告白
「来年の春まで生きれない……?」
私は医者のその言葉にショックを受けた。
それでも私はもう一度能登さんの隣で料理がしたかった。
同じくらいのレベルで同じようなことをしたいと、あと1回でいいからと思った。
私は小松に言った、
「料理、上手くなろう! 私たちにできるのはそれだけだよ」
すると小松はうなづいた。
それから私と小松はめちゃくちゃ努力した。
客の予約が一切入ってない日も2人で集まって一流を目指した。
それから時間が経って、12月になった。
板前の世界では能登さんが消えたとの声がある一方で私の名前が徐々に広がっていた。
しかし能登さんの症状は悪化して行く一方で私はそんなことを気にしていられなかった。
私はほぼ毎日病院にお見舞いに行っている。
能登さんの病状が悪化していることは見てれば分かる。ある日能登さんの病室では悠さんと能登さんが話していた。
「なぁ大輔、俺は当分の間見舞いに来れなくなる」
と悠さんが言う。
「別に大丈夫さ、寂しかねぇよ、それに……輪島が毎日来てくれる」
と能登さんが答えると、悠さんは少し怒って、
「お前の寂しさはどうでもいいよ! 俺が寂しいんだよ!おそらく俺は2月まで来れない……生きてて……くれよ?」
と悠さんが涙目で言う。
すると能登さんは、
「そうだなぁ、まさかここまでキツいとは思ってなかったなぁ。正直自分が長くないことには気づいてるんだ。
だからいろんな人に伝えることは伝えておきたいと思うよ。悠……俺は死ぬわけじゃねぇが保険だ。もし死んだらっ……」
と言いだすと悠さんは焦って、
「やめろ! 遺言なんか聞きたかねぇよ」
「でも遺言なしで死にたくねぇから保険だ。念の為だ。最後だけお願いだ」
「しょうがねぇな! 聞いてやるよ」
悠さんは真剣な顔になる。
「悠……俺はお前と出会わなきゃこんなに料理を好きになってなかったかもしれない。お前と料理してる時がどれほど楽しかったか。また俺と料理はしてくれるか?」
「もちろんだ」
能登さんと悠さんは本当に仲が良かった。
私に自慢気に悠さんのことを紹介する能登さんも本当に優しいなと思う。
私は数時間後に能登さんの病室に着いた。
私は今日、心を決めてきた。
「能登さん! 体を大丈夫ですか?」
と私が聞くと、
「ああ、大丈夫だよ! 明誠荘はどうだった?」
と能登さんが返したきたので、私は、
「今日も大繁盛でした。もうすぐ年越しですからねぇ〜」
と答える。
私はもう一度話し出した。
「能登さん……本当に能登さんは優しくて、料理が上手で背中が大っきくて、イケメンで、男前で、後輩に優しくて、礼儀正しくて……」
あれ?能登さんの良いところを出してるだけなのに自然と涙が溢れてくる。
涙を流す私に心配しながらも能登さんは黙って話を聞いていた。
「本当に本当にずっと今も、これからも……大好きです」
すると能登さんはニコッと笑って、
「俺もだよ」
と言って、私の頭を撫でた。
「能登さん、お願いです……私ともう一度料理をしてください! 一生のお願いだから……能登さん……お願いだから!」
死なないで。
と言いたいんだ。
でもそんなこと言えないと思っていると、能登さんは私の心を読めていたかのように、
「死なねーよ、安心しろ」
と答えた。
私は明誠荘に帰るとそこには女将さんがいた。
「美香! 金沢ツアーの団体客30名が1月9日に来客する。準備をしておきな」
と言った。
修学旅行生以来初めて、そして私と小松2人で作る料理を出す、初めての団体客。
でも、私はなぜか不安な気持ちはなかった。
死ぬほど努力したんだ。
今の私たちなら大丈夫。
そしてその時は思っていたよりも早く訪れた。




