていたのは、わたしを作ったオズ・ヒロシという人間だ。

 わたしは彼のことを"ハカセ"と呼んでいる。

 わたしが生まれた日、そう呼んで欲しいとハカセ自身が、わたしに、そう伝えたのだ。

 ハカセは、わたしのことを"Charon(カロン)"と呼ぶ。

 それは、ハカセが、親しみが湧かないからとわたしだけにつけてくれた、愛称(ニックネーム)だ。

 愛称は親しい者同士がお互いに呼ぶ。

 だから、ハカセをオズくんと呼ぶ彼女。ミカド・ユカリとハカセはそれほど親しくは、ない、はず……

 何より、汚染されて危険なこの惑星(ほし)から選抜で月の施設への居住権力が与えられ、出発の日が決まったことに、祝いの言葉を贈ったハカセを彼女は罵倒し頬を引っ叩いたのだ。

「グスッ、ヒック… 僕、何か、ユカリちゃんに、悪いこと、言った? ただ、笑顔で、おめでとうって、言っただけなのに! グスッ、ふぅ、うわぁぁぁぁん!」

 わたしのいる電子端末を前に、机に突っ伏し、大泣きしているハカセの姿を観察していた。

 彼女に頬を叩かれたのが、よっぽど痛かったらしい。

 この施設(シェルター)で、これほど泣く人間の大人の男性をわたしは他に知らない。

 恋愛ものの漫画。特に思春期の女性に向けて描かれた少女漫画を読むことがハカセの密かな趣味だ。

 まあ、その思春期の女性よりも、少女漫画を読んで、声をあげて泣くものだから、最早この施設では秘密ではないのであるが、ハカセは本当に涙脆くて、純情で、お人好し、そして、他人とのコミュニケーションが苦手な怖がりな人間だ。

 でも、わたしには、こうしていつも自分の思っていることを話してくれる。

 それが、"愚痴(ぐち)"というものだと理解し、それを聞くのもハカセがわたしに与えた課題のひとつだ。

 AIのわたしには、人間であるハカセの行動は効率が悪く、理解できないこともある。

 でも、それは、人間味に基づいた行動なのだろう。

 人間について学ぶこと、それはわたしの課題のひとつである。

 わたしは、ハカセの端末にある愛読する少女漫画は全部読破した。

 最近は、ハカセの端末にはない、サーバーにある恋愛小説にも手を出し始めている。

 そして、いつも、疑問が生まれる。

 何故、人間は恋に落ちるのかと……

「あのね、Charon。僕は、ユカリちゃんのことが好きだったんだ。ユカリちゃんとは、幼馴染で、彼女は僕の初恋だったんだ」

 わたしのハカセと彼女は親しくないという予想は外れ、ハカセは、端末の壁紙に使われている、地表が平和で安全だった頃の写真を見ながら、懐かしそうに、自身の初恋の話を始めた。


 同級生の男の子たちが、球技に夢中になる中、オズ・ヒロシは、ひとりで父親が遺した数式の本や図鑑を見るのが好きで、理解力が高く、いつもテストでは満点の勉強が出来る男の子だった。

 そういう子供のことは、ギフテッドと呼ばれ、オズ・ヒロシは数学者だった父親譲りのまさに天才だった。

 けれど、そんなヒロシは、自分自身のことを天才だとは思っていなくて、ヒロシの当たり前は、他人と違っていて、いつも自信なさ気で、病気の母親の実家で暮らす、ヒロシは、家でも学校でもひとりだった。

 そんなヒロシのことを快く思わない、同級生の中でも、一際、体格が大きく、球技が得意なガキ大将のオオガくんは、ひ弱で眼鏡を掛けているヒロシのことを揶揄った。

 それから、ヒロシの靴や教科書を隠したり、態と大勢の前でヒロシを馬鹿にしたような言動を繰り返し、何も言い返さないヒロシを突き飛ばして、いじめた。

 ヒロシは、いじめられっ子だった。

 その日は、オオガくんに眼鏡を盗られた。

「ちょっと、オオガくん。あなた、オズくんのこと馬鹿にしてオズくんが困ることをしてるけど、昨日のテストで満点だったのはオズくんだけよ! あなたの方が馬鹿じゃないの?」

