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何度だってあの花火を  作者: コーマ11
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刺身の作り方

「やっべぇ〜、あっちぃ〜」

小松が服の首あたりをパタパタする。

夏の厨房はとつも暑くなる。

7月も終盤に入り気温が上がっていく。

そして夏になると、石川県への観光客は急激に増える。

主に金沢の観光客が増えるがその影響はここ、加賀にまで及ぶ。

「待って!マジであっちぃ〜よ〜!」

小松は我慢と言うものができないのか。

「小松!うるさいっ!」

「すんませーん、先輩っ」

今日の入館者数は今年度最高となっている。

もちろん作る量も多くなる。

ガシャン! っと音がして厨房に能登さんが入ってくる。

「お前ら!やるかっ!」

と言って笑う能登さんに合わせて私たちはまた、声を合わせて、

「はいっ!!」

と返事をする。

今日のメニューは刺身。

器用な小松と能登さんが魚を捌く。

その間に私は味噌汁を作る。

小松はもともと器用なので料理の腕は高い。

だけど雑なのでメインディッシュは作れないといつも能登さんにいじられている。

しかし魚を捌いている時の小松だけは違う。

魚の捌きは能登さんに並ぶ、もしくは能登さん以上だと能登さん自身が認めている。

加賀には新鮮な魚がよく入るため加賀の旅館やホテルでは、魚料理を自慢にしているところが多い。

私は味噌汁を作り終えて、魚を捌こうとした。

「きゃっ! 痛っ! 」

指を切ってしまった。

「ったく、まだまだだな! 輪島! あとで残れ! 魚の捌き方を教えてやる」

と能登さんが言う。

そして今日のメニューを作り終える。

「あざしたぁ〜」

と言って小松は帰る。

「よっしゃっ!じゃあやるかぁ、輪島!」

「はい!」

今日使わなかった余った魚をまな板に置いて私が包丁を持つと、能登さんは後ろから抱きつくように私の手を持った。

「まずは腹を切って内臓を取り出すんだ……それから……」

心拍数が上がってくる。

こんな近くに憧れの日がいる。

憧れの人と料理ができている。

私はそれだけで満足だった。

そしてそのあと私は1人で小さな魚を捌いて、刺身にして能登さんに渡した。

「それじゃ、いただくぞ」

「どうぞ、召し上がってください」

能登さんがもぐもぐと刺身を頬張る。

すると能登さんはこちらを見て、

「輪島ぁ、俺はここに来る前からずっと板前をしているし、後輩も何人かいたが、やっぱりお前が俺の一番弟子だな!」

と言われた。

すごく、すごく涙が出そうだった。

でもぐっと堪えて答えた言葉は短かった。

「ありがとうございます」

と、たったそれだけの言葉でいいと思った。

2014年7月24日。




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