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何度だってあの花火を  作者: コーマ11
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By yourself

1ヶ月後の大団体客の訪問に向けて緊張感が高まる。

私は誰もいない厨房で1人、料理をしていた。

「魚の捌き方の完全解説本っと……」

独り言を言いながらその本を手に取る。

そして余っていた魚をまな板の上に置いて包丁を入れる。

内臓処理と剥ぎは慣れてきたが、刺身として捌いて盛り付けるのが非常に難しい。

解説本を見てやっとのことで捌き終わったがその時には捌きはじめてからかなりの時間が経ち、口に入れても新鮮さがなかった。

私は拳を握る。

憧れているだけじゃ何も変わらないから、私はそっち側になりたいから、私は1人で頑張ってるんだ。

私は厨房の外の自販機コーナーで休んだ。

すると自分のほっぺたに冷たい缶コーヒーが触れる。

「飲め!」

それななんと能登さんだった。

顔が真っ赤になっていると思い、両手で隠す。

「の、能登さんっ!? なんでここに……」

「そりゃー、弟子はほっとけないだろ、何を苦労してるんだ?」

「魚が……」

するとすぐに能登さんは、

「来いっ」

と言って厨房を指す。

まな板の上に魚を置いてすぐに話し始める。

「魚を捌くことは細かい作業に見えるが、意外と暗記のことが多い。順序をよく覚えるんだ。あとは魚の肉に苦戦しないよう素早く捌けるように努力するだけだ。」

大団体客の予約が決まった今、一番辛いのは能登さんのはずなのに、こんな魚を捌くことすらできない小娘に時間を使ってくれることが嬉しかった。

その後、能登さんは疲れた顔をして厨房を出て行った。

でも何かスッキリしないモヤモヤがあった。

大団体客の予約を控える今、私なんかが料理を作ることを考えてはいけないんだと思った。

自分が今できるようにすること、できればいいことは魚を捌くことじゃない。

そう思って歩いていると誰かにぶつかった。

「ご、ごめんなさいっ! 北介さんっ!?」

北介さんにぶつかってしまった。

「あれ、美香ちゃんじゃあないか、何か考え事でもしていたかい?」

やっぱり北介さんはすごいなぁ。

「大団体客の訪問に向けて、私何すれば良いのかわかんなくて、能登さんに迷惑かけてるんじゃないかって、魚も捌けない私なんかに……」

「美香ちゃん、おそらく大団体の夕食は刺身になる。美香ちゃんがやってることは間違ってないんだよ」

「でもっ! 私なんかが大団体客に向けて料理を作っていいのかなって……」

すると北介さんはニコッと笑って、

「僕や嫁に大輔くんがよく言いに来るよ、「いい弟子をもった」って、君や祐希くんのことだよ、君たちのことを彼は一番思ってる。君たちの向上心を認めている。君たちのできることをやるのが、彼にとって生きがいなんだよ」

「私たちにできること……」

私はパッと出てこなくてつぶやいた。

「美香ちゃんならできるはずだよ」

「そうだ! 私ならできる!!」

北介さんは私のことを見て、ニコッと笑って、人差し指で頭を2回触って、自分の胸に拳を2回当てたあとにこう言った。

「自分で考えて、自分で動く、自分自身で、君自身で!」

自分自身で、私自身で!


By yourself


2014年8月2日。

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