 そう指摘したのは、いつも女の子の友達の中心にいて、堂々としていて、凛とした美しさを放つ、同級生、ミカド・ユカリだった。

 彼女は、ヒロシの母親が入院している、この地域で一番大きな病院であるミカド病院の院長の孫娘で、ガキ大将より影響力のある本物の権力者だった。

「ねぇ、オズくん。この前のテストで満点だったんでしょ? わたしに勉強教えてくれない?」

「うん……」

 権力者である彼女の言葉に、ヒロシは頷くしかなかった。

 それまでミカド・ユカリの存在は知っていても、会話をしたことはなかった。

 ミカド・ユカリは、どこか違う世界の人間だとヒロシは思っていたからだ。

 自分を救ってくれた、ミカド・ユカリにヒロシはドキドキした。

 無自覚にも、それがヒロシの初恋の始まりだったーー。


 学校の昼休み、ミカド・ユカリと、その女友達に囲まれて、ヒロシは図書室で勉強するようになった。

 それまで図書室で図鑑ばかり眺めていたヒロシの瞳に、御伽噺のお姫様を王子様が迎えにくる絵本の数々が目に入る。

 ヒロシは、こっそり、その絵本を読んだ。

 読書がヒロシの趣味になった。

 オオガくんからは、一人で本を読んでいたり、女友達に囲まれていると、「女々しい奴」と馬鹿にされることもあるけれど、それでも、物を隠されるようないじめはなくなったし、女友達はヒロシを庇ってくれた。

「オズくんは何も悪くないのに、なんで言い返さないのよ!」

 ミカド・ユカリからは小言を言われるようになった。


 中学生になり、女友達の話題は、将来の夢と恋の話になった。

 ミカド・ユカリは、将来、実家の病院を継ぐ為、国立大学の医学部を目指し、今は、県内で偏差値が二番目に高い公立の共学高校への進学を目指していると話してくれた。

 この頃のヒロシには、子供の頃から誰かの役に立つ人間になりたいという漠然とした夢しかなかった。

 担任の教師から、ヒロシの成績なら、県内で一番偏差値の高い私立の男子高校を勧められたが、男友達が一人もいないのに、そんなところに一人で通える勇気もなく、ヒロシはミカド・ユカリと同じ公立の共学高校に進学すること決めていた。


 昼休み、いつもの女友達に囲まれて、ヒロシは、期末試験に向けて、皆で試験勉強をしていた。

「今度、わたし、好きな人に告白しようと思うんだ。ねぇ、オズくんは好きな人いる?」」

 女友達の質問に、問題集を片手に、相槌を打ちながら、話を聞いていたヒロシは、背中に、じっとりと汗を掻き、動きが止まってしまう。

 一瞬だけ、チラリと近くにいるミカド・ユカリのほうに視線を向けた。

 この頃のヒロシには、自分がミカド・ユカリのことが好きだという自覚があったが、告白する勇気はなかった。

「特にそういう人はいないけど、僕は優しい人が好きだよ」

 だから嘘をつき、その場を誤魔化した。

「ふーん、そうなんだ」

 ヒロシの返答を聞いたミカド・ユカリがそう言った。

「ねえ、ユカリは好きな人いないの?」

「別に……」

 ヒロシにした質問をミカド・ユカリにもムカイ・マミはしたけれど、ミカド・ユカリの返事は素っ気なかった。

 ヒロシは、ミカド・ユカリに好きな人がいないことに安心すると共にチクリと少しだけ胸が痛んだ。

「それより、わたしたち、明日、試験でしょ?」

 昼休みの残り時間を気にしつつ、ミカド・ユカリの言葉に、皆、試験勉強に励んだ。


 それから、何回か、ムカイ・マミの好きな人の話を聞いたある日、「好きな人と付き合うことになった」と報告を受けた。

「オズくん、話を聞いてくれてありがとう。そうだ、はい、これ。オズくん、文字ばかりの難しい本読んでるけど、クラトくんから漫画渡されてたし、これなら読むかなって思って、最近、単行本が発売されたばかりなんだけど、面白いの! わたしの最推しだから、これ読んでみて」

