“色”が全てのこの世界
憂鬱だ
部屋の片隅でパソコンに向かっている俺相良 創は今年で25歳を迎える
フリーランスと言えば聞こえはいいが仕事はあまり入ってこず、ニートに近い。いやすねかじりだ…
昔から勉強にしてもスポーツにしても周りの子よりそれなりに才能があった。早熟と言えるのだろう。だがそれゆえに多少優れている事は創にとって興味の対象になるものはなかった。つまり、何も極めようとしないがために結局本気でやった者には勝てなくなった。一言で言うのであれば器用貧乏だ。
得意な事も興味のあるものもない。25年の歳月を生きた俺に残ったのは中途半端になにも役に立たない現実だった。そんな俺が社会不適合者になるのはそう時間もいらなかった。
(お前はのんきでいいなぁ)
今の俺の唯一の『仕事』である愛犬クロの散歩中。黒いモフモフのしっぽをフリフリしながら俺の前を悠然と歩いている。結構な田舎に住んでいる俺の町では19時を過ぎれば人はほとんど歩いていない。そんな暗い夜道をクロと一緒に歩いているわけだが、あまり見かけない“色”をした人が公園のベンチに座っていた。
”色“と表現したのはどうやら俺には生まれつき特殊なものが視える。万人にこの“色”があるわけではないが稀に視えることがある。比較的子どもの方が視える事が多い。分かりやすく言えばオーラであったりスピリチュアルみたいなものなのだろう。残念ながら? 幽霊は見ることができないし、自分自身の“色”を視ることは出来なかった。実際に25年生きてきたわけだが、この能力が役に立った例は無い。まぁ視えたからなんだってわけだ。
話しは戻るがあまり見かけない色をしたおそらく少女は、“乳白色”(にゅうはくしょく)の色を持っていた。。ちょっぴり興味を持った俺はちらちらと視線を送っていたが、彼女はおもむろに立ち上がりそして倒れた。
「おい大丈夫か?」
若干動揺しつつも声をかけると、
「私が視えるのですか?」
……んん?
どういうことだ?視線は合っているし、肩に触れることもできる。何かよからぬ事に首を突っ込んだ気がする…
「助けて…ください…」
答えるまもなく彼女から放たれる眩い真っ白な光に包まれていく。次の瞬間意識は薄れていった。
何もない虚無空間に漂っている感覚があるが、真っ暗で把握することは出来ない。直後、スポットライトを当てているかのような眩い光が石板らしき彫像物を映し出す。大きな四足の生物と対峙する7体の小さな生物。三角形のてっぺんには四肢を繋がれた人らしきものが描かれていた…ゆっくり見ることも叶わず激しい頭痛と共に、落ち着いた男性の声のようなナレーションを虚な記憶で聞きながら意識を再び手離した。
『はるか昔…
魔王率いる魔物に覆い尽くさんとばかり勢力を拡大していた…
人類種にとって非力故に逃げの一途を辿っていたが、ある時をもって勢力は塗り替えられた…
人類の中で膨大な魔力量を持つ者が7人現れたのだ…一騎当千の働きで人類の生活区域を勝ち取ると彼らは忽然と姿を消してしまった…
彼らの特殊なカラーを称して、『虹色の魔術師』と呼ばれた…』