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76話 問題を解決した少女

 天使レーダーにはアンテナがいらない。

 しかし、地理に詳しいものが必要となる。

 そう問題点を告げられた美月達。

 彼女達は見つからないのであれば育ててしまえばいいのではないか?

 そう告げるのだった。

「そうか、確かに居ないのなら育ててしまえば良い!」


 彼はそんな風に口にしました。

 どうやら気が付かなかったようですが、そんな事より先程の大声でびっくりした二人は身を寄せ合います。

 そんな彼女達に質問を投げかける声がありました。

 それはリーゼロッテの父親です。

 彼の言っている事が当然分からない二人は更にくっつき不安を紛らわせようとするのですが……。


「――? ―――――!」

「わ、わわ分からないよ……」


 美月は怯えた声でそう言いました。

 するとリーゼロッテが間に入りなにやら話し始めました。

 彼女の話を聞いた彼は驚いたような表情と大げさな態度で……。

 何度も頷いて見せます。


「今、二人の話をお父様にも伝えたんです」


 リーゼロッテは振り返ると笑みを浮かべそんな事を言います。


「あ、はは……ははは、そ、そうなんだ?」


 綾乃は引きつった笑みで返すとリーゼロッテは可愛らしくも小首を傾げます。

 どうやら本当に教育案は考えていなかったようです。


「流石は日本人、勤勉だね……最初からできる人を探していたから駄目だったのか!」

「そうですね、気が付きませんでした」


 感心する二人に対し、ようやく落ち着きを取り戻した美月と綾乃。

 二人はくっ付いている事にようやく気が付きお互いに顔を赤らめると慌てて離れます。


「き、勤勉って、それ一部の人だからね!」

「わ、私達は普通にしてるだけだよ?」


 二人はそれぞれそう言いますが、リーゼロッテ達は首を振ります。


「だって、日本人は夏休みも休まないって聞きましたよ?」

「そうだね、それに朝から朝まで働くとも聞いた覚えがある」


 美月達はそれを聞くと首を傾げました。


「夏休み? 休みは休みじゃない? 宿題あるけど……部活も……」

「それに、朝から朝って……本当に一部の人だけのような?」


 二人の疑問にリーゼロッテ達は顔を合わせ……。


「そうなのですか? 聞いてた話と違うのですか?」


 と少し驚いたような声で尋ねてくるのでした。


「ま、まぁそう言う事……とにかく、役に立てたならそれいいけどさ……」


 綾乃はそう言うと美月の手を握って来ました。

 美月は思いがけない事にびっくりするのですが――。


「でも、美月にくっつくのは駄目だから! 絶対」

「……はははは! なるほど、仲良しなんだね!」


 笑う彼でしたが、美月はそれどころではありません。

 綾乃とくっついていた事で心臓はどくんどくんと鳴り、顔を真っ赤にして顔を伏せました。

 ですが、綾乃に握られた手はしっかりと握り返します。

 恥ずかしい、と思いつつも手を離したくないと思ってしまったのです。


 私も女の子なのにおかしいのかな?


 美月はそんな疑問と不安を感じつつ綾乃の方へと目を向けます。 

 すると彼女は美月の視線に気が付いてくれました、

 ですが、すぐに顔を逸らしました。

 彼女もまた顔を赤くしているのです。

 そんな二人を見てリーゼロッテは小さく笑うと……。


「それでは食事に向かいましょう」




 案内された部屋には美味しそうな匂いが広がっていました。


「うわぁ……」


 机の上に並んでいる物で特に目を引いたのはソーセージです。

 滅多に食べれない物ではありましたが、日本でも食べた事があり二人は目を輝かせました。


「「大きい……」」


 二人はその大きさに驚き、歓喜の声をもらします。

 するとリーゼロッテは申し訳なさそうに微笑みました。


「昔より、食べられるものは少なくなってますし、大きさも小さくなったみたいですが……」

「こ、これで!?」


 彼女の言葉を聞き、リーゼロッテの方へと目を向けた綾乃はすぐに大きなソーセージを見て驚きます。


「美味しそう……」

「味は自信があります、さ……座ってください」


 促されるまま美月達が椅子へと座ると料理人らしき人はソーセージを取り、焼いて行きます。

 香ばしい匂いが部屋に広がっていき、美月達は思わずつばを飲みました。

 喉を鳴らすと、リーゼロッテは微笑みます。


「喜んでくれているみたいで良かったです!」


 彼女はそう言うと近くに居る父親に何やら話している様子。

 すると父親も笑みを浮かべ始めました。

 恐らくは美月達の様子を伝えてくれたのでしょう。


「……うわぁ、日本じゃめったに食べられないよ」

「そ、そうだね……」


 やがて二人の前に運ばれて来た立派なソーセージを見て感心した声をあげます。

 そして、二人はナイフとフォークを手にソーセージへと切れ目を入れると……じゅわぁっと中から肉汁が溢れてきました。

 一口大に切ったそれを口に入れると何とも言えない味が広がっていきます。


「こ、こんなに美味しいんだ……」

「小さいのは食べたことあるけど大きさで味って違うのかな?」


 二人は味わう様に食べて行きます。

 そんな二人の様子を満足そうに見つめるリーゼロッテ達もまた食事を始めるのでした。



 その日の夜はリーゼロッテの屋敷に泊まる事になりました。

 戦いは無かったとはいえ、美月達は日本からドイツ迄わたって来た訳でゆっくり休んでから出発して欲しいとの事です。

 あてがわれた部屋で二人は夕飯の感想に花を咲かせます。


「そう言えば、おじさんは昔はもっともっと大きかったって言ってたよね」

「うん、今のは昔日本に売ってたソーセージよりちょっと大きいぐらいだって……日本のもあんなに大きかったんだね」


 二人はその事実に驚きつつも、あの味はもう忘れられないだろうと考えてしまい。


「日本の食べれないかも」

「う、うん……」


 小さくとも出て来る時には嬉しかったソレがもう楽しめないのでは? といった不安を感じるのでした。

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