75話 天使レーダーと少女
ドイツへと着いた美月達。
リーゼロッテは無事両親と再会した。
歓迎される中、美月達は天使レーダーの事を問うと彼女は大きな塔へと目を向けるのだった。
リーゼロッテが見つめる方へと顔を向けた美月達。
そこにあるのは立派な塔です。
ですが、天使のレーダーになっているというのにアンテナの様な物はありません。
疑問に思った美月達は首を傾げるのですが……。
「あれは魔法使いに使ってもらうからアンテナが必要ないんだ」
日本語が流暢な様子の男性が説明をしてくれました。
「でも、レーダーでしょ? 大きさは違ってもアンテナがあった方が良いんじゃ?」
と言いますが、彼は首を振り。
「ははははは必要ない! 愛を伝えるのに一々アンテナが必要かい? それと同じさ」
「た、例えが良く分からない……」
彼の例えに美月は思わず困惑をします。
すると彼は――。
「花束を持って愛していますと口にすればいいだけだろ? はっはー!」
「……いや、それはそうだろうけど、やっぱり例えとしては分かんないし……」
綾乃も引きつった顔で返すとリーゼロッテは困った様な表情を浮かべて……。
「ごめんなさい」
「いや、リーゼロッテさんは悪くないっしょ?」
謝る彼女にそういう綾乃。
そんな彼女達のやり取りを見て美月はふと思いました。
何処か、リーゼロッテと自分は似ていると……。
流石に自分が可愛い! とは思いませんでしたが……どこだろう? と美月が考えていると……。
「と言うか、そのすぐに謝ったりへこんだりするの美月に似てるね」
と綾乃が口にし、美月は頭に石を当てられたかのようなショックを受けました。
「似てるってそこが……?」
「うん、まぁ可愛い所もね?」
そう言われて今度は美月は顔を真っ赤にし両手を前へと突き出しぱたぱたとします。
「か、かかかかかか!? ち、違、私リーゼロッテさんみたいに可愛くはないよ!?」
「いや? 十分美しいよ、まるで砂漠に咲いた一輪の花みたいだ」
そう言って男性は美月に近づいてきました。
美月は思わず身構えるのですが、すぐに綾乃が割って入ってくれました。
「急に近づかないで、怖がるでしょ?」
どうやら守ってくれたようです。
美月はほっと安堵の溜息をつきました。
すると、彼は大げさな態度を取り……。
「おう…………」
と言うのでした。
そんな彼に溜息をついた綾乃はリーゼロッテへと向き直ります。
「それで、あれはどんなふうに?」
「中にイービルにある様なオーブがあるんです。それから登録してあるイービルに情報を送ることが出来ます」
「あ……コントロールオーブだっけ?」
それは美月も良く知る物です。
操縦桿の代わりにあるオーブ、それがマナ・イービルの特徴でもあります。
確かに魔法を使うための道具であるあれならそれが可能かもしれないと美月も思いました。
ですが、そうなると確かに魔法使いが必要です。
そして、それには地理に詳しいものが必要と言うのは本当なのでしょう。
「天使の位置を特定して、任意のイービルのレーダーに知らせる? のかな……」
美月がそう言うとその場にいた少女と青年は頷き……。
「「ヤー!!」」
と口にしました。
どうやら美月の考えは正しかったようです。
「だからこそ、今イービルと天使の距離がどの程度離れていて、どの方角に向かえばなんてのが分からないと駄目なんだよ! 可愛らしいお嬢さん」
彼はそう言いながら手を広げて美月に近づく……。
「ひっ!?」
まさか抱きつかれるのでは? と警戒した美月は思わず身を抱くようにすると綾乃が前へと割って入りました。
「それで、その魔法使いが居ないと」
そしてそう言うとまたもや聞こえてきたのは「ヤー」と言う言葉。
そして、彼は綾乃へと抱きつこうとし――。
「ちょ!? やめてよ!!」
彼女は慌てて彼の顔を押し拒否をします。
ですが、気にした様子もなく言葉を続けます。
「最初はうちのお嬢様の予定だったんだけどね、方向音痴でさ! これが全く駄目だったんでマナ・イービルの悪魔乗りになったんだ! はははははは」
「彼には私が失敗するたびに大丈夫だと言いながら笑われてしまいました」
その事は恐らく傷ついていたのでしょう。
ころころと笑うリーゼロッテでしたが、どこか悲しげでした。
「うーん……」
そこで綾乃は考え込みます。
この装置が本当に使えるのであれば、それはドイツだけの特権という訳ではありません。
同じ装置を各国にも作ることが出来れば……と考えたのです。
ですが、同時にやはり難しいのが地理に詳しい者。
車でちょっと移動する程度では無理でしょう。
「なら、魔法使いの誰かを教育して地理に詳しくしちゃえばいいんじゃない?」
何気なく口にしたその言葉。
美月も同じ事を考えていたのでしょう。
「そう、だよね……私も最初は地図読めなかったけど……」
初めてイービルに乗った時は地図何てちんぷんかんぷんでした。
でも、今なら少しなら分かるようになった美月も頷きます。
すると――まるで氷のように固まった二人は……。
やがて動き出し――。
「「ダスイスト!!」」
二人の揃った声に美月と綾乃はびくりとするのでした。




