表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
何度だってあの花火を  作者: コーマ11
PR
18/22

隠せない悲しみ

能登さんの葬式には大勢の人が参加した。

能登さんがどれほど信頼されていた人か、能登さんがどれだけ優しい人か、この人数を見れば分かるのだと思う。

私はボケッと歩いていると男の人に当たった。

「悠さん……」

悠さんがそこには立っていた。

「美香ちゃん、大丈夫か?」

悠さんは優しく対応してくれていたが、私は適当に受け答えていた。

適当というよりは無意識に。

「美香ちゃん、今は悲しいし寂しいだろうけど君の実力は今凄い広まってる。どうか自分に自信を持って、頑張るんだよ」

「は、はい……」

私たちは明誠荘に帰った。

私は小松に料理をすると言って厨房に呼んだ。

「大丈夫ですか? 先輩。僕も先輩も能登さんが亡くなってショックなはずでしょ? 別に休んだって誰も何も言わないんじゃ……」

と小松が言った。

私は、

「何言ってんの、能登さんの期待裏切るつもり? 私たちに悲しんでる暇なんてないでしょ。能登さんの弟子なんだよ」

と言った。

小松は何も言わずに私と厨房で料理を作った。

私はその料理に失敗した。

焦がしたり、時間を間違えたり。

そこらへんの主婦でもしないような失敗だった。

「輪島先輩……今日はやめません? やっぱりちゃんと落ち着いてから作った方が……」

小松が気を使ってこんなことを言ってくれた。

でもこの時の私はそうは思えなかった。

「やる気がないならあんただけやめればいい、私は落ち着いてるし、やる気がある」

と言ってしまった。

「別にやる気無いわけじゃ……」

「ないじゃん、さっきから」

ああ……ダメだよ……。

小松はこんな時でも付き合ってくれてるのに。

「先輩、じゃあその失敗はなんすか」

違う。

たまたまミスっただけなんだよ。

「やる気ないのは先輩の方でしょ」

そうかもしれない。

今の私が料理に気が向いてるわけがない。

「先輩! 集中してない時に作る料理が一番不味くて、一番失礼ですよ」

「黙って!!」

図星。

自分でも分かっていたことだったけど、この時の私はこれが正しいと思っていた。

小松は黙って厨房から出て行った。

私だけが悲しい訳じゃない。

そんなことは分かっていた。

でも少しだけわがままな私を許して、小松……。

能登さんが亡くなってから1週間が経つ。

私はまだ1回も泣いていない。

すごいでしょ?能登さん。

でも泣いた方がいいのかな。

泣くのは情けない人がすることだと思っていた。

この時の私は……。

次の日、厨房に向かっているとロビーで女将さんが誰かと話していた。

私はロビーをこっそり覗くとそこに居たのは女将さんと男女二人だった。

車いすが見えた。

女性の方が車いすに座っていて、男性の方が車いすをひいていた。

「なんでこんな時にくるのよ……」

私は一人で呟いた。

お父さん、お母さんに美味しい料理を作れる気がしなかった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