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第3話 猫たちによるインターミッション

猫の耳に、どこからか、にゃあと鳴いた後に聞こえてくる声がある。 

「関東いうたら誰でも、真っ先に思い浮かべるんは東京やろ」

 大阪弁で語り掛ける、同じ猫と思しきその声の主は、どこにもない。

 天から吹き下ろす爽やかな初夏の風があるばかりである。

 だが、猫の虎徹はふてぶてしく答えた。

「おい、東京っつっても、ひれえぞ」

 極端なことを言えば、伊豆大島だろうが小笠原諸島であろうが、そこは東京なのである。

 大阪弁の猫の声は、ムッとして言い返す。

「だから何や、そっちが日本の中心で、こっちは地方やっちゅうんかいな」

「そんなことは言ってねえじゃねえかよ」

 むしろ、「地方」と呼ばれるその外で生まれ育った者は、何ら己を卑下することなどないのだ。

 それでも、大阪猫は不貞腐れる。

「そっちやないかい、日本の首都は」

 1匹で歩きながら、東京猫の虎徹は面倒臭そうに答える。

「東京にもあらあな、隅っこは」

 それは、首都の中の「地方」あるいは「周辺」と呼んでも差し支えなかろう。

 そして。

 四角い座敷が円く掃かれたとき、塵や芥やハウスダストの塊はどこに集まるか。 

 同じ理屈で、隅っこへとから弾き出された人たちが集まる吹き溜まりがあったとしても、何ら不思議なことなどありはすまい。

 大阪猫の声が不機嫌に告げた。

「その隅っこに、また送っといたで。頼むわ、後始末」

「毎度のことだが、先に言っちゃあくんねえか、孫六よ」

 孫六と呼ばれた大阪猫の声は、街を吹き抜ける一陣の風に吹き払われて、それっきりかき消される。

 その風は、さっき晴れ渡った空から吹き下ろしてきた、天からの風ではない。

 むしろ、死臭をまとわりつかせて地を這う風であった。

 皮肉な話だが、唐鼓の街には、そんな風こそふさわしい。

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