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10話 三人の悪魔乗り

 シミュレーターで培った経験を活かし戦う美月と綾乃。

 ですが、それは同時に美月に負担をかける事になっていた。

 魔法を使い続ける彼女は……一体どうなってしまうのだろうか?

「美月!!」


 天使に襲われるジャンヌを見て綾乃は叫びます。

 そして、機体の中で彼女は舌打ちしました。

 綾乃は美月の魔力の限界を把握していました。

 だからこそ、あの作戦を取っていたのです。

 魔法はタイミングを見計らって使う……。

 それが美月が無理をしない状況を作るのに役立っていたのです。


 ですが、実際の戦場ではそんな簡単に行く訳がありません。

 敵も考え動くのです。

 咄嗟の判断で魔法を使わないといけない時もあります。

 それが今起きてしまった。


「……だ、大丈夫」


 美月は息を整え綾乃にそう告げました。

 そして、すぐに天使へ目を向けるとブレイバーを振り下ろします。

 プロテクションフィールドのお蔭で天使の攻撃は防げましたが、美月のブレイバーも敵にあたる事はありませんでした。


『プロテクションフィールド展開終了まで後5秒……』


 そして告げられるのは魔法の効果が切れるというアナウンス。

 それが切れてしまえば美月は無防備です。


「っ!」


 急いで天使から離れなければと考え動くのですが……。


「――え?」


 天使はまるで魔法が切れるのを待つかのように美月を追いかけてきました。


「美月逃げて!!」


 綾乃はすぐに美月の元へと駆け寄ろうと考えました。

 しかし……。


「邪魔!!」


 天使に遮られ動けないのです。

 そして、魔法プロテクションフィールドも時間が切れてしまい……天使は待ちかねていたとでもいうかのように速度を上げ剣を横へと振り抜きます。


「ひっ!?」


 美月は慌ててコントロールオーブに魔力を籠めますが――。


『魔力増幅確認、プロテクションフィールド展開まで後5秒……』


 先程はすぐに過ぎてしまったそのたったの5秒という時間。

 それは、今は長く感じました。

 いえ、事実――。


「きゃぁぁぁあああああ!?」


 間に合わなかったのです。

 咄嗟の判断でブレイバーを盾にしましたが、ブレイバーは衝撃で折れてしまい。

 美月の乗るジャンヌダルクは横へと吹き飛んでいきます。

 ビルを壊し、ようやく止まった時には美月の視界は霞んでいました。

 どうやら頭を打ってしまったようです……。

 生暖かい物が顔を伝うのが分かります。


 血が、でてる……?


 そう気が付いて魔法で治そうとしたのですが、打ち所が悪かったのでしょう、身体は思う通りに動いてくれません。


「美月!? 美月!!」


 綾乃の声は聞こえました……ですが、それも遠くなっていきます。

 霞む視界の中見えたのは迫る天使……。


「あ……」


 逃げなければ、そう思う美月でしたが、どうにも身体が動いてくれません。


「っぅ!?」


 やけに冷静な頭は自分の腕が折れている事を告げてきます。

 動かない、このままでは死ぬしかない……そう気が付き、美月はその瞳から大粒の涙を流しました。

 やけに景色がゆっくりと見えました。

 振り上げられた大きな剣は美月ごとジャンヌを真っ二つにするでしょう。

 死ぬんだ、彼女はそう思いせめて最後は見たくないというかのように目を閉じました。


「――――――!!」


 そんな時です。

 誰かの声が聞こえました綾乃ではありません。


「せる、かぁぁぁぁぁああああああああああ!!」


 その叫び声は美月の耳に届きます。


 新谷……さん?


 声の主に気が付いた美月は瞼を持ち上げます。

 するとそこに映ったのは……コピスの姿と先程の美月同様横に吹き飛ばされていく天使の姿でした。


「夜空ちゃん! 無事か!?」


 焦る新谷の声に美月は答えなければと思いました。

 ですが、何も言えません。

 頭を打った影響でしょうか? それは分かりませんでしたが、今の美月には何も出来ないのです。

 ただ分かることは今彼女は新谷によって助けられたという事。

 そして――。


「この、このぉぉぉおおお! 退いて、そこ退いてぇぇええええ!」


 綾乃が叫びながら戦っているという事。

 途中で聞こえるめきめきと言う音は天使の背骨を発つ音でしょう。


「まずい、このままじゃ……」


 新谷はそう言いますが、美月にはなにがまずいのか分かりませんでした。

 彼女の目には移りませんでしたが、まだ天使たちは数を残していたのです。


「美月、美月!!」


 綾乃の声が聞こえ、彼女にも返事を返さなければと思う美月ですが……やはり、どうにもこうにもできません。

 そして、向こう側から、何かが折れる音が聞こえ――。


「う、そ……」


 少女の絶望した声が届きました。


「ぁ……ぁぁ?」


 声は震え、彼女は何を見ているのか分かりません。


「ま、まだこんなに!?」


 新谷も驚いています。

 美月はようやく今、絶体絶命の危機に居るのだと理解しました。

 そして、同時に彼女は激しい頭痛に見舞われます。


「――っぅ!?」


 すると、彼女の手は勝手に動き始めました。

 折れている腕は悲鳴を上げ、それでも動き、コントロールオーブを握ります。

 頭痛は激しくなり、魔力がどんどんと減っていくのを感じました。


『魔力増幅確認……テンペスト展開迄5秒……忠告します、魔力想定値を大幅に超えています。魔力を供給を停止してください、忠告します』


 聞いた事もないアナウンスが流れ、それでも美月の身体は止まりません。


『想定値オーバー……テンペスト展開』


 そして、魔法の発動を告げる言葉と共に辺りには暴風が吹き荒れるのでした。

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