表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
何度だってあの花火を  作者: コーマ11
5/22

With you

私と小松は能登さんから話を聞いた。

その話の内容は、能登さん、私、小松の3人が同じレベルで刺身、鮭の塩焼きを作る予定だと言うこと。

つまり私たちはメインディッシュを作ることを認められたのだ。

9月2日、3日までの1ヶ月間、刺身、鮭の塩焼きだけに集中することと言われた。

私は今、厨房に1人、また魚を捌いている。

「ふぅ……」と深呼吸をし、腹に包丁を差し込む。

スーっと入っていき、内臓処理も完璧だ。

あとは捌くだけ。

でも一番の問題点だ。

そして私が捌いて盛りつけた刺身は少し不恰好で、美味しそうではないものだった。

「くそっ!!」

1人で呟きもう1回魚を用意する。

その瞬間、厨房の扉が音を立てて開いた。

能登さんと小松が入ってくると思ったらその後に続き10人ほど知らない人が入ってきた。

板前の格好をしており、服の胸部には"金沢リゾート"と書かれていた。

"金沢リゾート"とは金沢の4つ星ホテルでここらでは1.2を争うほど有名だ。

それほどのホテルに勤める板前がなぜこんな所に……。

すると能登さんが口を開く。

「"金沢リゾート"の皆様、この度は私たちに手を貸してくださりありがとうございます。8月2日、3日では私、能登大輔とあそこに立っている輪島美香、隣にいる小松祐希でメインディッシュを作らせていただきます。あなた方様をサブという形で協力させてしまうことをまずは謝罪させてください。そしてそんな中私たちへの協力、感謝します。」

拍手が飛び交う。

能登さん……。

凄すぎる。

ここまでしっかりしているとは思っていなかった。

どうりで女将さんにあんな信頼を置かれる訳だ。

するとまた、能登さんが口を開く。

「今日は鮭の塩焼きを作りたいと思います。実際に10食分、サブメニューも10食分作っていただきます。それでは別れてください。」

私のもとに2.3人人が集まる。

「お、お願いします!」

意外にも優しい人ばかりで、

「お願いしますね!」

と返してくれた。

そして作りはじめた。

最初は順調だったが、後の方から制限時間に間に合わないと思い、スピードを上げた。

私が材料を取ろうとすると人にぶつかった。

「ご、ごめんなさい!」

すると後ろから他の人が、

「輪島さん!鮭崩れてますよ!」

と指摘され見てみるとぐちゃぐちゃに……。

「ごめんなさい!作り直します!」

するとタイマーが鳴る。

焦りでタイマーが聞こえずに人にぶつかって倒れてしまった。

「だ、大丈夫かい?輪島さん。」

手を出してもらう。

「ありがとうございます……。」

私は何か込み上げるものを我慢して起き上がる。

能登さんが、

「今日はここまでです!解散です!ありがとうございました!」

の声でみんなが解散して私と能登さんと小松だけになった。

そこで急に涙が溢れてきた。

「私、頑張ってきたのに! 悔しいよぉ……。」

涙がとまらない。

手で押さえても、拭いても、溢れてくる。

すると能登さんが近づいてきて、私の頭に手のひらをポンっと押しつける。

「ごめんな、輪島……。」

能登さんが本当に申し訳なさそうに謝るのを見て、こっちが申し訳なくなってきた。

「私のせいです。」

と返事をする。

すると能登さんが、

「隣に立て、一緒に作ろう」

と声をかけてくれた。

私は能登さんの背中は死ぬほど見てきたが横顔はあまり見なかった。

そうだ、私はこの人と料理がしたいんだ。

もっと近くに居て。

もっと近くに来て。

一生私と料理を作って。

私は彼と料理がしたい。

彼と。

君と。

あなたと。


With you


2014年8月4日。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