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77話 日本へと戻る少女

 リーゼロッテの実家にて日本では食べた事も無いような食事を楽しんだ美月達。

 それはリーゼロッテを送った事と天使レーダーのお礼だという。

 こんなのを食べたらもう日本のは食べられない。

 そんな感想を言いつつ二人は食事を頬張るのだった。

 翌日美月達はハンガーへと向かい、日本に戻る準備を進めていました。


「えっと……これで……」


 システムはオールグリーン……後は発信するだけです。


「それじゃいくよ! 美月!」

「うん!」


 任務を終えた美月達はリーゼロッテの父親から無事、リーゼロッテを送り届けた事と感謝の言葉を一筆を貰っています。

 それを大事にしまった彼女達は日本へと向け飛びだちました。


「ふぅ……」


 そんな中、美月はほっと息をつきます。

 なぜならドイツにはあのカタパルトが無かったからです。

 なぜ日本はあんなのがあるのだろうか? と疑問に思ったほどです。

 するとそれは綾乃が答えてくれました。


「日本のあれはどうやらアニメとかの影響みたいよ?」

「そ、そうなんだ……苦手だからそういう影響はいらないよ……」


 美月は何故自分の考えている事が分かったのかよりも、何故それに影響されたかの方が気になりました。


「でも、出発の時にいらないんなら……」


 もう日本のも無くした方が良いのでは? と考えたのですが……。


「それは無理じゃないかな? やっぱりあれを使うと燃料は多少でも温存できるし急いでる時には便利だからね」

「そ、それはそうだけど……」


 実際にカタパルトを使うとわざわざ出発の時に手動で速度をあげなくても済みます。

 その為、彼女の言った通り燃料の温存が出来るのです。

 だからこそ、日本では採用され続けているのでしょうが、美月にとってはそんな事は関係ないのです。


「でも、マナは発進の時に燃料そこまで使ってないよね? 綾乃ちゃんの機体も大丈夫だし、ね?」

「まぁ、その面は見直されてるからね。でも実際普通のイービルじゃ速度つけるのに時間が掛かるよ?」


 そう言われても美月が見た事がある普通のイービルは空を飛んでいるか、もしくは……新谷のコピスぐらいです。

 それに最初からあれを使っていたので比較するにも出来ないのです。


「そうなの?」

「そうなの! だから……あれは必要なんだよ、まさか全部の機体をマナにするなんて事できないし、ナルカミもナルカミで量産するにはコストが……」


 そう言われてしまえば美月は黙るしかありません。


「そ、そうだね……」


 マナ・イービルにはその名の通りマナ……魔法が必要です。

 ですが誰もが魔法使いに……寄生虫ミュータントに適合できるわけではありません。

 そして、ミュータントは人に寄生しないままでいると活動を停止……。

 死んでしまうというケースも見られたようです。


「今は世界で魔法使いになれる人数も限られてる……一番多いのはアメリカだけど……それだって量産型を作るには思い切る事になるからね」


 綾乃は先を進みながらそう言い。

 美月はふとある疑問を思い浮かべました。


「そう言えば、なら何で日本の政府は動物にミュータントを?」


 ミュータントは人に寄生する事で生きながらえる生物です。

 動物に寄生できるのかが分かりませんし、なにより……。


「そう言われればそうだね、ミュータント自体の数だって多くないのに……一体なにを……」


 美月達は政府に不安を覚えながら日本へと向かうのでした。



一方その頃。

 指令室で一人、司は資料を見ていました。


「…………」


 そこに書かれているのはミュータントを動物に寄生させる実験と言う項目の資料。

 彼は一度その中身を見ているのですが、もう一度目を通します。

 中に書かれていた内容は……。


 天使の襲撃は激しさを増し、人間はどんどん衰退している。

 だからこそ、兵器が必要であり、動物の魔法使い化は成功している。

 既に実験では問題なく戦闘行為が行われた。

 多少、暴走の傾向がみられるがこれは沈静化が行えるため問題ではない……。

 問題は寄生虫ミュータントには数に限りがある。

 ましてやどうやって生殖し数を増やすか知ることが出来ないミュータントではどう足掻いても天使との戦いを行わない魔法使いを作るというのは戦力を減らす手にしか思えないだろう。

 なにより、日本がそのミュータントをどうやって手に入れるかだ。


 という事が書かれていました。


「…………我々は神になったつもりか?」


 司は思わず口にしてしまいましたが、その後に書かれていた事は――。

 今存在する日本の魔法使い、彼らにミュータント摘出手術を施すと言うものでした。

 摘出は寄生手術よりも危険が伴うというのにです。

 そして、その成功確率は決して高いと言うものではありません。

 寧ろ低い方だという事を彼は知っていました。

 そして、出来あがる魔法動物は……司も嘗て見た事があったのです。


「あのような物を増やす訳には……いかない、もう魔法生物は生み出してはいけないというのに……」


 兵器と言うより、ただの天災と言った方が良いでしょう

 放ったら最後死ぬまで周りのモノを壊しつくすのです。

 人であろうが何であろうが……実験ではかつての失敗を繰り返さないようネズミでおこなったとありますが、それも到底成功とは言えない結果になっている事は彼には分かり切っていました。

 そして、ミュータントの影響に耐えきれる訳がなく動物は死ぬしかないのです。

 何故かは分かりませんが、ミュータントは人にしか適合しないのです……。


「だからこそ、どんなに対策をし実験を繰り返しても化け物が生まれる……愚策にしか思えないな」


 司はそう口にすると天井を仰ぎます。


「どうにかして成果をあげなければ……あの子が……いや、あの子達が危険だ。あの時の様に悲しい結末を生み出してはならない……」


 そして、そう呟くと……どこかに連絡を取るのでした。








 美月達が日本に辿り着くと、伊逹達が駆け寄って来ました。


「嬢ちゃん、平気か?」


 どうやら心配してくれたようです。

 美月は頷き答えると彼らはほっとしたような表情を浮かべてくれました。


「良かった君達が出てすぐに政府も派遣されてたみたいでね、帰って来る時にひと悶着あると思ったんだけど」


 そう言うのは整備士の青年です。

 名前は美月は知りません……聞く機会を逃してしまいそのままなのです。


「そういや無かったね」


 綾乃はそう言うともしかして父親が手を回してくれていたんじゃないか? と考えました。


「うん……」


 一方美月は何故自分達の元へ追手が来なかったのか不安を感じ……ジャンヌへと目を向けるのでした。

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