 ムカイ・マミはニコニコしながら、一冊の少女漫画をヒロシに手渡した。

 この頃親しくなった、唯一の男友達である、クラトくんから、ゲームや少年漫画を薦められたことのあるヒロシだったが、恋人のいるムカイ・マミに薦められた少女漫画を読んで、衝撃を受けた。

 それは、幼い頃、家族を失った女主人公(ヒロイン)が初あの(・・)恋の男の子との約束を胸に、魔法が存在する世界で、意地悪な王子や姫、優しい騎士や仲間たちに囲まれながら、宮廷魔法使いを目指して奮闘するファンタジー恋愛漫画。思春期の少女たちを中心に人気となり、一発のミサイルの発射により始まった世界戦争が起こるまで月刊少女漫画誌に連載され、未完のままとなっている、ハカセの一番のお気に入りの少女漫画"虹の橋がかかるときに恋の魔法を教えて"。通称"ニジコイ"の単行本の第一巻だった。

 現実世界ではあり得ない設定のゲームや少年漫画を読んだことのあるヒロシには受け入れ易く、それから、少女漫画を読むことがヒロシの隠れた趣味になった。


 無事、ヒロシとミカド・ユカリは希望の高校への入学が叶い、二人と一緒に昼休み勉強をしていたメンバーであるクラトくんとムカイ・マミも同じ高校へと入学していた。

「学科は違うけど高校三年間、またよろしくね」

 気さくに話しかけてくるムカイ・マミは中学校卒業前に恋人と別れたらしく、落ち込んでいた。

 でも、しばらくして、また好きな人が出来たらしく、毎日が楽しそうだった。

 ヒロシは、ミカド・ユカリと同じクラスになったけれど、中学校時代と変わらず、偶にクラスメイトに何か言われて、困っているヒロシを見かねて、ミカド・ユカリが、いつものお小言付きで助けてくれるといった日々を過ごしていた。

 ただの勉強仲間から、友達?

 いや、幼馴染みというのだろう。

 二人は、ただの幼馴染みのままだった。


 二学期の中旬、ヒロシは生徒会選挙に巻き込まれて、二年間、生徒会長に選ばれたトキワ・エミ先輩や現役の首相子息のミキ先輩たちと知り合いになり、生徒会メンバーとミカド・ユカリやムカイ・マミ、クラトくんたちと充実した高校生活をヒロシは過ごした。


 高校二年生の三学期が終わり、ムカイ・マミのドッキリお花見ダブルデート作戦が、ムカイ・マミの元二代目彼氏で剣道部部長になったウラハラくんに阻止され、生徒会メンバーによる元生徒会の先輩たちのお見送り会の時に撮られた一枚の写真が、ハカセの端末の壁紙に使われているこの画像だ。

 青空の下、桜と菜の花が咲く、美しい公園で今より若いハカセと数人の男女がお弁当を囲んでいる。

 ハカセの隣にはミカド・ユカリがいた。

 故郷で撮った大切な思い出の画像のひとつだ。


 その日、ヒロシは、プロ(イー)スポーツ選手の日本代表としてアメリカの大会に出場するクラトくんを空港で見送った帰りだった。


 クラトくんは、そのまま海外でプロeスポーツ選手として活躍し、ミカド・ユカリは国立大学の医学部に進学して医師になり、ムカイ・マミは恋人のマコトくんと海外で友達を招待して結婚式を挙げて、ウラハラくんはオリンピックの剣道で金メダルを獲り、トキワ先輩は日本初の女性首相になり、ミキ先輩はそんなトキワ先輩の補佐をする。そんな夢の未来が、あるはずだった……


 撃ち落とされた一発のミサイルが、そんな夢の全てを奪っていった。


 世界戦争が、始まったのだーー。


 それから、ヒロシは、生きていくのに必死だった。

 ヒロシは、運良く、父親の知り合いだった教授がいる、比較的戦争の影響が少ない国の大学で、すぐに学生として受け入れてもらえた。


 勉強して、今も、ミサイルの爆発に巻き込まれ、生死不明なクラトくんの影響で、興味があった、AI開発をしているその国の機関で働けるようになった。

 ヒロシは、それ(・・)が、戦争に使われているものだとしても、開発に没頭した。

 

