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何度だってあの花火を  作者: コーマ11
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取り残された未完成

私は能登さんが残した手紙を読んだ。

『輪島……俺が死んで俺のことが大好きなお前はさぞかし悲しんでいるだろうなあ』

手紙はいつも通りふざけた能登さんで始まった。

『ただお前はやっぱりこれを見つけてくれた。落ち込んで、立ち上がれなかった状態からこれを見つけ出してくれた。これに辿り着いてくれた。やっぱり俺はお前を誇りに思う。俺はお前に何度も一番弟子だと言った。それは本当のことだ。お前は何度も挫折して、自分に自信を持っていないかもしれない。でもお前は料理がめちゃくちゃ上手い。お前には光を感じる。センスや才能じゃない、努力の塊だ。まぁ多少は才能あるから安心しろよ! そうだな。俺は死んじまったがお前はきっと立派な板前になる。テレビとかに呼ばれるかもな。その時に毎回俺のことを語ってくれよ? 天国でモテ期到来だな。お前の目の前で気持ちを伝えるなら俺は24時間喋れる自信がある。でもそんな長々と手紙は大変だよ。手を疲れたし、紙がもったないからな〜。あと少しだけ読んでくれ。お前は俺に好きだと言ってくれた。俺はそれに俺もと答えた。あの時の言葉に全く嘘はない。俺はお前が大好きだ。お前で1年、2年、5年、10年、100年と生きて、めちゃくちゃ立派な板前になって俺をとっくに超えていても、たとえお前が俺のことを忘れても俺はお前のことが大好きだ。ずっと何十年もお前のことを愛している。お前と出会えて最高の人生に悔いはない。ただ1つだけ。お前に直接愛してるを言いたかった。できれば俺のことを忘れないでほしい。輪島……愛してる。』

私が手紙を読み終わった時、勝手に目から涙が流れていた。

本当にかっこいい先輩だった。

私も彼を愛していた。

私は日記の最後のページを開いた。

するとそこにはこう書かれていた。

『俺のレシピは未完成だ』

私はこの意味がすぐに理解できなかった。

私は厨房を出るとそこには小松がいた。

「小松……今までありがとう」

すると小松は頭の上にハテナを浮かべて、

「なんすか? 板前引退でもするんすか?」

と言った。

確かにそうなるだろう。

だから私は言葉を変えた。

「これからもよろしく」

そう言った瞬間小松は笑顔になって、

「はい!」

と答えた。

私と小松はまた明誠荘で動き始めた。

時計の動かなかった秒針がカチッと動き出すかのように急に動き始めた。

明誠荘という物語を作る私と言う主人公。

物語において師匠を超える時は必ず訪れるものだと思う。

私はそう信じて明誠荘という物語の続きを歩み始めた。

レールを敷くのも私でそのレールの上を走るのも私。

私の物語は終わらない。

そして私は未完成を理解した。

明誠荘という物語はこれから6年で幕を閉じることになる。


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