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73話 ドイツへと向かう少女

 リーゼロッテをドイツへと送るため、イービルへと乗り込んだ美月達。

 だが、そんな彼女達の目の前に現れたのは吉沢信乃。

 妖精と言われるリーゼロッテが目当てらしかったが、会わせたくないと綾乃は出発を急がせる。

 しかし、彼女の想いは虚しく、出会いを果たしてしまった……。

 とはいえ、どうやら吉沢の好みではなかったようで視線を美月の方へと向け一行は急ぎ出発をするのだった。

 ドイツへと向けイービルを飛ばす美月達。

 その間、何度か道を照らし合わせては方角を調整し進みます。


「大丈夫かな?」


 そんな中、美月は何度目かになる確認をしました。

 彼女が心配しているのは空路の事ではありません。

 3人の中で方向音痴はリーゼロッテだけであり、地図自体は美月もちゃんと確認しているので分かります。


「……今のところは、ね」


 綾乃は美月の求めている回答が分かったのでしょう。

 そう言うと綾乃は溜息をつきます。

 追手が来ないかどうか、それを確認することが出来ないのは美月達にとって不安でした。

 ですが、美月の大丈夫か? と言う言葉に含まれているのはそれだけではないのです。

 勿論、それは綾乃も考えていた事でもありました。


「天使レーダー! みたいなのがあれば良いんだけどね」

「え? でもレーダーある、よね?」


 美月は綾乃の言葉に質問します。


「今のは精度が低くてちゃんとした場所を指してるわけじゃないんだ、反応するのも被害が出てからだし……偶々この頃は当たってたみたいだけどね」

「そ、そうなんだ……だとしたらほしいね、レーダー……」


 するとレーダーと言う言葉に反応した少女が一人。


「ありますよ?」

「「へ?」」


 その声は他でもないリーゼロッテでした。

 聞いた事もないレーダーがあるとはどういうことか? 二人は疑問に思いましたが、それにはすぐに答えてくれました。


「正確には作ってる、途中です。でも、あります」

「つ、つつつ作ってる!?」


 綾乃は彼女の言葉に驚き思わず言葉を詰まらせます。

 美月も声が出せませんでした。

 もし本当だとすれば、それは大発明。

 いえ、世界の命運を分ける物となるでしょう。

 何せ今は天使に対抗することが出来るマナ・イービルがあり、天使の出現場所を知らせるレーダーがあればあらかじめ出撃する事も出来ます。

 つまり、被害を減らせる可能性が高くなるのです。


「ただ、問題があるんです」

「問題?」


 思いつめた声を発するリーゼロッテに美月は聞き返します。

 すると彼女は機体を止め。


「レーダーには魔法使いが必要です。でも、その魔法使いが居ないんです」

「魔法使いが居ない? つまり、魔力が足りないって事? リーゼロッテさんは駄目なの?」

「ナイン……違うんです」


 二人もまた止まり彼女へと目を向けます。


「純粋な魔力ではなく、地形や方位に優れた者が必要なんです……その、私では」

「あーそっか、方向音痴だからね」

「方角が分からないと駄目なんだね」


 二人がそう言うとスピーカーの向こうで恥ずかしそうな声が聞こえたのでした。





 その後も美月達はドイツへと向け進みます。

 空路は日本から西……実は司令官から指示が入っており、中国を経由して向かうように言われていたのです。

 二人は何故そう言われたのかは疑問ではありましたが、リンチュンの故郷を見ることが出来るのは少し楽しみでした。

 その為、度々ずれる道を修正しながら進んでいくと……。

 丁度中国の真ん中あたりに着いた頃でしょうか?

 赤い機体が目の前から近づいて来るのが見えました。


「リンちゃん?」


 美月が思わず呟くと、その声に反応し――。


「アヤノちゃん! メイユエ!」


 嬉しそうな声が聞こえました。

 美月は久しぶりに聞くその声にホッとしました。

 もしかしたら嫌われたのでは? と考えていたからです。


「それじゃ、そっちのが話しに出てたドイツの?」


 リンはリーゼロッテの方へと機体のカメラを向けるとリーゼロッテは機体とは思えない丁寧な礼をし……。


「リーゼロッテ・エーベルトと言います、よろしくおねがいします」


 彼女のあいさつに釣られ同じように挨拶をしました。


「リ、リン・チュンです……よろしく」


 するとリーゼロッテはまるでイービルを人間の様に機体を動かし、右手を顔の頬へと当てます。


「っ! 可愛らしい声ですね」

「いや、なんか驚いてるけどさ、アタシ達の方がびっくりだよ」

「う、うん……」


 リンの機体の柔軟性も驚くものでしたが、リーゼロッテの機体は本当に人間の様な仕草が出来るのです。


「ん?」


 見つめられてリーゼロッテは首を傾げていますが、美月は彼女を見つめる理由を口にしました。


「まるで人間の様な機体ですね」

「ああ、そうなんです……お蔭で機体に乗ったままでもちゃんと挨拶が出来るんです」


 ころころと可愛らしい笑みを浮かべているであろう彼女を見て、ドイツの機体は他の国の機体と比べ技術が格段に違うんだと美月達は感心していました。


「っとそうだ! 私は日本に行かないと――」

「そうか、リンちゃんに頼むって言ってたし……これから向かってくれるところだったんだね、ありがとう!」


 綾乃はリンへとお礼を告げると彼女は「えへへ」と笑い、手を振って去って行きます。

 これできっと日本は大丈夫でしょう。

 ですが、美月には気になる事が一つ……。


「中国は大丈夫なのかな?」


 そう、リンは中国のマナイービルに乗っています。

 その為、彼女の国が手薄になってしまうのでは? と不安になったのです。


「そうだね、だから早くリーゼロッテさんをドイツに送ろう! それですぐに戻ってくればリンちゃんも国に戻れるからね」


 綾乃の言葉に頷いた美月はリーゼロッテと共にまた空を進むのでした。

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