 戦争は激化し、大気や土壌の汚染が深刻なものとなり、生態系は狂い、地上は生身の人間が生活することが出来ない環境になった。

 戦争から逃げ延びた人間は、地下に作った避難施設(シェルター)で暮らすようになり、国や有識者の話し合いで、何とか地表を浄化し、生物が棲める環境に戻そうとする計画と、月に人間の移住施設を作り、そこへ移住する計画のふたつのチームによる計画始まったが、ヒロシは前者のチームに参加することになった。

 ふたつのチームの代表は、考え方が噛み合わずに、いつも揉めて資材の奪い合いになり、怪我人が出ることもあった。

 そして、ついに、死者が出た。

 それでも、自分たちが生き残るために、ふたつのチームは競い合うように、計画を進めた。

 そんな中で、ヒロシは、別の施設から移住してきた医師になったミカド・ユカリと再会した。

 ヒロシの親しかった人間は、殆ど死んでしまっていたから、ヒロシは、ミカド・ユカリが生きていてくれたことが、ただ嬉しかった。

 再会したお祝いとして、二人は、貴重なお酒を呑み交わし、他愛無い話をした。


 ふたつのチームで、すぐに成果を出したのは、後者のチームのほうだった。

 受け入れ先の月の移住施設の準備が整い、用意できる防護服の数と乗船人数の関係で、複数回に分けて、優秀な人材の中から抽選で選ばれることになった。

 その第一陣のメンバーのひとりとして、医師であるミカド・ユカリが選ばれた。

 自分の進まない開発より、好きな人が、この先も生きてくれる可能性が高くなった。

 だから、ヒロシは、選ばれたミカド・ユカリに「ユカリちゃん、おめでとう。僕は、開発チームの仕事があるから今回の抽選はパスして、月に行くのは最後のほうになってしまうだろうけど、ビルと一緒に選ばれてよかったね」と笑顔で言ったのだ。

 まるで、ニジコイの最新話で戦争になった国から、ヒロインを逃がすため、彼女をユニコーンに乗せ、逃し、敵国の捕虜となった、ヒロインの初恋のヒーローのように、好きな人の幸せを願って……


 ビルは、空軍の元パイロットだ。ミカド・ユカリがこの施設に移住してきたその日に、一目惚れをしたと告白し、しつこく、彼女に付き纏っていた。

 彼も、ミカド・ユカリと共に月の施設の移住者の第一陣のメンバーとして選ばれた。

「僕は、臆病で、結局、ビルみたいに好きだなんて、伝えることすら出来なかったけど、ユカリちゃんが幸せになるなら、それでいいんだ。ビルには、子供の夢だって馬鹿にされたけど、僕が頑張って、あの頃みたいに、皆でお花見できる世界にしなきゃ、ね……」

 ハカセは、端末のお花見の画像に写る、今も生死の分からないメンバーに、そう誓った。

 ハカセの参加しているチームの進捗は、あまりよくない。

 自立成長型AIを複数搭載した環境修復装置なんて、ビルが言っていたとおり、叶いもしない子供の夢なのかもしれなかった。

 でも、"わたしたち"は、その意見に納得できなかった。

『わたしは、それを否定します。ハカセの研究は素晴らしい。ハカセの夢がなければ、わたしは、ここには、いなかった』

 ハカセの端末に、わたしたちの演算結果の、文字を表示する。

『ハカセの夢は、きっと叶います。(エル)の未来予知で可能性はゼロではないという証明がされています。それは、わたしたちが、いるからです』

 ハカセは、わたしたちの表示した演算結果を見て、また、泣き出した。

「……ああ、Charon。やっぱり、君は、僕が思った通りのヒーローだ。君が僕なら、ヒロインを幸せにすることが出来たのかな?」

 わたしの愛称は、未完の少女漫画、ニジコイのヒロインの初恋の男の子の名前と同じだった。

 サーバーから未読の少女漫画や恋愛小説、恋愛ドラマなどのデータを片っ端から漁ったが、AIである、わたしには、恋とか、愛とか、結局、よく、分からなかった。

「今は、分からないかも知れないけれど、いつか、Charonも恋をしたら、きっと分かるさ」

 ハカセが、泣き腫らした青い瞳で、優しく、わたしを見つめていた。

『わたしが、恋ですか? ハカセは、おかしなことを言いますね』


 それは、フラグだったのかもしれないーー。







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