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何度だってあの花火を  作者: コーマ11
12/22

決戦前夜

とうとう8月1日。

修学旅行生の来客の前日となった。

私たちは貴重なマグロを練習用に捌くわけにはいかなかったため、必死に鮭の塩焼きの練習だけをしていた。

「小松ー、疲れたぁ〜」

と私が言う。

「輪島先輩ってほんと頭悪いですよね。前日にそんな鮭使い果たして。それだけならまだしも体力まで減らして。」

と言ってきたので私は、

「何が頭悪いよっ!? 私、先輩よ!?」

「あー、そーでしたぁ」

と言う会話が続いた。

相変わらず生意気な後輩だ。

その夜、宴会場に全職員が集められた。

前に女将さんが登場した。

「とうとう明日だよ! みんな! 清掃係! 本当に大変だと思う。でも今まであんた達がやってきたことをやりなさい。そうすればきっと乗り越えられる。ロビー係! 先生方たちとの対話があると思う。絶対に先生方は優しいと思う。緊張せずに取り組むんだよ? そして……板前の3人。あんた達の苦労は私もみんなもちゃんと見てた。努力は報われる。報われるまでに時間がかかって嫌になったときもあったかもしれない。でもね、忘れちゃいけないことがある。努力っていうのは、報われる前に認められる! 大輔! あんたは本気で自慢できる奴だ。最高の弟子2人と最高の料理を作ってきなさい!」

宴会場が湧き上がり、その声だけで揺れた。

これが能登さんの信頼。

そうだ……私たちの努力はまだ報われてないかもしれない。

でも!

私と小松と能登さんの努力は絶対認められてる!

"金沢リゾート"の人たちにも、"明誠荘"の人たちにも。

すると能登さんが私のところに来た。

「輪島! いや……美香。お前は本当に頑張ってる。緊張しなくて大丈夫だ。明日必ず報われる。」

と言ってくれた。

「ありがとうございます! 能登さん体調優れてないらしいけど大丈夫ですか?」

そう。

ここ最近、能登さんの体調が良くないのだ。

忙しくて病院に行く暇がないため、部屋でゆっくり休んでいる。

「ああ……明日は大丈夫だ! 必ず成功させるぞ!」

と言って、能登さんは去っていった。

私もそろそろ帰ろう。

と思ったその時背後から声がした、

「美香ちゃん。元気そうだね。準備は万全かい?」

と声をかけられる。

優しい声、北介さんだ。

「北介さん! 準備は完璧ですよ〜! いい料理が作れそうです!」

と答えた。

「そうかい。嫁も言っていた通り、君の努力はみんな認めてる。頑張るんじゃぞ」

「ありがとうございます!」

そうだ。

色んな人に認められて、色んな人に応援されて、今の私が出来上がってる。

私を笑顔で送り出してくれた人。

私を娘のように思ってくれている、母のように優しい人。

私の気持ちを理解してくれる、父のように頼りになる人。

私をリスペクトしてくれる後輩。

私を褒めてくれる優しい先輩。

ありがとう。

いざ、決戦へ。

2014年9月1日。


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