表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
81/241

1話 整備を覚える悪魔乗り

 夜空美月という少女は寄生虫ミュータントをその身に宿す魔法使いだ。

 そんな彼女は誰かを助ける為に魔法を使っていた。

 だが、ある時同級生である姫川綾乃の治療を試みていた時、人類の敵である天使(アンゼル)に襲われる。

 彼女運命はそこで代わり、対天使大型兵器……イービルへと乗り込むことになった。

 最初は頼りなかった彼女は……悪魔乗りとなるのだった。

 動物の魔法使い化……魔物のニュースが流れてから早一週間。

 支部の中は慌ただしくなりました。

 現状天使(アンゼル)への対抗手段であるイービルは魔物の運用によっては支部の解散もあるからです。

 とはいえ、今はまだ魔物が十分に確保できていないため美月達の支部の運用は一応されていました。


「勝手だよねぇ……」


 そんな事を呟くのは綾乃です。

 美月もまたそれには肯定しており、何度も首を縦に振りました。

 しかし、政府が決めてしまった事に何か文句を言うのも難しく……。


「これから、どうなるんだろう?」


 美月はそんな不安を口にしました。


「分からない、ただいざって時には父さんには考えがあるみたいだけど……」


 美月の不安に対し、答えが無い綾乃はそう口にしました。


『所で、魔物は絶対に安全なのでしょうか?』

『はい! 調教し、躾けることが出来るようですよ』


 ニュースではそんな事を離しているのですが……それを聞き美月達は顔をしかめます。

 過去の事件の事を聞いたのでそれも当然でしょう。


「嘘ばっかり……」


 綾乃の呟きに美月は頷くと今日の仕事を終わらせるためハンガーへと彼女と共に向かうのでした。



 美月達のその日の仕事はイービルの整備の手伝いです。

 人が減るであろうイービル支部は先に整備を出来る人間を増やしておこうと考えたようです。

 それが、それぞれの機体の悪魔乗り。

 悪魔乗りであるならば、その場ですぐに確認もできるからだという事ですが……。


「ええっと……」

「これが、関節の損傷したので、こっちが……摩耗……」


 まずはどのような状態が良く、悪いかを確認するところから始まります。


「そうだ、そして、一番重要な部分」

「背骨だな……こいつは確か人間と同じだったはず……」


 伊逹の言葉に続く新谷はその場に置かれていた背骨のパーツへと手で触れました。

 それは思っていたよりも小さく区切られている様です。


「ああ、人間と同じように24個のパーツに分かれてる……そいつがS字を描くことによって揺れの軽減につながるんだ」

「「へぇ~」」


 美月と綾乃は同時に感心した声をもらしました。

 背骨のパーツのお蔭で頭に揺れが来ないようにしているというのは知っていましたが、それがどんなものなのかは知らなかったのです。

 それだけじゃありません。


「24個もあって、ずれたりしないの?」


 そんな声が聞こえ、美月達は振り返りました。

 するとそこに居たのは――。


「リンちゃん!」


 そう、中国のマナ・イービル斉天大聖の悪魔乗りリン・チュンがそこに居たのです。

 彼女は柔らかい笑みを浮かべると小走りで近づいて来ようとし……。


「ちょ!? 走らない!!」


 綾乃に注意をされるとびくりと身体を固めます。

 当然彼女の大きな胸も揺れる事になり……。


「おお……」


 と言う声がそこら中から上がりました。

 すると綾乃は辺りの男性達に鋭い視線を送り、その視線が合わさった男達は明後日の方向を向きます。


「全く……」


 ため息をついた彼女はリンの方へと向きました。


「まだ居てくれたんだ」

「うん! メイユエ達に会いたかったから!」


 と屈託のない笑みを浮かべる彼女に癒される美月と綾乃。

 勿論男性陣もその様です。


「ええっといいか?」


 そんな中一人冷静な伊逹は話を続けようとし……。


「伊逹さんってあのおっぱいに反応しないのか……もしかしてほ……」

「お前ら後で酷いからな、俺は死んだかみさんだけで十分だ……」


 そんな事を言った彼を美月は意外そうに見つめ、その視線に気が付いた彼は恥ずかしそうに咳払いをするのでした。






 それから整備の勉強を続けていた美月達。

 今は特に出来る事は無くオイル交換ぐらいです。

 と言っても関節部分にオイルをさしたりするくらいなのですが……。


「イービルって複雑なんだね」


 美月は思わず呟きました。

 すると彼女の傍にいた整備士の女性は顔をオイルまみれにしながらはにかみ答えます。


「そうだよ! それにデリケートなんだ! だから、大切に扱ってあげないといけないんだよ!」


 彼女は生粋の日本人なのでしょうか? クリーム色の髪をしていました。

 少し癖のあるその髪は後頭部で一つにまとめられています。

 ポニーテールにしていました……どうやら、かなりイービルには詳しいようなのですが、美月は見た事が無い人です。


「あ、あの……」

「それにしても気が弱くて声小っちゃいって聞いてたけど普通だね?」

「………………」


 美月は彼女の名前を訪ねようとしていましたが、彼女は美月の事を知っている様です。

 そして、突然言われた事に美月はぽかんとしてしまいました。


「あれ? どうしたの?」


 本人は気が付いていないのでしょう、考えるそぶりを見せ……。


「あ……」


 何かに気が付いたようでぽんっと両手を合わせます。


「わたしは新人整備士の志田里奈! よろしくね、こう見えても一応ハーフなんだ、髪と目の色ぐらいしか判断材料ないけどさ」


 と自己紹介をしてくれました。

 美月はようやくはっとし……。


「夜空、美月です……」


 と答えると彼女はうんうんと頷きます。

 そして、現状で新人整備士とはどういう事だろうか? と疑問に思った美月は訪ねようとしましたが……。


「現代のジャンヌダルク、なんか支部内の守ってあげたい女の子1位に選ばれてたね、羨ましいなぁ」

「何ですかそれ!?」


 予想もしない言葉に思わず声をあげてしまい、彼女達の会話を聞いていたのだろう男性整備士は彼女達の視線から逃げるように動きます。

 どうやら、冗談ではなく本当の様です……。

 美月はかぁっと顔が赤くなるのを感じました。


 なんで……? なんでそんな事になってるの?


 と、一人考えますが誰も答えてはくれないのでした。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