7話 出撃する悪魔乗り
写真を消してもらう為に吉沢を探しに行く美月達。
だが、そんな時に天使の襲来が起きた。
しかし呼ばれたのは美月と綾乃だけだ。
聞けばリンチュンの斉天大聖は関節がおかしく出撃出来ないという事だが?
『天使出現位置は関東03! 急いでください!』
今回は美月達のいる施設から比較的近い場所です。
ですが、次に告げられたオペレーターの言葉美月達は固まりました。
『数は複数! そして、政府からアンノウンを投入されるとの事です』
アンノウン……未知と言う事は恐らくは魔法生物と言う事でしょう。
それよりも、美月達が気になったのは……。
「複……数……」
そう、天使の数が複数と言う事。
今までは一体、二体だけでした。
ですが、今回は複数とはっきり言われたのです。
それが意味するのは二体以上は確認できているという事でしょう。
「なんなの!? だって、天使は……」
それには綾乃も思わずそう口にするほど驚きました。
「この頃、俺達人類を潰しにかかってるのか? 一度の襲撃で数が増えている……」
新谷も焦る様な声色です。
美月は……今まで無かったことに戸惑いを感じました。
それもそうでしょう。
今まで一体で勝つ事は出来ず、二体でナルカミとコピスは撃墜されています。
ジャンヌダルクを用いる美月でさえ複数相手に戦えるか? と言われれば無理だというでしょう。
それこそ、リンチュンやリーゼロッテが居れば話は変わって来るでしょうが……。
残念ながら今はこの場には居ません。
『出撃準備完了です。ジャンヌダルク……任意のタイミングでどうぞ!』
オペレーターの声を聞きようやくカタパルトへと移動をしたことに気が付いた美月は深呼吸をします。
「ジャンヌダルク! 行きますっ!」
ぐんっと身体にGがかかり、機体は前へと進みます。
以前なら悲鳴を上げていた美月ですが、今回は何とか耐えれました。
とはいえ、怖くないという訳ではなく……その顔は固まってはいましたが、それは誰にも分からない事なので良いとしましょう。
「凄いね夜空ちゃん、悲鳴上げなかったね!」
外に出ると新谷にそう言われ美月は引きつった笑みで「あはは」と笑います。
「いや絶対、機体の中で固まってたでしょ?」
しかし、綾乃にはお見通しの様ではっきりと言われてしまい。
彼女は機体の中がっくりと項垂れるのでした。
ですが、今はそれで落ち込んでいる場合ではありません。
「あはは、とにかく現場に急ごう!」
新谷にそう言われ二人はコクピットの中で返事をします。
そして、現場である関東03へと向け飛び立ちました。
暫く進むと其処は地獄と言って良い場所でした。
天使たちは複数いると言っていましたが、多くても倍……4機ぐらいだと考えていました。
しかし、そこに居たのはその数を越した……。
「嘘、6機?」
「う、うん……見えるだけで6機だね」
美月と綾乃は呆然とするしかありません。
いえ、新谷も同じく呆然としました。
「ありえない、奴ら今まで手加減をしていたとでもいうのか?」
6機の天使たちは人間の街を攻撃し、廃墟にしていきます。
いえ、もうすでに遅かったと言って良いでしょう。
崩れたビル、断末魔が飛び交い、黙々と立つ黒煙。
まるで自分達に逆らった美月達に対する見せしめのようにも思えました。
このままでは駄目だ! 美月はそう思うとコントロールオーブを握る手に力を籠めます。
助けられる人が居るはず、助けないと!!
彼女はそう思い、銃を取り出しました。
ですが、それは新谷に止められます。
「新谷さん!?」
「だめだ、此処からじゃどうしたって被害が拡大する……おびき寄せないと……」
「そんな事言ってる場合!? 悲鳴聞こえないの!? さっさと倒した方が良いに決まってるでしょ!?」
新谷の判断に噛みつくのは綾乃です。
美月はどちらの意見も正しいと思いましたし……事実、綾乃と同じ考えで行動しようとしました。
ですが……。
「駄目だ……僕が注意を引く……二人は確実に仕留めてくれ……」
新谷はそう言うと一人イービルを動かし始めました。
その時です。
咆哮が鳴り響き、地面が揺れます。
何事か? そう思った時目の前を通り過ぎたのは見た事もない巨大な生物。
それは天使へと向かい体当たりをすると辺りの建物をなぎ倒します。
「「「!?」」」
突然の出来事に声を失う3人。
そう、目の前に現れた猛獣は……恐らく、いえ、間違いなく魔法生物。
「あれが、魔物?」
天使にその牙を爪を突き立てるそれはまさに猛獣と言って良いでしょう。
ですが、すぐにそれは危険な物だと美月達は判断しました。
何故なら――。
『――――――!!』
それは天使が動かなくなると次の獲物を探し、暴れ始めたのです。
その様子から見て美月達は何を襲っているのかを理解しました。
「まずい! 人が襲われてる!」
「もう待てないです、撃ちます!!」
新谷の声とほぼ同時に美月が叫ぶように告げると今度こそ止める声はありませんでした。
美月は呼吸を整え、標的を絞るとトリガーを引きます。
本来天使を倒すために存在する武器は魔物を撃ち抜き身体を揺らします。
ですが、倒す事は出来ず……それは美月達の方へと目を向けました。




