2話 作業を終えた悪魔乗り
人員を削減されるかもしれないと考えた支部は美月達悪魔乗りにイービルの整備を覚えさせることにした。
そんな時であったのは志田里奈という女性。
彼女の話で分かった事だったが、どうやら美月は支部の勝手なランキングで守ってあげたい女の子に選ばれていた様だ……。
「ふぅ……」
美月は今日の作業を終えると椅子に座り溜息をつきます。
その理由は先程里奈から聞いた事です。
自分が守ってあげたい女の子に選ばれているなんて考えもしなかったからです。
「ぅぅ……」
余りの恥ずかしさに顔を伏せ手で追おうと彼女はイヤイヤをするように頭を振ります。
「って、どうしたの? さっきから……」
当然、一緒に居る綾乃はそれを見て心配そうにしてくれるのですが……。
「だって、だって……」
美月は彼女に原因を告げると綾乃はきょとんとした顔をし……。
「ああ、なるほどー」
何故か納得したかのような顔になりました。
美月は何故そこで納得されてしまうのだろう? と考えましたが、綾乃は笑みを浮かべて答えます。
「確かに美月は守ってあげたいよね! こう、なんか、なんというかなにかが刺激されるというか……ね?」
「って綾乃ちゃんも?」
まさか綾乃にまでそんな事を言われるとは思わなった美月は顔を更に真っ赤にします。
すると、綾乃は……。
「そりゃ、うん……少なくとも、私はそう思うし――――っていうか、まずいな……変な虫つかないかな」
言葉尻に何かを言った気がしますが、美月には聞こえておらず首を傾げました。
すると綾乃も顔を赤くし両手を美月に向けぶんぶんと振りました。
「い、いいいや!? なんでもないよ?」
「何でもないなら、何で慌てるの?」
美月の言葉にますます顔を赤くする綾乃。
何かあったのでしょうか?
今度は美月が彼女を心配し、もしかして熱があるのでは? と考えた彼女は徐に額に手を当てました。
「ひぁ!?」
すると今まで聞いた事もない声が聞こえ、怪訝な顔を浮かべた美月は……。
「やっぱりちょっと熱いよ? 少し横になった方が良いかも?」
と告げるのでした。
それを聞いた綾乃は「あはは……」と笑い。
「そ、そうだね、そうするよ」
と口にすると立ち上がります。
「あ、待って、近くに私の部屋があるからそこで休もう?」
美月は心配してそう提案します。
すると、綾乃は更に顔を真っ赤にしふらふらとすると……。
「だ、大丈夫!?」
「あ、うん……」
どこか上の空になるのでした。
部屋へと着いた美月は早速自分の部屋に綾乃を通し……。
「大丈夫? 休んで?」
と心配します。
ですが、綾乃はそれに答えずやけにぎくしゃくとした動きで床に座りました。
「そ、そっちじゃなくてベッドで横になって?」
当然美月は彼女にそういうのですが、綾乃は先程の動きからは想像できない程に首をぶんぶんと振り。
「いや、それは良いよ!」
そう言われて美月は怪訝な表情を浮かべます。
そして、思い当たることがあったのでしょう、不本意そうな顔をしながら……。
「臭く、無いよ?」
と告げるのですが、綾乃は苦笑いを浮かべます。
そうされると途端に不安になった彼女は自分の臭いをかぎますが、整備の仕事の後はすぐにこちらに来たので少しオイルの臭いがします。
「えっと、今はあの……と、とにかくベッドはちゃんとシャワー浴びてからだし臭くないよ?」
もう一度確かめるように言うと、綾乃は――。
「いや、だからまずいんだけど……と言うか今も結構やばい……」
「……え?」
「な、何でもない」
臭くないからまずい、小さな声でしたが、今度はしっかりと聞えました。
何故そんな事を言うのでしょうか?
く、臭くないって事は嫌じゃないって事だよね?
それにだから…………まずいって…………。
美月はようやくその意味に気が付き、ぼんっ! と音が出そうなほど顔を真っ赤にしました。
すると、綾乃も美月の様子を見て気が付かれた事を知り、ますます顔を赤くすると……。
「あ、ああああたしやっぱ帰るよ! その、ね?」
慌てて立ち上がったかでしょう、ふらりとし……美月は思わず彼女へと手を伸ばします。
すると二人して体勢を崩し……。
「「きゃあ!?」」
同時に悲鳴をあげながらベッドへと倒れ込みました。
幸い頭などはぶつけませんでしたが、美月は綾乃に押し倒されるような形になり――。
「「……………………」」
二人は見つめ合う形になってしまいました。
お互いは顔を赤くし、その瞳は潤んでいます。
美月の綺麗な黒髪はベッドに広がり、綾乃の綺麗に染められた髪は美月の頬をくすぐります。
二人は心臓の音がうるさいぐらいに内側から響くのを感じました、
そして、ゆっくりと綾乃の顔が美月へと迫り、美月は思わず瞼を閉じると――。
「美月ー?」
ノックをする音と共に母の声が聞こえびくりと二人は身体を跳ね上げると慌てて離れます。
「な、なななな!?」
「どうしたの? 凄い音だったけど、まさか喧嘩?」
母は心配してきてくれたようです。
「ち、違うの! ただ転んだだけで! 喧嘩してないよ!」
「そ、そうです、喧嘩なんて……!」
二人は慌ててそう答えると扉の向こう側でほっとしたような溜息が聞こえます。
「そう、なら良いんだけど、もし怪我してるなら治しておきなさいね?」
そう言って母は去って行き、美月達は同時にほっと息をつくのでした。




