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78話 司令官の元へと向かう少女

 日本へと戻る美月達。

 一方、その日本では魔法生物の資料へと今一度、目を通す司が居た。

 彼は資料を目にし……かつての失敗を思い出すともう繰り返されてはいけないと呟くのだった。

 美月達は帰還したその足で指令室へと向かいます。

 目的は任務を無事達成したという報告に向かう為です。

 そんな中、施設内にニュースが流れました。


『先日から議論に出ていたミュータントを動物へと寄生させ、天使(アンゼル)への抵抗手段とすると言うものですが、今日可決されました』

「え?」


 それを聞き綾乃は思わず立ち止まります。

 以前効いた話ではどう考えても無理だと思っていたからです。


『ですが、ミュータントは人間以外だと死滅するんですよね?』

『ええ、ですので使い捨ての兵器となるようですね』


 使い捨ての兵器。

 生き物としてではなく、道具に変えられてしまうという事を知り、美月達は戸惑います。


「それじゃ、イービルは?」

『それではイービルはどうなるのでしょうか?』

『現在イービルでは対抗できないとし、実践投入され次第イービル支部は解散となる予定です』


 それを聞き、驚きの声を上げるのは美月達だけではありません。

 ニュースは施設の中に強制的に流れているのです。

 当然美月達の傍を歩いている人、此処から見えない人も聞いていることでしょう。


 どういうことだ!? なんて言う声がそこら中から湧いてきました。


『ですが、そうなるとミュータントの数が気になりますね、現在魔法使いが多くなってしまった影響でかなり数が減っているのでは?』

『そうですね、そちらについては後日発表するとの事で――』


 美月達は最早ニュースなど耳に入っても頭に入る事はありませんでした。

 どういう事なのか、それを知る唯一の人物の部屋の方へと目を向けた彼女達は――。


「急ごう!」

「う、うん! 分かったよ綾乃ちゃん!」


 速く部屋に着くため美月は綾乃におぶさり移動をします。 

 走ってしまえば当然美月には負担がかかるからです。

 重くないかな? なんて考えましたが、綾乃はそんな事を気にしている様子もなくぐんぐんと走って行きました。

 そして、指令室へと辿り着いた彼女達は中を確認する事も無く飛び込みます。


「ですから! 非人徳的だと言っているんです!!」

「きゃ!?」


 すると聞こえてきたのは怒号。

 美月は思わず小さな悲鳴をあげます。

 それが聞こえたのでしょう、司は美月達の方へと振り返ります。


「…………急用が出来ましたので後程折り返し連絡をいたします」


 彼はそう言うと、受話器を置き美月達に笑みを浮かべました。


「ねぇ、今の何?」

「………………」


 綾乃は父に問いますが、彼は答えません。

 いえ、この状況で連絡をしているのです、他にないでしょう。

 そして、綾乃は――。


「答えてよ父さん! 今の何? 動物を兵器にって、それにイービル支部が解散って! それにミュータントの数は限られてるそんなの手に入れる方法なんて――」


 摘出しかない、綾乃はその言葉を飲み込みました。


「摘出手術、ですか?」


 ですが、美月もその事に気が付くと司に問います。

 すると彼は頷き……。


「ああ……」

「ああって! それがどんなに危険な事か政府の人は分かってるでしょ!? 成功率は低いって事ぐらい!!」


 綾乃は感情的になり怒鳴り声をあげます。

 それは司も想像していた事なのでしょう、敢えて黙って聞いています。


「そんな事をして作り出すのが使い捨ての兵器! 天使への対抗手段なら各国にマナ・イービルが出て来てるじゃん! これからなのに、なのになんで――!!」

「日本は焦っているんだよ、これまでこの国は車の技術や他の専門職、漫画アニメなどのサブカルチャーで食べてきた」


 彼はそう言うと……大きく溜息をつきます。


「だが、現在はロクに輸出出来る物もなく、枯れる一方だ。此処で新たな技術を開発し、それを売り込みたいんだろう」

「そんな……」


 美月はなんでこんな時に? と思いましたが――。


「君達はドイツの食事を見てどうだった?」

「日本のよりずっと豪華でした、美味しかったし……味付けもしっかりしてた」

「そうだね、あんなの日本じゃ食べられないよ」


 二人の感想に司は頷く……。


「現状、恐らく最も貧しい先進国は日本だ……君達が普段食べている物でも十分豪華、一般人は味がしないものを口にしている事が多い」


 彼はそう言うと――息を大きく吸います。


「だからこそ、売り込むモノが必要なんだ……人々の暮らしを安定させるのは良い事だ。だが……今回のそれが正しいとは思わないし、協力も出来ない」

「父さん?」


 彼の言葉には重みがあります。


「ミュータントを解析し人工ミュータントの開発、なんかも考えているみたいだけどね、机上の空論で現実味が無いんだ……魔法動物も恐らくは失敗に終わるだろう」

「なんで分かるんですか?」


 美月が問うと彼はゆっくりと口を開き教えてくれました。


「かつて、それは案として出たんだ。勿論その時は人間に犠牲を出さないためにと言う名目だったけどね」


 そう言って昔を思い出すように目を閉じると……。


「結果は酷い物だった……実験に携わった物の内一人が死に、情報提供のため出向いていた悪魔乗りの一人は酷い怪我を負ってね……実験は失敗に終わったんだよ」


 そう告げるのでした。

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