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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

田舎の日

作者: PeGuevara

障子とガラス






日に焼けて、茶が肌色にも似ている縁側の床板。


Am 8:30の色は鮮やかで、キラキラと舞うなにかの粒子も見て取れた。


カーテンレースの影が揺れている。


下半分は凸凹とした加工ガラスのドアが並んだ。


上半分の透明なガラスと縦桟に切り抜かれた日差しの中は、もう暑い時期になった。


足元ばかりをひだまりに投げ出し、寝転ぶと埃と太陽と夏の匂いが強くなる。


背中と頭は硬さよりも心地よく冷えて、夜の残り香を楽しむ。


狭い、縁側を挟んで障子が並んでいる。


4枚。


中二枚を開けて居間を眺める。


敷居の溝は削れて荒いが、下桟もこのザラザラした浅いレールにしか収まらない。


くるぶしほどの段差を超えれば、8畳が寝ている。


平らなようで少し見れば目を凝らさずともささくれている。


中程には真四角で角の破れた敷物と、炬燵が布団を剥がれてテーブルになっている。


頭の右上、ガラスの外、庭、道、川を隔てて山肌があり、朝の鳥が発した声は、山の先端と空までの空虚を走るように渡って耳にも届く。


障子をはいって右手にガラス戸、左手に奥の間と隔てる襖が6枚ずつ向かい合い、向かって右隅にはブラウン管のテレビが座っている。


テレビ台は物入れになって透明な扉はマグネットが壊れていた。


木枠にガラスを嵌めた戸は玄関と居間をさえぎっていて、いつからか花火の落書きが居る。


敷居も木製でコマもない。


障子と違って溝が深いが、湿気を吸って木枠は曲がり、一番奥の滅多に開けない一枚などは、力を振り絞ってもびくともしない。


ガラスには切子の模様が施されていて、同じように見えて、毎日眺めていなければ気づかないほどの、微妙な違いが有るのだ。


縁側から炬燵を挟んで正面にはまた障子が並んでいる。


左端は出入りに閉じ開く。


手を入れる一枚を貼らずにいて、四角い窓になって向こうの台所をのぞいていた。


敷居をまたいで台所の床はフローリングでは有ったが、絨毯ばかりが大きくて飯台は足が低い。


柱の間に設けた物入れは、真黒いなかに木の色が残る。


手入れをすれば輝くような黒曜石の色を飲んだ柱たちと、同じ様そうであったが、磨かれることもなく美しいというよりは面白い趣であった。


左手には2段ほど降りて昔は土間だったキッチンがあり、シンクが有り、冷蔵庫が有る。


冷蔵庫だけは新しく、土間だった床も板張りであったがいつでも湿気て水が浮いているほどだった。


というのも、台所から裏手に出れば池があるのだった。


右手には山肌が迫っている。


いつも清水が落ちていて、近くにはわさびも取れるほどだ。


池を囲む山肌に緑が活きて、亀に見える岩には琉球なる椿の似た花が咲いていた。


苔むした池の岩と、大きな烏鯉、小さな錦鯉、突き立つ杉の山、隙間を埋める空の青、薄い雲がほのかな影になってほそく荒い舗装の道を歩く。


左手に鋭い流れと、削れきらぬ岩の川が砂嵐のような音と淀みのせせらぎを鳴らしている。


振り向くと見晴らしの良くなった池を眺めて、別の家が建っている。


それでも、砂嵐とせせらぎと薄い雲の影の下に居る。

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