11話 魔法使いの悪魔乗り
天使の襲撃。
今までにない数の天使、そして魔物との戦いを繰り広げる美月達。
しかし、それも最悪の結果を迎える。
そう理解した少女はその力で辺りに暴風を巻き起こすのだった。
その日、一つの集落は廃墟と化しました。
魔物は本来助けるはずの人々を攻撃し喰らい……。
天使もまた人々を殺します。
そして生存者がいなくなったであろう街で暴風が吹き、残ったのはたった三つのイービル。
従来の量産型コピス。
真っ黒な悪魔ナルカミ。
そして、灰色の悪魔ジャンヌダルクの三機です。
誰かが生きていたかもしれない。
後に語られたニュースではそんな言葉は行きかいました。
しかし、それを誰も彼女達や支部、政府に文句を言う者は居なかったのです。
「なんだよ、あれ……」
何故なら、遠くでその光景を見ていた人達はあそこにはもう生き残りは居ないと決めつけそれを見ていたからです。
人類を滅ぼしに来た天使たちはたった一回の暴風でビルに地面に、山に川に海、様々な所に叩きつけられたのを……。
何機かは動かなくなり、もう何機かは武器を戦意を失い、去って行きました。
当然です。
その攻撃の出どころであるジャンヌダルクは動けなかった。
しかし、まだ動ける機体が二機も残っていたのですから。
何をしてくるのか分からない。
そんな状況で剣を交えるのは愚か者のする事だ、とでも言うかのように彼らは去って行ったのです。
避難した場所で歓声が上がりました。
誰も知りません。
そんな中、一人の少女はガタガタと震えているのを……。
――――寒い。
美月はイービルの中でそう感じました。
身体は動かなく、イービルも沈黙しています。
どうやら故障か魔力切れか、そのどちらかでしょう。
いえ、あるいは……。
目も見えない……。
もう開けている事さえ分からなくなった少女は一人死を確信しました。
動けない、痛い、熱い、寒い……。
様々な感情が入り混じり、まるで壊れた機械の様に同じ言葉を頭に思い浮かべます。
ですが、何の解決にも向かいません。
最早耳も聞こえない。
そんな状況で彼女は――。
さむ……い……よ…………の、ちゃ……。
初めての友人の顔を思い浮かべます。
なのに靄が掛かり、彼女の顔を思い出せませんでした。
彼女は気づく事さえ出来ませんでしたが、大粒の涙を流し……。
ゆっくりと瞼を閉じて行きます。
「ねぇ! 嫌だ……美月、美月!! 起きて、起きてよ!!」
友人が叫び声をあげるのを彼女は知りません。
「美月――――――っ!!!!」
その叫び声は辺りに響き……人類の勝利に酔いしれていた人々達はイービルへと目を向けるのでした。
ガラガラと音を立てる寝台車の上で美月は横たわります。
額からは血が出ており、彼女は辛うじて呼吸をしている状況。
「美月! 美月……!」
横には綾乃が並走し、彼女の名前を呼びます。
「邪魔です! いい加減にしてください!!」
そんな彼女にそう叫ぶのは吉沢です。
彼女が付いてきており曲がり角などで障害になってしまっていたのです。
一刻も争うであろう状況でパニックを起こしてしまっている綾乃は吉沢の言葉に反論できませんでした。
寧ろきっぱりと言われてしまいその場に立ち止まると美月が乗る寝台車を見送ります。
角を曲がり見えなくなったところで彼女の膝は折れてしまい……。
「嘘だ……」
そう呟くと顔をくしゃりと歪め、瞳から大粒の涙を流します。
服の袖で最初は拭っていました。
ですが、それも間に合わなくなり手で顔を覆う様にすると……。
「う、ぞ……だ……ぁぁぁ……」
もう一度そう呟き、その場で泣き始めます。
最初出会った頃……父を救ってくれた正義のヒロインでした。
再会した時は暗い少女……。
それでも、世界を救うためのイービルに適性があるかもしれない。
そんな話を聞き彼女の魔力を調べました。
本当にそれだけかと言われると違います……。
父を助けてくれた時とは違う彼女を心配もしていました。
だからこそ、彼女を助けたい。
そう思って虐められない様立ち回りました。
そうしている内に彼女の事がだんだん気になってきました。
仲良くしたい……そんな感情が生まれたのです。
勿論、それが否定される訳でもありません。
だからこそ、綾乃は彼女と一緒に居ることを望みました。
喧嘩をしても……イービルを降りると言われても、です……。
そんな彼女は自分達を守る為に傷ついた身体で魔法を使いました。
その結果がこれです……。
「無茶は……駄目って……いった、じゃん……」
泣き崩れる少女は……そう呟くと最早何も言えなくなり。
ただただ、その場で泣き続けました。
そして、祈るしか出来ないのです。
どうか……美月が助かりますようにと……。




