6話 捜索する悪魔乗り
美月は吉沢を追いかけるも、その姿はすでになかった。
代わりにリンチュンと出会い話しているとどうやら悪い予感は当たったようだ。
慌てて吉沢を探しに行く美月だったが、今度は綾乃とぶつかってしまい、彼女に怒られてしまう。
焦った彼女は走った理由について綾乃に訴えると彼女は音を立てるように固まったのだった。
「あ、綾乃ちゃん?」
美月は固まってしまった彼女の名前を呼びます。
すると彼女はまるで立て付けの悪い扉の様にギギギギと身体を動かし。
「探してくる」
何時も聞かないような声でそう言い残すと……。
「どこ行った変態!!」
と怒鳴りながら去って行ってしまった。
「あ、綾乃ちゃん?」
美月は初めて見る彼女の変わりように呆然とする事しか出来ず。
「アヤノちゃん、凄く怒ってる……」
リンチュンも信じられないものを見るような目をし、開いた口がふさがらない様です。
二人は暫くそうしていたのですが、ハッとし……。
「わ、私達も探さないと、消してもらう様にお願いしたいし」
「手伝うよ、後が怖いから歩いて行こう」
美月の発言にリンチュンは手伝う事を告げました。
二人は引きつった笑みを浮かべ、その場から移動をし始めました。
「それで、リンちゃん……吉沢さんは何処に行ったの?」
「確かあっちの方」
先程、件の人物にあったというリンチュンに話を聞き、美月はそちらの方から探してみようと考えました。
この施設は広いのですぐに見つかる事は無いでしょう。
ですが、リンチュンとすれ違った時は変な顔をしていたというので目立つはずです。
「ぜ、絶対に消してもらわないと」
変な事に使われるのは分かってるから……。
美月は心の中でそう付け足し、秘かな決意をします。
その決意とは……。
もう、写真撮るのやめてください! ってちゃんと言わないと。
じゃないと……安心できない……。
がっくりと項垂れる美月を見てリンチュンは首を傾げます。
美月は溜息をつきながら身を起こし……。
「行こ、リンちゃん」
「うん!」
二人は再び歩き始めるのでした。
そして暫く歩いた所ですれ違った人達に吉沢の話を聞きます。
すると聞こえてくるのは……。
「ああ、貴女は最近のお気に入りだもんね、被害者多いんだよね、女同士だからってやっていい事と悪い事が」
「あの、それで……」
「どこ行ったか? ごめん、作業してたから気が付かなかったよ」
と似たような事ばかりでした。
当然美月はこのまま見つけられないのではないか? と不安になります。
さらには……施設内に警報が鳴り響き……。
「嘘……」
美月は顔を引きつらせます。
『天使が出現しました、悪魔乗り夜空美月、姫川綾乃はハンガーへ』
放送がながれ、美月は首を傾げました。
リンチュンの名前が呼ばれなかったのです。
何故だろう? そう思った彼女でしたが……。
「実は、斉天大聖関節がおかしくて……」
「そ、そうだったの!?」
初耳でしたが、それでは戦う事は出来ません。
仕方がないと美月は考え――早く吉沢を探したいという気持ちを抑え、ハンガーへと向かいます。
するとリンチュンが追って来る気配がしません。
振り返ると彼女は笑みを浮かべ……。
「私探しておく、写真消してもらえばいいんだよね?」
と言ってくれたました。
美月は心強い味方に頷き笑みを見せると……。
「うん、ありがとうっ!」
とお礼を告げます。
美月は振り返ると改めてハンガーへと向かいました。
ハンガーへと着き暫くたつと頬を膨らませた綾乃が来ました。
彼女は明らかに起こっているという態度でナルカミへと乗り込みます。
そんな彼女を見て心配になったのでしょう、整備員の一人は話しかけますが、何も答えない綾乃に困った様な笑みを浮かべ去って行きます。
「あいつ、相当怒ってるな、何かあったのか?」
「あ、えと……」
反応に困ってしまう美月に伊逹は勘違いをしたのでしょうか?
「喧嘩ならすぐ仲直りした方が良いぞ、こんな戦いをしてるんだ。何時何処で別れが来るかもわからん」
「そうだね、そうした方いい」
違うと言おうと思った時、聞こえたのは新谷の声です。
彼はそう言うとイービルへと向かっていきます。
どうやらコピスの修理は終わっていたようです。
恐らくハンガーに居たので放送では名前を呼ばれなかったのでしょう。
「後悔してからじゃ遅いってのは……辛いからね」
彼は悲し気な声でそう口にします。
「大丈夫です、あの喧嘩はしてないですから」
美月は正直に答えます。
すると伊逹は何処かほっとしたような表情を見せ、新谷は振り返り笑みを見せるのでした。
美月は彼の笑みを見ると心臓の鼓動が早くなる感じがし……。
顔も熱くなってきます。
ぅぅ、またこれだ……私、どうしたいんだろう?
何故、新谷と綾乃……二人に対する時こうなってしまうのか?
そして、自分がどうしたいのか? そんな疑問を感じつつ美月は自身のイービル……ジャンヌダルクへと乗り込むのでした。




